モンサント社は遺伝子組み換え作物を通じて、どのようなビジネスをしているのか?
モンサント社のビジネスは二本柱である。
第一の柱は、ラウンドアップと遺伝子組み換え種子のセット販売だが、その販売戦略はとんでもないものである。
農家は、来年の栽培のために収穫物の「種子採り」と言う作業を行っている。しかしモンサント社は、農家に毎年種子を買わせるために「種子採り」を禁止する仕組みを二つ作ってしまった。
その一つは、種子そのものにプログラミングされたターミネーター技術である。
ターミネーター技術とは、作物に実った二代目の種子に毒を発生させ、自殺させる技術のことである。つまりバイオテクノロジーで種を殺せば、農家の「種子採り」は不可能になる。米国農務省は綿花でのターミネーター技術の認可をしている。
「種子採り」を禁止する、もう一つの仕組みは遺伝子組み換え作物の種子に対する特許権である。
種子を使用するためには、モンサント社に特許料を支払う必要があり、無断で使用すれば罰せられる。つまり、「種子採り」を特許権侵害という犯罪にしてしまったのである。さらに遺伝子組み換え作物の種子価格には、特許料が上乗せされ、加えて特許種子から得られた収穫物の売り上げに対して、特許実施料(ライセンス料)も取り立てている。
ブラジルでは、5,000万の農家が特許料の二重取りとして返還を求めて、モンサント社に提訴を起こしている。
モンサント社は特許によってGM種子を管理する。
それがもう一つの柱、損害賠償ビジネスに繋がる。
モンサント社は、特許がある遺伝子組み換え作物が無断で栽培されていると、農家に対して損害賠償を求める訴訟を起こすのである。
この代表例が、カナダの農家シュマイザーさんのケースである。1998年、モンサント社は「あなたの農場に、モンサント社の特許作物が生えているのを確認した。特許侵害の賠償金を支払わなければ提訴する。」と通告してきた。シュマイザーさんは、身に覚えがないと言って裁判を受けて立ち、最高裁まで戦ったが敗訴した。この判例は、特許作物の種子が鳥や虫、風が運んできて自生したとしても、特許作物が生えていたら特許侵害にあたるという恐るべきものである。
モンサント社は、このように特許権を最大限に活用している。GM種子を購入した農家には、「種子採り」を禁じ、毎年種子を買う契約を結ばせる。そうでない農家には、特許権侵害の脅迫状を送りつける。
米国食品安全センターの2007年調査によれば、モンサント社は特許侵害の和解で1億7,000万から1億8,600万ドルを集めている。最高額は、ノースカロライナの農家から305万ドルである。
モンサント社は損害賠償ビジネスを強化するために年間予算1,000万ドル、人員75名の訴訟部門を設置している。
さらにモンサントポリスと呼ばれる人員が、農家が特許を侵害していないかと監視している。探偵を雇うだけでなく、農家の密告も奨励した結果、農家の共同体としての人間関係は崩壊させられている。
モンサント社の種子を独占するビジネス手法は、もはやビジネスの域を超えている。これでは世界の食糧を支配しようとしていると非難されても仕方がない。