雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

信州紀行~戸隠、信濃

2008-10-13 | 旅行
 11日土曜日。早朝(AM5:00)から妻と二人、車で信州へ向かった。

 新しく開通した東海北陸自動車道、は、通らずに、昔ながらの北陸自動車道から上信越自動車道ルート。

 まずは腹ごしらえ、ということでAM6:30ころ富山のとあるPAでうどんとかやく飯をかっ喰らい、いざ最初の目的地『戸隠村』へレッツラゴー!
 
 なぜ戸隠へ?それはこの時期、紅葉はもちろん、そう、新そばの時期でもあるから。信州といえば「そば」。そばといえば「戸隠」。そういうことだ。

 事前に下調べした結果、須坂長野東ICでおりて『戸隠バードライン』を通っていけば鮮やかな紅葉も拝めてベストらしいので、そのルートを。

 で、着実にそのルートを通ったのだが、どうも紅葉満喫にはまだ早かったようで、ようやくちらほらと彩づき始めた模様の木々を横目にひた走る。
 しかし途中、ある一部の場所だけは紅々と彩りを見せた絶景ポイントとなっていて、車を止めて写真を撮る人や優雅に眺め入る人たちでごった返していた。私たちも車を止めてみようか、とも思ったのだが、如何せん私たち夫婦は人だかりというものに辟易としてしまう性質(たち)なので、「うわー、ここはすげぇなー」「ホントだー」とカルく流して走り抜けた。実にもったいない性質である。

 まぁ、紅葉はさて置き(一応、目的のひとつなのに)そばだよ、そば。新そば。そんなわけで戸隠に入ったのだが、昼飯にはまだ少し早いのでどこかでティータイムと洒落込もう、とペンション等が並ぶ辺りをウロウロと。
 しばらく走っていると路傍にポツン立つ『カフェ↑』の看板を発見。ここにするかとその看板の矢印に従って進んでいくが、なかなか見当たらず・・・四苦八苦しながらも、かなり奥まったところにポツンとある小洒落たカンジのその店をようやく見つけ店内へ・・・入ろうとすると玄関口でたむろしていた四匹の猫たちが興味津々でこちらを見つめてくる。

「おー、チッチッチッ」と歪んだ笑顔をたたえながら屈み込んで手を伸ばすと、一定の距離を保ちつつ逃げ惑う四匹ども。人に慣れてるんだか慣れてないんだかよくわからない反応を示す四匹ども。「撫でたかったなー」と思いながらも、その感情を猫どもに悟られるのはなんとも悔しいので「ふん、どうでもいいやー」という体(てい)を取り繕う私。

 中に入ると小さなコンポからウィリー・ネルソンが心地良く鳴り響いている。その「いかにも」なBGMに少々苦笑いしながら、客は私たちだけという閑散さに少々たじろぎつつも、窓際の席に腰をおろし、私はコーヒー、妻は何を粋がっていやがるんだか自家製ハーブティーなどを注文する。

 注文の品を待つ間、窓外を眺めると、そこは時期を過ぎてうすら寒さ漂うハーブ園、らしき一帯。時折、うろちょろとする作業服姿のジィサン。窓枠には寒さで動きが鈍った蝿が二匹、うろちょろ。無駄にだだっ広い店内は、とにかくうすら寒いのであった。
 外観は「大草原の小さな家」をイメージさせるも、細かいところに天然の『和』の風情が漂っていて、これまた苦笑い。

 そうこうするうちに上沼恵美子似のおばさんがコーヒーとハーブティーを持ってきてくれた。コーヒーはかなり酸味が強かった。ハーブティーは、美味かったらしい。それは、よかったね。

 ようやくそこで一息つくと、なんだか腹が異常に減ってきた。

「よし。いざ、新そば」

 意気込んで店内からでると四匹の猫がまたもや玄関口に集まって日向ぼっこ。可愛い・・・しかし、私たちの姿を認めるとまたもや一目散に飛び散る。なんとも、可愛げのない・・・。


 そこから少し車を走らせると、すぐに戸隠村中心部に入った。時間は十一時半くらいだったが、腹も減ったし、早めに入ったほうが空いていていいだろう。
 かくして私たちはそば屋選びを行うのだが、なんにせ、そば処「戸隠」だ。村には三十軒あまりのそば屋が軒を連ねている。こんな中からどれを選べば?

