まんまるな神さま 甲州の道祖神

2023-01-16 16:03:44 | 紹介
1月14、または15日の夜、どんど焼きが行われた地域も多いかと思います。
どんど焼きは道祖神のお祭りですが、小正月の行事のひとつでもあります。

鏡開き、そして、その年の稲の出来を占う筒粥(つつがゆ)や雪中田植えが終わって、
正月飾りや縁起物をどんどん燃やす、どんど焼きが行われます。
その時舞われる獅子舞は、疫病退散、悪魔祓いのためですが、
かつては「疫病者予定人名簿」を作り、
村を疫病から守るため、どんど焼きで燃やす地域もあったとか。

現在は、公民館や小学校などの広場で行われることが多いようですが、
道祖神祭りは、道祖神を祀った村の境などの道祖神場であったり、
変わり種としては、江戸時代、大々的に行われた甲府道祖神祭りで、
幕を張った、甲府城下の大通りで行われました。

狂言、大迷路、人々の仮装(!?)による名所風景の再現(!?)など、
現在の道祖神祭りと比べ、かなり様子が異なりますが、
歌川広重なども腕をふるった幕絵を、甲府の大通りの両側を張りめぐらすことで、
結界がはられ、清浄だけど、外に向けて開かれた場が設けられました。
華美さ故に幕府からは禁止令が出ましたが、実際には明治4年(1871)まで続きます。

道祖神祭りは、村や町に関わるあらゆる”良いこと”を願うものであり、
それは、厄払い、家内・村内安全、夫婦和合にとどまらず、
子授け、五穀豊穣、養蚕満足などの繁栄も願うもの。
町の繁栄は当然のことながら大切で、その源は人やモノの流れ、往来ですから、
甲府道祖神祭りの、道をふさがない会場は、案外理にかなったものだったと言えます。

・・・
道祖神信仰は、日本の民俗信仰のひとつ。
道祖神は、道の分かれ道、集落の境などに祀られます。
村に繁栄をもたらす村の守り神であると同時に、
災いが村に入り込まないように、さらに道行く人や旅人を災いから守る神さま。
そういう意味で、「通過」を専門とされる神さま・・でもあったのでしょうか。
成人式のような通過儀礼との関わりも指摘されています。

そんな道祖神ですが、どんなお姿をイメージしますか。
石の祠に、男神と女神が寄り添う姿でしょうか。
地域によっては、石碑にわらの神面や、巨大なわら人形でしょうか。

石碑に刻まれる男神女神は、『日本書紀』の一場面で、
天照大御神の孫であるニニギノミコトが高千穂に降臨される時、
道案内をした猿田彦命と天鈿女命(アメノウズメノミコト)が、
後に旅人の守り神、道祖神になったという説。

また、兄妹婚伝承という説も。
これは、伴侶を探しに、それぞれに家を出た兄と妹が、
皮肉にも男女として出会い、互いに惹かれ合い契を結ぶも、
お互いの村に帰る際に、兄と妹であることがわかり、川に身を投げるという伝説。
村人たちが、二人を憐れみ石碑が立てられ、それが道祖神となったとか。

逆に、洪水で二人だけ残った兄と妹が”結婚する”という伝説が起源とも。
これは、一旦滅びた世界が、二人(=始祖)によって再び創造される、
「イザナギとイザナミ」や「ノアの方舟」のような「国生み」伝説に似ているとのこと。
そこから「夫婦結合」、「子孫繁栄」、「五穀豊穣」などにイメージが広がり、
また、兄と妹という関係から、夫婦になるという、関係性の転換が、
「通過」というイメージに発展したのかもしれません。

いずれにしても、道祖神の変遷は案外に複雑💦

・・・
山梨の道祖神は丸石で、県内の約790ヶ所で祀られているとか。
丸石は、形はシンプルですが、山梨ならではの道祖神。
なぜ丸石に道祖神を見たのか!?負けず劣らず謎めいています。
道祖神の圖 『甲斐の落葉』(山中共古)より

人が祀らなければ、ただの石!?
・・かもしれませんが、丸石の形成は未だよくわかっていないようです。
上流から流れ流れて丸みを帯びたものになったのでしょうか。
でも、道祖神と見立てられた丸石は、”まんまる”だったり、たまご型だったり。
この形に至るのマレで、こんなにたくさんの丸石が祀られているのも不思議です。
(中には、人為的に作られた丸石もあります。)
また、火山活動で生まれた溶岩が、長い年月の変遷の末に、
丸石に結晶化する現象もあり、
日本が火山国であることを考えると、ありえなくもない説です。

いずれにせよ、丸石の形成は、自然の驚異であることに違いなく、
人々が、丸石に神さまを感じてお祀りしたとしても、なんの不思議もありません。

また、丸石道祖神が分布する地域は、
いくつかの文化圏が存在する地域であるなどの指摘もあって、
この丸石信仰、一筋縄ではいきません😅 

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