映画 1917殺害 命懸けの伝令
戦争の実態を描く作品。
第一次世界大戦、塹壕に陣取るイギリス達の中から若い二人の兵士が前線の大隊へ攻撃中止命令の伝令を運ぶ。一人は前線に兄が少尉として参戦している。
この作品は007の監督サム・メンデスの作品。今、ロシアに対抗するウクライナの塹壕が写し出される機会がたびたあるが、時代は変わっても塹壕が戦争の重要な陣地であることは今も変わらない。
ネット右翼や戦争を知らない若者はこの作品を見たら良い。延々と続く塹壕の中の移動、戦争は塹壕生活であることがリアルに映しだされる。
若者二人がドイツ軍の撤退偽装について前線で総攻撃をしようとしている師団に中止の伝令役として抜擢される。
正規戦はどんな時代でも塹壕生活を余儀なくされる。土の壁を相手に恐怖と忍耐と疲労の日々をおくる。砲撃で目覚め覚醒の狭間に悪夢。そこには勇ましいネット右翼の言辞は微塵も当てはまららないし、呟くこともできないだろう。
塹壕を出てからドイツ軍が撤退した村や街を歩む若い二人に様々な爆弾の仕掛けがある。戦闘状況がなくても戦時は絶えず命の危機にさらされているのである。
命の縮む思いの日々を映像は緊迫で締め付ける。
戦場では隣にいた戦友の脳ミソが吹っ飛び、自分の唇を弾が掠めて一命をとりとめるのも運次第である。
村に空中戦で落とされたドイツ兵を助ける二人、しかしそのドイツ兵に刺されれ一人は死ぬ。一人でも多く敵兵を殺す、 そうしなければ助けた相手に殺される。ヒューマニズムなどは通用しないドラスティックな地獄を思い知らされる。
美しい果樹園を通りながらも狙撃の眼を意識する兵士。たどり着いた前線の陣営で疲れきって休んでいる兵士達が統一教会聞き惚れるテノールの歌声、実に美しい場面である。ホッとする兵士の安らぎの顔、この監督の演出は見事である。
戦争の実相はスリル満点の娯楽映画とは別世界である。
この作品を見終わってもう戦争は懲り懲りだとにかく平和に暮らしたい。と感じるのが普通の感覚である。
日本国民はアメリカの進駐に怒るより安堵の日々を感じ憲法9条を大切にしたいと多くの国民が思ったのである。
ところがリアルな戦争は体験を忘れて戦争をする国にしようとしている自民党があり、戦争の実相について何一つ触れずに憲法改正を叫ぶ馬鹿がいる。