【世界はときどき美しい】…五つの短編からなる映画詩(シネポエム)。個人的には二話目の柄本明主演の『バーフライ』が、すこぶる好かった。けど、その他の話(というか、詩)も、普段の何気ない日常で見落としがちな美しさを静かに浮き上がらせていて秀逸。休日の午後、ゆっくり観るのにうってつけの一本。
【アイム・ノット・ゼア】…今や生きる伝説(笑)ボブ・ディランを六つの人格に分け、それぞれを全く異なる俳優たちが演じるという、ぶっちゃけよく意味が分からない作品。それなりに昔のディランのエピソードを知っている人なら「ああ」とか「なるほど」と思えるかも知れないけど、これを観て初めてボブ・ディランを知ろうと考えてる人は観ないほうがいい。無駄だ。全編に流れるディランの曲がなかったらとてもじゃないが最後まで観れたかどうだか? ただ、ケイト・ブランシェット演じる若かりしディランはかなりイケてた。彼女だけで一本撮っちゃえばよかったのに。
【富嶽百景~遥かなる場所~】…太宰治の名作『富嶽百景』を現代風にアレンジ(ってほどでもなかったが)した作品。まぁ、原作があまりにも良過ぎるので、映画化したところで高が知れているだろう……果たしてその通りであったが、「これじゃ、まるで風呂屋のペンキ画だ」(原作では『これは、まるで、風呂屋のペンキ画だ。』)や「富士には見草がよく似合う」などの名句が出てくると「ニヤリ」とさせられる。さすがに井伏さんの放屁は見られなかったが……。ともあれ、わりと原作に沿って話が進んでいくので、それなりに楽しめた。
【独裁者】…チャップリンはやはり、無声のほうが面白いと思う。それでもトーキーならではの笑いもぬかりなく発揮させているのは流石!としか言いようがない。
ラストの演説はとても生々しくて凄まじい。北朝鮮のバカ将軍様に是非とも見せてやりたい名作だ。
great dictator charlie chaplin