よし、今日は絶対、残りの原稿を仕上げるぞぉっと、鼻息荒く原稿に向かう。
が、パソコンの横には、テーブルの長椅子がある。そこから、三女がずっと話しかけてくる。
「ママ、何してるのん?」
「ん? お仕事」
「ふーん、ほな、がんばりや。あ、あれ、見てみ、ほら、あれ」
テレビを指さしてくるが、PCの画面から目を離さずにいたら、
「ほら、見なあかんやん!」
と、かなりしつこい。
「だからぁ、お仕事しなあかんから、もうちょっと待ってな」
「終わったら、遊んでくれる?」
「うんうん、遊ぶ」
「何して遊ぶ? ボールする? お母さんごっこ? ママ、なんの役?」
うーーーーー、原稿進むかいっ!!
「あんなぁ、これが終わらんとぉ、遊ばれへんやろ?」
そういったとたん、ぷっとほっぺたをふくらませる三女。
「ママ、にこにはお話作ってくれへんやん」
「えーっ! 今までにもいっぱい作ってるやん。ほらほら、新しいお話もあるで」
とノートを広げる。アイデアメモだけやけど、考えたばかりのネタがある。
「いくでぇ」
というと、うれしそうに、満面の笑みでうなずく娘。
「にこちゃんがベランダに出ると、アリさんがいました」
「そんなん、いてへんやん」
「え? そう? そっか……、じゃあ、保育所にしよう。保育所のお庭で遊んでいると、アリさんがいました」
「保育所にも、いいひんわ」
「アリくらい、なんぼでもいてるやろ!」
いきなり出鼻をくじかれ、大人気なく叫ぶ母。
「うー、そしたら、ダンゴムシさんがいました」
「ダンゴムシも、いいひんわ」
「こないだ、ダンゴムシ好きやって、いうてたやん!」
子供より、ムキになってる母である。しかし、ここで言い張らないのは大人である。
「そしたら、ええわ。道を歩いていると、ネコさんがいました。ネコさんがいいました」
「ネコはしゃべれへんわ」
「しゃべるんじゃぁぁぁぁっ!!」
母の堪忍袋は、ミリ単位。実に短い。切れやすい。
これから向かう原稿にまで、自信がゆらぐ母であった。
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さみー
ここち
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