 とりあえず持参した「るるぶ」を見るも、「こんな雑誌に載っているような店はダメだ(偏見です)」と私は言い募り、村入り口にあった観光案内所へ戻り、簡素な什器に差し込んであるパンフレットを何枚か取り出す。その中から、ひねくれた私が選んだのは、他店の金をかけたパンフレットとは違い、慣れないパソコンで「自作しました」「コピー、ちょっとズレてますけど」感あふれているお店『し○の屋』というお店を選びました。
 そして、いざ、そのお店を目指すも、ちょっと奥まったところにあるらしく、わかりずらい地図を見ながら、またもや四苦八苦の体でなんとか辿り着きました。

 店構えはいかにも「手打ちでっせー」という風情をたたえていて、中に入ると、「眺めのいい二階席へどうぞー」と快く案内された。お客は中年の夫婦が一組。実に、落ち着く。
 メニューを見ると、どうやら昨日から『新そば』を出しているということ。なんとも絶妙のタイミング。
 やはり新そばは「ざる」で味わなきゃな、と私は天然の山菜とおろしきのこの付いた「おろしきのこそば(冷)」を頼む。妻は「寒いから」と言って「山きのこそば(温)」を頼む。まったく、『粋』というものをナメてやがる。
 それは、まぁ、しょうがないとして、そばを待つ間、なんとサービスとして『野沢菜漬け』と『そば団子』が運ばれてきた。うひょー。

 これがまた、なんとも美味い。野沢菜はもちろん、そば団子がまさに絶品!どうやらそば粉を丸めて軽く揚げ、そのまわりに甘辛いタレをつけてあるのだが、とにかく美味い。二人してホクホク顔で喰らいついてた。

 やがて注文のそばがきて、とにかく、すする。噛む。呑み込む。美味い。新そばだとかなんとかはよくわからんが、とにかくヅルヅルと美味くてしょうがない。こうなると温かいのも食べてみたくなるので妻に「ちょっとそっちもくれ」と言って、こっちのざるとトレードしながら食を進める。
 これがまた、「妻よ、温かいのを頼んでくれてありがとう」という気持ちにさせてくれる美味さ。『粋』も時には邪魔になる、ということを学習する。

 腹も心も満たされた私たちはしばし放心しながら、「美味かったなー」「美味しかったねー」を繰り返す。

 さて、この後は宿をとっている松本に向かわなければいけない。私たちは幸せ感を引き摺りながらお勘定をしにいった。
 そこで姿を現した気の良さそうなジィサンに「いやー美味しかったです」というと「えぇ、うちはちょうど昨日から新そばを出してましてね。いつもよりちょっと美味しいです」と謙虚なのかなんなのかよくわからないコメントを笑顔で言い放ち、私たちも笑顔でそれに応えた。ごちそうさまー。


 さて、では行こうか、次なる目的地『松本』へ。と、その前に名所『鏡池』へ行ってみないか?と提案し、妻も承諾したのでそちらに向かって車を走らせた、つもりだったのだが、どこで道を間違えたやら?気付けば「信濃」についていた。あらま。
 また戻るのも面倒なので、ここから高速にのって松本へ行こう。まぁ、せっかくだからここ信濃の地酒『松尾』(ワンカップ)でも買っていくよ、と、道の駅でそいつを購入。しかしこれだけだとなんだかアル中のオヤジみたいだよなぁ・・・と妻に言うと、「たいして変わんないし」とあしらわれた。

 そうして、何も反論できない私を尻目に、仲睦まじい夫婦は松本に向かうのであった。


 ・・・つづく・・・

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