今か今かと待ちわびていた..
師は,人並み外れた幸運を呼び寄せる人柄と,強い信念を持ち,遠く豊饒の海をじっと見つめていた.
一つの人生を共に歩み,次の世代へ受け継がれていく.年は取っていた.でも脈々と受け継がれてきた人生を共に歩むパートナーでもあった.
時に手をかけ時に手荒く.おかげでたまに気まぐれに困らせようとすねるときがあるのだ.
いつまで続くかわからない..時にはじっくり待つことも.時には強引に手繰ってゆくことも..
今回も,期待と不安に胸を膨らませながら船出を求めてやってくる者がいた.
その船に乗る切符を手に入れるために,何度も足を運んでも,切符があるのかすらわからなかった..船が動くのかすらわからないのだ..
日も暮れ,そんなことは汁とも知らない好敵手がそこに入ると聞く.
水先案内人とともに,その好敵手を求めて冷たい風に吹かれながら竿を振った.
切符を求めるものには見向きもしてくれなかった..でも彼は相手にしてもらえるすべを知っていた.経験に裏打ちされた確信が,積み重なり,信念をもって制することができるはずだった..制することはできなくても制する必要はなく,顔を見れただけで満足なのであった.
期待と不安に手が震え好敵手にも巡り合えず,ずきずき痛む頭を抱えながら,係留所に戻る.
期待と不安を胸に..
いつか来るであろうその時のために..
人は一人では生きることができない.
知恵,経験あるいは縁.
じっと待っていても船は出ないかもしれない.
それでも船は少しずつ沖へ漕ぎ始めた..
前回は,大海原に浮かぶことができた.今回沖に出ることはできなかった..でも,何とか船出できるまでこぎつけた.
何事もなく船出して海に対峙されているであろうころ僕は,子供たちの横顔を横目にひたすら富山に向かって車を走らせていたのでありました.
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