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「靖国参拝で日本が孤立か?」

2014-01-13 10:01:17 | 日本


古森義久さんが、「靖国参拝で日本が孤立かは歪曲報道だ。むしろ日本を擁護する東南アジア諸国の声を報道すべし」と題した論文を出した。
以下、要約し記す。


2013年末から2014年の冒頭にかけて、安倍晋三首相の靖国神社参拝が内外に大きな波紋を広げた。この参拝を中国と韓国の政府が公式に激しく非難した。米国のオバマ政権も「失望」を表明した。ロシアやEUも政府や議会のレベルで批判の声明を出した。

日本の主要メディアでは、こうした「点」をつないで、「日本は安倍首相の靖国参拝のために世界で孤立した」(朝日新聞の再三の論調)と断じるような論調が多い。
だが本当にそうだろうか。

太平洋戦争の激戦地、東南アジア諸国の反応はどうであろうか?

靖国神社と一体化して語られる日本の軍事行動の肝心の舞台となった東南アジア諸国はどうだろうか。靖国神社が日本の対外的な軍事行動を象徴すると言うのならば、東南アジアこそ日本の首相の靖国参拝に最も激しく反発するはずだ。ところがそうではないのである。東南アジア諸国からは、政府レベルでの今回の首相の参拝への非難は1月7日の現在にいたるまでまったく出ていない。

中国や韓国のように政府の公式声明として糾弾した国は東南アジアでは皆無なのだ。民間でも安倍参拝非難はほとんど出ていない。この事実は日本側としても正確に認識しておくべきである。
アジアの多数の国家の中でも、歴史問題を理由に日本を糾弾し、特に靖国問題で政府として日本を非難し続ける国は中国と韓国だけである。そんな実態が今回の動きでも立証されたと言えるのだ。

繰り返しとなるが、安倍首相の参拝の12月26日から10日以上が過ぎた1月7日までに、政府が公式の声明や言明でこの参拝を非難したアジアの国家というのは東南アジアでは皆無である。インドやパキスタンを含む南西アジアでも同様なのだ。

この事実こそ大ニュースだろう。「日本が世界で孤立」などといった断定はとんでもない間違いだということだ。
ただし、東南アジアでも民間レベル、つまり報道機関がその国の識者の論評を伝えるという実例はある。だがその論評も日本への理解や同情を見せるケースが多いのである。

そのような最新の動きとして、フィリピンのフィデル・ラモス元大統領が1月4日に発表した見解がある。

ラモス氏はフィリピンの大手紙「マニラ・ブレティン」へ「アジア・太平洋の冷戦」という論文を寄稿し、中国などが安倍首相の靖国参拝を非難していることを踏まえたうえでの見解を示した。論文では、中国の政府や官営メディアの安倍首相への非難を紹介したうえで、次のように述べている。

「第2次世界大戦での日本の占領下で苦しんだ国民として、フィリピン人も最近の中国人たちと同じように(日本への)憤怒や敵意を爆発させるべきではないのか? 確かに私たちも過去には苦い思いを抱いている。しかし私たちは今後のより良き将来を怒りの継続によって危うくしたり台無しにしたりすることは決して望んでいない」
つまり、日本の首相の靖国参拝に対して、中国のような「憤怒や敵意を爆発」させはしない、と述べている。ラモス氏は、「よりよき将来のために」過去の戦争の歴史からくる怒りなどを保ち続けることはもうしないのだ、と強調する。だから日本の首相の靖国参拝も特に糾弾はしないというラモス氏の姿勢は明確な「未来志向」である。

ちなみに第2次大戦ではフィリピンは全アジアでも最激戦の地となった。「戦争の苦しみ」を日本側にぶつけるのならば、最もその理由があるはずの国なのだ。

ラモス元大統領は論文の冒頭で以下のようにも書いていた。
「中国と日本との間での激しい言葉と挑発的な行動の戦いは、なお緩むことなく続いている。もちろん私たちはアジアのこの強大な2国の身構えを外交筋や一般メディアの伝える範囲内でのみ見ているに過ぎない」

「竹のカーテンの内側で起きていることは普通の観察者には分からないが、たぶん地域の政治影響力の争いで、相手の立場を骨抜きにしようとする試みがあるのだろう」
だから靖国問題も表面の動きだけを見ず、その背後や水面下にある政治の戦い、相手の政治力を弱体化しようとする意図を見抜かなければならない、というのである。中国が靖国非難をする際の「戦争美化」や「軍国主義復活」といった糾弾の言葉だけでなく、背後の政治的な意図や戦略を読め、とも強調するわけだ。

日本を擁護するインドネシア、シンガポールの報道は如何に?

東南アジア諸国の安倍首相の靖国参拝への反応が中韓両国とは異なり冷静であることは、1月4日付の「産経新聞」でも詳しく報道されていた

読売新聞記者としてインドネシアやインド、米国などの駐在特派員を務め、2013年12月に産経新聞に移ったばかりのベテラン記者、黒瀬悦成氏による報道は、ベトナム、インド、インドネシアなどでも政府レベルでの靖国参拝批判はまったくないことを伝えていた。

産経新聞の同報道によると、注目されたのはインドネシアで最も影響力のある新聞の「コンパス」が12月28日の社説で「靖国問題で自らを被害者と位置づける中国と韓国の主張は一面的な見解だ」として日本への理解を示したことだった。

コンパス紙の社説は、東シナ海での日中間の緊張が高まっているこの時期の参拝は「適切なタイミングではなかった」としながらも、今回の参拝は、戦死者の霊に祈りを捧げ、日本国民が再び戦争の惨禍に苦しむことのないように取り組む決意を伝えたものだとする「安倍首相の見解」を紹介していたという。

産経新聞の同報道によると、コンバス紙の社説は「靖国神社には、現在は戦争犯罪者と見なされている数百人だけでなく、戦争の犠牲となった約250万人の霊も祀られている」と指摘し、国に命を捧げた人々のために参拝することは日本の指導者として当然だとする安倍首相の立場にも言及した。

さらに黒瀬記者はシンガポールの「ストレート・タイムズ」紙の論調を伝えていた。それは以下のような骨子のものだった。
「安倍首相が参拝に踏み切ったのは、これまで摩擦を避けようと終戦記念日や春秋の例大祭で参拝を見送ったにもかかわらず、中韓両国が強硬姿勢を崩さず、冷え切った中韓との関係に改善の見込みは少ないと見切ったためだ」

つまりストレート・タイムズは、中韓の日本敵視政策が逆に参拝の呼び水になったという見方をしているのである。

以上のように、アジア諸国の安倍首相の靖国参拝への反応は中国、韓国とは異なることを我々日本人は知っておくべきだろう。