ほぼ日刊、土と炎、猫と煙突

白く燃え尽きた灰の奥深く、ダイアモンドは横たわる。

ある地方都市の伝説(2)

2005年04月26日 22時58分50秒 | 古い日記
<昨日からの続き>

善光寺を訪れた、その娘さんの名はお夏さんと言い、
(およそ、要一とは不釣合いな)美人でした。

呉服屋の一人娘だった彼女は、
商いを通して知り合った、さる殿方と「逢引」を重ね、
やがて「深い仲」になったそうです。

そして、悲しいかな。
「火遊びのツケ」が廻ってくるのは常に女の方でございます。

不義の子を身篭ってしまったお夏さんのお腹は、
日に日に大きくなるばかり。

最後の頼みに、
「ホオズキの根の煎汁」(子堕しの秘薬)まで試しましたが、効果の程は無く、
周囲に知られてしまうのは時間の問題でした。

いよいよ、つわりも酷くなって、臨月も迫ったある日、
お夏は、思い余って家を飛び出しましたが、
行く宛てもある筈がございません。

さまよい歩いて、隣村からここまで来て、
「いっそここで、首を吊って死のう」と、「一本松」の枝に、
縄を吊るしたのでございます。

しかし、人間、そう簡単に死ねるものなら、苦労はございません。

「ハァー」(訳:おとっつあん。おかっつあん。許しておくれ)

お夏さんは、縄の環の中に、何度も首を入れてはためらい、
念仏を唱えては、一休みし、さらに幾時かを過ごしておりました。

...と、そこに......
偶然、現れたのが例の要一でした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「おめー、さっきから、こんな所で何やってんだ?」
「...」(訳:誰?)
「さては...首を吊ろうとしているな?」
「....」(訳:み、見ていたのね?)
「ははあ。おめー。知らねーよーだな。」
「.....?」(訳:な、何を?)
「簡単な事さ。」
「.....??」(訳:な、何が簡単なの?)
「オラが手本、見せてやるだ。よう見とけ。」
「.....???」(訳:ハァァァァ?)
「ホラ、こうやってここに首を...。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(訳:・・・・・・)

これが要一の最後の言葉だったそうです。

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