◎スピリチュアリズムの基本的な身体観は、霊体と肉体の二重構造ですが、霊体と肉体との間には、2つの異質の身体を結びつける接着剤のような部分があります。この部分を「結合体」とか「中間体」と呼びます。霊視能力を持った特別な人間には、それが肉体を覆う薄い衣のように映り、肉体に付随したある種の身体形態として認識されます。この結合体は「半物質・半幽質」によって形成され、その材質の特殊性によって2つの異質の身体を結びつけ、両者の間のエネルギーの交換を可能にしています。結合体は、神智学で言われてきた半物質身体であるエーテル体に相当しますが、実際にはこの部分は独立した身体ではなく、2つの身体に付属して存在する“仮の身体”と言うべきものです。
◎死によって霊体と肉体が分離するときには、結合体部分が裂かれ、その一部はしばらく霊体に付着することになります。霊体はその遺物化した結合体を捨て去ることによって純粋な霊体となり、新たな世界での生活を始めるようになります。ところが地上に強い思い入れのある霊が地上のことを回想すると、この幽界下層に捨てられ遺物化した「幽質結合体」にエネルギーが供給されて活性化し、独り立ちして操り人形のように動くようになります。こうして霊が生前慣れ親しんだ屋敷や土地の周りを仮装行列のように歩き回ることになり、それが地上人に「幽霊が出た」と騒がれることになります。昔からいろいろな地域に幽霊屋敷の話が存在しますが、幽霊がひんぱんに出没する屋敷とは、こうした幽質の操り人形が闊歩している場所のことなのです。霊界に入ってからも、つい地上時代を回顧することで無意識のうちに操り人形をつくってしまい、それが地上の霊視能力者に見られたりするようになるのです。(*これが幽霊の1つのケースです。その他に幽霊と言われるものは、低級霊のいたずらであったり、地上人自身がつくり出した想念霊であったりします。)
◎物理的心霊現象では、しばしばエクトプラズムと言われる半物質が話題となります。多くの物理的心霊現象にエクトプラズムが関わっています。人によっては有り余るほどのエクトプラズムをつくり出すことができ、そういう人が物理霊媒になります。幽質中間体(半物質)を材料として“エクトプラズム”がつくられ、さまざまな「物理的心霊現象」が引き起こされることになります。とは言っても、霊媒が一人でエクトプラズムをつくり出すわけではありません。霊媒はエクトプラズムとなる材料を提供するだけです。トランス状態下で、霊界の技師が霊媒の体内から取り出したエクトプラズムの元になる半物質に特殊な物質を化合させ、エクトプラズムをつくり出すのです。そしてそれを物理現象を引き起こすために利用するのです。したがって霊界の技師がいなければエクトプラズムは生成されません。
*ダブル(複体)について
これまで霊的身体観を理解するうえで、混乱を与えてきたのが複体(ダブル)という用語です。“ダブル”とは、霊魂と肉体を結びつける要素で、形が肉体とそっくりに見えるところから出たものです。この言葉が通信霊によって少しずつ違ったニュアンスで用いられてきたために混乱を与えることになってしまいました。例えば霊界の精緻な描写を特徴とするマイヤース霊は、地上人のダブルを霊体と幽質中間体(*ハスクと呼んでいる)を一緒にしたものとして説明しています。マイヤースはそれと同時に、死後の霊界人の霊体もダブルと呼んでいます。一方、アラン・カルデック編の『霊の書』『霊媒の書』では、人間の身体構成は「霊魂-ペリスピリット-肉体」として述べられています。このペリスピリットは、霊を包むものという意味で、霊体に相当します(*近藤氏は、これを『霊媒の書』の中でダブルと訳しています)。また人によっては、幽質中間体をダブルと呼んでいるケースもあります。このように“ダブル”という用語は、通信霊や地上人、あるいは翻訳者によって異なるニュアンスで用いられています。私たちはダブルという用語にこだわる必要はありません。人間の身体構造を正しく理解することが大切であって、それにどのような言葉を当てはめるのかは重要ではありません。ダブルと言わなくても「霊体」という言葉で、実態を十分に説明できます。ここではシルバーバーチの説明に倣って、霊体という用語で説明します。