◎吉田松陰
丈夫志を存す 豈に空しく死せんや
百年 壮心をして、やましむる勿れ
・男たる者、志がある以上、どうして空しく死ねようぞ。この生涯、雄々しい心を失ってはならなぬのだ。
海楼 酒をとりて長風に対す
・海辺の高楼で酒を手に、遥かに吹き寄せる風に向かい合っている。
東方に俊傑有り
志尚(ししよう) 素より群せず
常に非常の功を慕い
又た非常の人を愛す
・東方の国、日本に英傑がいる。志すところは、もとより常人とは異なる。日頃から世の常ならぬ功績を樹(た)てたいと思い、また世の常ならぬ人物を好む。
人生 草露(そうろ)の如く
辛艱(しんかん) 何ぞ虞(おそ)るるに足らん
一朝の苦を願(おも)いて
遂に千歳の図を空しゅうする勿れ
・人の一生は草の上の露のように短くはかないものだ。そのなかで辛い目にあったとしても、たかの知れたこと、恐れるに足りぬ。一時の苦しみを思いわずらうあまりに、永遠に伝わる偉大な企図を無にするようなことがあってはならない。
俗子 与(とも)に議し難し
成敗もて丈夫を論ず
俗人とは議論をともにすることは難しい。かれらは成功したか失敗したか、ことの結果だけを見て人物を決めてかかる。
松下 ろう村と雖(いえど)も
誓って神国の幹(かん)と為らん
・わが松下村塾は田舎の村にあるとはいえ、誓って日本の支えになろうではないか。