磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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娘に語るお父さんの戦記

2010年06月30日 | 読書日記など
『娘に語るお父さんの戦記』
   水木しげる・著/河出書房新社1985年

19歳で赤紙。下「」引用。

「ある日突然、その「赤い紙」がお父さんのところへ舞い込んできた。よくみると、「召集令状」と書いてあった。
 いつかは赤い紙がくるとは思っていたが、きてみると、ばかに早すぎるような気がした。お父さんが満十九歳の時のこだ。-略-本の中には各人各様の意見があるばかりで、死への解決みたいなものはなにも得られないまま、死神レースのスタートに着かせられた感じだった。-略-」



隙間で寝る……。下「」引用。

「夜になると昼間のつかれで、そこらに寝る。明け方、小便に行って帰ると、もう寝る場所がない。わずかのスキ間に寝ていたから、わずかの時間でふさがってしまうのだ。初年兵だから、古兵どのにさわったりしただけで、なぐられるから、次の者が便所に行ったスキに入りこむ。-略-」

「やられたっ」 下「」引用。

「そんなある日、寝ているところへ低空、大きな翼の敵機のマークが木かげに見えたと思ったので、穴の中に入ろうと思ったが、体があまりいうことをきかない。そこへ爆弾。爆風とともに左手にショック、と同時に鈍痛。
「やられたっ」
と思っているうちに、痛みはだんだん大きくなり、ものが言えないぐらいになった。
 -略-もうダメだということになり小隊長が自分の血を輸血してやるといったが、悪いことに、血液型をわすれてしまっていた。「多分O型だったかもしれない」というたよりないことだったので、輸血はとりやめとなり、あくる日、軍医さんが七徳ナイフみたいもので腕を切断したが、その時はモーローとしていて、痛くなかった。」

マラリアの再発。

胃が強い……。下「」引用。

「一本残った手には、かさぶたのようなものができ、みるみる広がって箸をもつこともできなくなった。そこへもってきて、めしの量が少ない。一日に茶碗に二ハイぐらいの分量、お父さんは、なんとか胃を悪くして、空腹の苦しみからのがれようと思ったが、なかなか思うようにはいかない。生まれつき人の三倍も胃がいいのだ。」

ナマレへ。下「」引用。

「そのうち、ナマレという所に、手足のない者が集められることになり、ナマレという所へ行った。そのころは、大分元気になっていた。」

「なんとか更生会」へ。下「」引用。

「みんな傷痍軍人ばかりだった。どこでどう手に入れたものか、会長と称する小男が、カゴをたくさんもらってきた。金もないし、ごはんもないから、毎日、てんであるカゴを一個ずつもって、めし屋に行く。なんにもない時代だったから、不思議と、そのカゴが通貨の役目を果たし、一週間ばかりそれで食べていた。-略-」

美術学校で、一千万円ないと、絵かきになれないといわれたという……。

再び戦地へ。美少年トペトロが、中年のオッサンに変わりっていたという。著者も30年たって、かわっていたという……。






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