インド映画の平和力

ジャーナリストさこう ますみの NEVER-ENDING JOURNEY

『ガリーボーイ』で注目のナンバー「Azadi(アザディ)」、そのオリジナルをあしらった YouTube 動画に視聴制限

2019年10月21日 | ドキュメンタリー
 10月18日から公開中のインド映画『ガリーボーイ』(2019)。実在のラップミュージシャンをモチーフにしたとはいうものの、ほとんどフィクションだ。とはいえ、ここでは映画そのものについて語ろうというのではない。

 挿入曲のなかで、最も知られているのが「Azadi(アザディ)」である。

 アザディとは以前にも触れたように、「自由」とか「解放」という意味だ。 
 「Azadi」はもともと、『ガリーボーイ』にもスタッフとして参加している著名ラッパーのひとり、ダブ・シャルマ(Dub Sharma)が、2016年に発表した。
 その原曲の詞がもつ射程と意味合いは、映画用にアレンジされたそれよりも、はるかに大きくパワフルなものなのだ。

 2016年2月、首都デリーのジャワハルラル・ネルー大学(Jawaharlal Nehru University; JNU 人文社会科学系ではトップランクの大学院大学)で開催されたイベントを発端に、JNU の自治会長ら数人の学生が不当逮捕された。
 それに抗議し、政治と社会のあり方を批判した、JNU をはじめとする多くの学生たちが、与党・インド人民党(BJP)政権から「deshdrohi(国家叛逆者)」のレッテルを貼られるという大事件に発展した。

 先ごろ山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映されたアナンド・パトワルダン監督『理性』にも詳しく描かれていたので、そちらを見た方には記憶に新しいところだろう。
 パトワルダン監督のアカウントにアップされている『理性』には英語字幕がないので、紹介記事を準備中だったところに、またも YouTube/Google による「表現の自由侵害事件」である。

 ダブ・シャルマは、不当逮捕された自治会長カナイヤ・クマール(Kanhaiya Kumar)のスピーチを使って「Azadi」をつくった。
 そのオリジナルの「Azadi」を使用したミュージックビデオが、Creative Commoners というアカウント名で YouTube にアップされていた。2016年4月11日付で。

 それが、ここ2~3週間の間に、いきなり視聴制限がかけられたのである。かれこれ3年以上、なんら問題なく公開させていたにもかかわらず。

 Google CEO のサンダー・ピチャイ(Sundar Pichai)はインド系米国人だが、「Howdy Modi」の訪米使節団から何か要請でもされたのであろうか? 
 いずれにせよ、だれであれ規制をかけることを望む主体は、裏返せばそれだけ、オリジナル「Azadi」とインドの学生たちのパワーを恐れているという証左にも受けとれるのだが?

☆修正(10月22日)☆
曲名につき、映画名などと混同されないよう、二重カギなどの記号表記のみ修正しました。

※訂正(10月24日)※
『ガリーボーイ』のタイトル表記を訂正しました。自動保存した下書きの操作ミスです。

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