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西川監督の「素晴らしき世界」は今の日本の差別と不寛容の空気を見事に澱ませていた

2021-11-08 16:48:16 | 日記

西川美和監督作「素晴らしき世界」は公開したばかりの作品でツタヤでは新作なのでプレミアム会員のわたしでも1泊300円であった。とにかく早く鑑賞したいとの思いと、見応えある作品だろうとの予測を抱いていた。まさに期待を裏切らない作品である。原作は佐木隆三の「身分帳」で実話である。
13年の刑を終えて出所した三上はヤクザであった。敵対するヤクザとの抗争での殺人と、ホステスのトラブルに巻き込まれての殺人で人生の大半を刑務所で暮らしていた。
筋金入りのヤクザで一旦、自分の暴力が破裂したならば相手を殺すまで戦う獰猛な男である。普段は礼儀正しく、心優しい人間である。
三上の身元保証人となる弁護士や役所の人間はなんとかして更生させようと世話をやく、ドキュメンタリーを撮ろうと接触するクリエーター、スーパーの店長などが三上の周りに集まり協力し合うのである。元受刑者が更正することがいかに難しく、社会の受け入れ体制が整備されていないかを痛感させるのだが、西川監督は原作を現在に置き換えてさらに構造的な社会問題をえぐる。
三上は障害者施設に職を得る。その施設で知的障害のある介護士を仲間がイジる。そうした陰湿なことを三上の正義感は許せない。爆発しそうになる三上の怒り、観客は三上に感情移入をしているからここで事件を起こせば全てが台無しになる恐れでドキドキしながら見るのである。介護施設での障害者の殺人事件、優生思想、つい最近の音楽プロデューサーによる過去の虐待告白。
私は現代にストーリーを置き換えた西川監督の脚本に、日本でさらに醜くなる差別社会の空気を読み取る。最後は泣かせる終わり方で素晴らしき世界は素晴らしい作品である。


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