ほぼ日刊、土と炎、猫と煙突

白く燃え尽きた灰の奥深く、ダイアモンドは横たわる。

ある地方都市の伝説(1)

2005年04月26日 00時19分24秒 | 古い日記
一本松?
そうです。今は松の木はありませんけど。
今は停留所の名前としてだけ、残っております。

ハァ...。
アラ。泣いているわけではございませんよ。
ただ...その一寸...

ここ、「一本松」に来て、この季節になると、
私は、数年前の「あの事件」を思い出して今でも、悲しくて...。

ここで、待ち合わせたのも何かの縁、旅の方、
一つ「退屈しのぎ」と思って、話にお付き合い願えますでしょうか?

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この村には、要一という名前の「少々知恵の遅れた子供」が、住んでおりました。
一体、どっから流れてきたのか?は存じませぬが、年の頃は...
この村に来た頃は既に18,9の様でございました。

が、それはもう「大層な抜け作」でございまして、
一日中、ニヤニヤしながら村をうろついている、
この辺一帯で知らぬ者はおらぬ程の○○○○でした。

一方、そんな要一を「哀れ」と思う人達も、この界隈には多うございました。

要一は、村の人達の善意で、
あっちの家に行っては、流行歌などを唄い、
こっちの家に行っては、野良仕事の手伝いをやったりして、
食事や服を駄賃にもらいっては、その日暮らしをしておりました。

私達が正月の折に、御屠蘇や御節をご馳走してやると、
それはもう、上機嫌で、村中を歌いながら、練り歩き、踊る。
そんな気のいい若者でもございました。

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ところが、でございます。
あれは、そこの桜並木の花々が舞い散り始めた頃、この「一本松」で、
大変な事件が起こったのです。

「おい!、要一が一本松で首を吊っているぞ!」
気が付いた男達は、大慌てで洋一を木から下ろしましたが、
すでに息絶えていたそうです。

自殺の理由は...わかりません。

ただ、もっと不思議だったのは...。

木から吊り下がった洋一の足元には、
見たこともない「生まれたての赤ん坊」がオギャア、オギャアと泣いていた、
と言うのでございます。

私共は狐につままれた様でございました。

「何だ!...。これ?」
「洋一が生んだのか?」
「バカ!男が子を生むなんて話聞いた事がねえ。」
「じゃあ、洋一の女が生んだ赤ん坊では?」
「うーむ。それもなあ...」

私は「まさか」と思いましたが、
色恋の道はわからぬものですから、要一に惚れる娘がいないとも限りません。

要一を葬式に出した後も、
村人は、暫くその噂でもちきりでした。が、ハッキリしているのは、
「要一が死んだ事」と「赤ん坊が存在する事」で、
それ以外の事はサッパリわかりませんでした。

それから、一ヶ月ほど経った頃でしょうか?

その赤ん坊を預けた善光寺の住職の所に、ある娘さんが現れた時、
この事件の一連の顛末が解明したのです。

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