ほぼ日刊、土と炎、猫と煙突

白く燃え尽きた灰の奥深く、ダイアモンドは横たわる。

緩衝材

2005年04月16日 10時40分31秒 | 古い日記
緩衝材、と言う物(いや、言葉だな)をご存知だろうか?
辞書的に言えば割れやすい物を包むクッション、
わかりやすく言えば、「プチプチ潰し」をしたりするアレだ。
(と、言うか『緩衝材』って柔らかければ何でもいいんだけど)

会社には、「お菓子のカール」みたいな形状の発泡スチロールの緩衝材がたくさんある。
はっきり言って、これは古い。嫌われる。送った先(役所相手では特に)から苦情が来る。

「ゴミを極力減らす」方向の社会では、厄介物扱いになりつつある。
「地球にやさしくない」と言うわけだ。

じゃあ、昔は「緩衝材」に何を使ったのだろうか?

長崎などから輸入されるオランダのガラス器には、草が使われていた。
「シロツメクサ」と言う名で表されるように、「詰め物」(緩衝材)として、
白詰草が利用されていた。今でいう、「クローバー」だ。

今なら、これも「外来種植物の日本侵略」
と言われて非難されるのかもしれない。(実際、日本の在来種のようになった)

さて、翻って...
日本から海外に輸出されていた「陶磁器」は、どんな「緩衝材」に包まれていたのだろうか?
古くから製紙が発達していた御蔭で、「屑紙」を丸めた物が多かったようだ。

これが、意外な展開を遂げる。

習字の書き損じ、とか、障子の裏張りに使うような紙に混ざって、「浮世絵」もそれに使われたからだ。

当時、高級な絵と言えば狩野派とかの「日本画」であり、
「浮世絵」などはポスター感覚で、庶民の「絵」だった。

それが最初にヨーロッパに伝わったのは「緩衝材」としてであり、
中身の「陶磁器」以上の評価を得たりもした。

国の内外を問わず、「浮世絵=美術品」として評価されるようになったのはそれからである。

昔、ゴッホの伝記的な映画を見た。(邦題は、『ゴーギャンとゴッホ』だったかな?)

ゴッホ:「ダビンチ?ラファエロ?そんな物にいつまでもこだわっているから、
     君達は小物なんだ。」
画家A:「じゃあ、君の言う芸術って何だい?」
ゴッホ:「これだよ。これ。」
そう言いながら、ゴッホは浮世絵を指し示す。

そんなシーンがあったな。(実際にそう言ったのか?は知らんが)

当時の日本では、国際的競争力のある産業と言えば、絹と陶磁器くらいだった。

幸か不幸か、「陶磁器」は割れやすく、「緩衝材」を必要とした。
そんな偶然がなければ、美術の歴史も変わっていたかも知れない。

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