II.ときどき、雨
C024.虹の根元?
「そうですか。でも、電気を帯びた埃の虹なんて、不気味そのものですねえー」
「そうやろ、普通の虹は虹の架け橋というけど、その虹は架け橋には見えなかったなあ。虹の破片っていおうか、虹の切れ端があるという感じやなったなあー」
「おじいさんも見たんですか!」
「見てないがな。写真、写真。それもテレビの写真」
「そうかいなー」
「でも、まあ、今度、どこかでそんな虹を見たら、地震が来るから気をつけようと思うね」
「どう気をつけるんですか」
おじいさんは困っていた。
「どう気をつけるんですか」
「あっ、その。食料品や水をいつもより買い込むとか」
「それは、私がすることでしょう。おじいさん、買い物なんて行ってくれないやん。それに、おじいさんは素麺があったらいいんでしょう。それと自給自足している野菜があったら、何も申し分ないんでしょう」
おじいさんの顔は絞られた雑巾のようだった。
「そんなことより、台所仕事はどないしたんや」
台所に立つおばあさんにおじいさんは指摘した。
「すぐ、終りまんがな」
少ない食器は洗い終わり、前掛けで手をふきながら、おばあさんは
「ほんま、虹は神秘的なものやものな。おばーな、ユリカくらいの時に、虹の根元をさがして、山を越えてとなりの県まで行ってしまったのよ」
と笑いながら話した。
ユリカは、ききなれない言葉があったので、
「虹のねもとってなんなの」
と、おばあさんにきいた。
おじいさんは、ききとりにくいけど、
「そんなものはないさ」
と笑った。
ないものを言うなんて、おかしいなと思った。
おばあさんは
「だから、迷子になってしまったのよ」
と笑った。
おじいさんも
「なつかしい話だ」
と笑っていた。
ユリカは、虹のねもとが知りたくって、
「虹のねもとのねもとって、木の根元とか草の根元のことなの」
ときいた。
おばあさんは笑うのをやめて
「そうよ」
と返事した。
「虹に根元はなかったかしら」
ユリカは考えこんだ。
ユリカは手をうった。
「そういえば、虹は空中にうかんでいて、根元なんかなかったわ」
ユリカは、あんなきれいな世界に行きたかったおばあさんの気持ちがわかった。
虹の根元から、虹の世界におばあさんは登って行こうと思ったのだろうとユリカは考えた。そして、きっと虹の世界は素敵なところと思えた。
ユリカはおじいさんの本棚から、本をかりてヤスがプールで言っていたタコについて調べていた。
「へぇー、タコって、頭がいいんだ。ビンの中の閉じ込めておいたカニを、ビンのふたを取って食べたりするんだ。へえ、それに人間と同じくらい目がいいんだ。それに、ええ!心臓が三つもあるなんて……」
本を読んでから、麦茶を飲みほした。
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[レインボー・ループ]もくじ
C024.虹の根元?
「そうですか。でも、電気を帯びた埃の虹なんて、不気味そのものですねえー」
「そうやろ、普通の虹は虹の架け橋というけど、その虹は架け橋には見えなかったなあ。虹の破片っていおうか、虹の切れ端があるという感じやなったなあー」
「おじいさんも見たんですか!」
「見てないがな。写真、写真。それもテレビの写真」
「そうかいなー」
「でも、まあ、今度、どこかでそんな虹を見たら、地震が来るから気をつけようと思うね」
「どう気をつけるんですか」
おじいさんは困っていた。
「どう気をつけるんですか」
「あっ、その。食料品や水をいつもより買い込むとか」
「それは、私がすることでしょう。おじいさん、買い物なんて行ってくれないやん。それに、おじいさんは素麺があったらいいんでしょう。それと自給自足している野菜があったら、何も申し分ないんでしょう」
おじいさんの顔は絞られた雑巾のようだった。
「そんなことより、台所仕事はどないしたんや」
台所に立つおばあさんにおじいさんは指摘した。
「すぐ、終りまんがな」
少ない食器は洗い終わり、前掛けで手をふきながら、おばあさんは
「ほんま、虹は神秘的なものやものな。おばーな、ユリカくらいの時に、虹の根元をさがして、山を越えてとなりの県まで行ってしまったのよ」
と笑いながら話した。
ユリカは、ききなれない言葉があったので、
「虹のねもとってなんなの」
と、おばあさんにきいた。
おじいさんは、ききとりにくいけど、
「そんなものはないさ」
と笑った。
ないものを言うなんて、おかしいなと思った。
おばあさんは
「だから、迷子になってしまったのよ」
と笑った。
おじいさんも
「なつかしい話だ」
と笑っていた。
ユリカは、虹のねもとが知りたくって、
「虹のねもとのねもとって、木の根元とか草の根元のことなの」
ときいた。
おばあさんは笑うのをやめて
「そうよ」
と返事した。
「虹に根元はなかったかしら」
ユリカは考えこんだ。
ユリカは手をうった。
「そういえば、虹は空中にうかんでいて、根元なんかなかったわ」
ユリカは、あんなきれいな世界に行きたかったおばあさんの気持ちがわかった。
虹の根元から、虹の世界におばあさんは登って行こうと思ったのだろうとユリカは考えた。そして、きっと虹の世界は素敵なところと思えた。
ユリカはおじいさんの本棚から、本をかりてヤスがプールで言っていたタコについて調べていた。
「へぇー、タコって、頭がいいんだ。ビンの中の閉じ込めておいたカニを、ビンのふたを取って食べたりするんだ。へえ、それに人間と同じくらい目がいいんだ。それに、ええ!心臓が三つもあるなんて……」
本を読んでから、麦茶を飲みほした。
閑話休題 映画や歌になっているのでは、 虹はやはり、いいイメージですね。 ジュディーガーランドのオズの魔法使いでは、 名曲、「オーバー・ザ・レインボー」があります。 この名曲が生まれた背景もまた、 興味深いものです。 勇気をふりしぼって生きてゆこうという感じですね。 府下に住んでいると、狐の嫁入りが多くって、 結構、晴れた空で雨がふり、その雨で虹が見えてきれいでした。 狐の嫁入りとは、晴れた空なのに雨がふるということらしいです。 雲の動きが早く、雨を落とした雨は、通りすぎた後ということを 書いている本もありました。 |
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家内は都内?なので ”天気雨”と言ってたそうです。 風情がないですね。
僕はお天気が雨なのかと今まで思ってました。
教えてくださって、ありがとうございます。