磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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98.ジョンさんの夢

2005年09月18日 | 【作成中】小説・メリー!地蔵盆



八、それでも地球はまわる

98.ジョンさんの夢





 しばらく静寂があり、鼓膜をつんざくような大きな音と高熱が雄二を襲う。雄二は気を失った。

「ここは、どこなのだろう」
 まわりは岩や砂しか見えない。そうか、新型爆弾を使ったのだ。

 テレビがあった。
「生命は消滅した。死の星となった」
 と、音声だけを発した。

 雄二は辛くって、どうしたらいいのかわからない。命のない死の星、地球は月のようになったのだ。雄二は、一人きりになってしまった。

 鹿が跳びはねている。鹿の後を追った。
「あの星はなんだろう。あれは、あれは地球だ」

 雄二は地球が青く見えて、幸福に思えた。
「ずいぶん、遠くまで来たものだ」

 膝を組んで坐った。テレビでは新型爆弾が使われますと真剣に話していた。地球の各地で火の粉がまいあがり、月のようになってしまった。

「それでも、地球はまわっている」
 テレビの画面に文字が現れた。

 人類は滅んだ。死んだらどうなるのだろう。テレビに花田の顔が映る。それはきっとVTRだと思った。

「月に人類が行ける時代、迷信を信じてはいけない」
 とテレビ画面の花田。

 それなら、花田は石や砂なんかの物質になっただけなの……。

 白黒テレビ画面に曽我のおばあさんの顔がアップで映っている。
「いや、極楽はある」
 曽我のおばあさんが得意満面でいた。

 テレビは異常な音をだした。雄二は岩に体を隠した。ドカーンとテレビは爆発した。雄二は本当に一人ぼっちになった気がした。

「雄二、雄二、大丈夫、大丈夫……」
 ジョンさんは泣き崩れた雄二を背負った。

「天国、あります。人間の魂は物質のようにありません。そして、花のように枯れることもありません。さぁ、家に帰りましょう」
 ジョンさんは優しく落ち着き払っていた。ふとんのように大きな背中のジョンさん。



 雄二は目がさめた。雄二は布団の両端を強く握りしめていた。
「ひどく、うなされていたわよ」
 母は心配顔で雄二を真剣に見ている。

 妙な夢を見たものだ。いつものボロ・アパートでホッとした。

 それから母は、額に手を置いて、
「熱下がって、よかったわね」
 安心していた。

 悪夢を見ていたようだ。
「お腹、すいた!」

「元気でてきた証拠やね」
 母は微笑んだ。




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2 コメント

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ありがとうございます。 (鱧男)
2005-09-18 19:45:44
読んでいただいた方の記憶に残るように、

ラストを丁寧にしています。



この作品を何度も書き直した理由には、

オウム事件などもあり、宗教のいい面を忘れてほしくないとも思って書きました。



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Unknown (雨漏り書斎)
2005-09-18 19:22:27
拝読してますよ。
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