「津波漁」
ノボタンは小高い丘の上にある小学校に通っていた。
その日は、大地震が起こった。
先生に誘導され生徒は直ぐにグランドに避難した。
学校は大混乱。
下級生が倒壊したブロック製の煙突に潰され死亡したらしい。
次々起こる余震に怯え、家までどうやって帰ったのか、あまり憶えていない。
ノボタンの家は河口付近にあり港が見える。
地震による津波がノボタン家の直ぐそばまで来たようで、家の付近は残骸の山になっていた。
津波で押しつぶされる事はなかったノボタンの家だが、激しい揺れのためダメージをうけていた。
母ちゃんは周辺の後片付けをしていた。
やがて家族の無事を確認すると、父ちゃんが物置からカゴや袋を取り出してきて、それを兄弟に手渡した。
てっきり「ゴミの片付けでも手伝え」って言うのかと思ったら、
父ちゃんはなんと港の方に走って行った。
港は河口にあり、津波の爪あとは物凄かった。
無数に散らばる船の残骸。
そのままの形で丘に乗り上げている大きな漁船もあった・・・。
港に着いて驚いた。いつもは多くの水を湛える川の水が無くなっている。
津波が来た後、その勢いで、一端水が引く。
地震は最大級と言われる大きい物だったので、水が引く勢いも半端じゃない。
父ちゃんが叫んだ「急げ!!」
「何を?」
その瞬間父ちゃんのゲンコが飛んだ。
「降りて魚拾え!!」
津波がいつ戻るかも解らないこの川に下りて魚を拾えというのだ。
地震の恐怖覚めやらないノボタンだったが、後からくる津波より、今ここにいる父ちゃんの方が恐ろしい。
水が無くなった川底には無数の魚がピチピチ跳ねている。
ノボタン達は無我夢中で魚を拾い始めた。
父ちゃんは丘で立って近所の人を話をしている。
「人に働かせて勝手なもんだ」ノボタン文句を言いながら、その手を休める事は無かった。
暫くすると、また父ちゃんの怒鳴り声。
「上がれ~!!津波がくるぞ!!早くせぇ~!!」
ノボタン達は慌てて丘に上がった。
捕った魚を家に運び終え、再び港に戻ると川は溢れるほど海水が流れこんでいた。
さっきまで川底が見えていたのに、すごい勢いで水位が上がる。
しばらく待つとまた潮が引く。
父ちゃんは、約20分くらいは津波が戻ってこない事を観察して知っていたのだ。
ノボタンたちは父ちゃんのかけ声に聞き耳を立てながら何度も何度も潮の引いた川に入り魚をとった。
2回目からは魚とりが楽しくなってきた。
潮が引くたび何度も降りて魚を拾った。
どのくらい捕ったのか解らないくらいの大漁。
「これでしばらく色々な魚がたらふく食べられる」
・・・・・と思ったら、なんと次の朝、父ちゃんは捕った魚の大半を近所の被災者に配ってしまった。
ノボタンはガッカリした。
おわり
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ノボ「今、考えたらホントに危ないよなぁ。」
ピコ「普通は思いついてもやらないよな・・・。」
ノボ「嫌がる暇もないんだって。あいつは鬼だな。」
ピコ「・・・なんもいえない。」
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それにしてもノボタンのお父さんは先を見通せるスバラシイ総司令官だ!
そしてゲットした魚を独り占めしないでみんなに分けるなんて!
こう言う人が総理大臣なら良いのにね~。
ゲンコツは要らないけど (^O^)
なかなか知ることの出来ない時代の話を
わかりやすくおもしろくまとめてあって、
とっても好きです♪
最後のノボさんとピコりんの会話がなおよろし。
(追記:非難→避難では?)
僕のひいおじいちゃんは、山沿いに住んでいましたが、チリ地震の時、海岸近くに方づけなどを手伝いに行って、魚を拾って帰ってきたそうです。
近い島なら、陸続きに成る程、潮が引くらしいですね。
>父ちゃんは、約20分くらいは津波が戻ってこない事を観察して知っていた
ノボタンさんのお父さんも、昔、似たような事をさせられて、知っていたのでしょうかね~。
津波も怖いし、食糧難も怖いですね・・・。
でも危険である事を除けば、魚拾いは楽しいでしょうね。
なんか昔の人は、自分ばかり良い思いをしていると、バチが当ると信じていたようです。
100%あるうちの20%を他人に与え80%で我慢していると、自分が60%で困っていると、だれかが20%くれて80%になれる。って・・・保険みたいな物ですね。
niyaさん
この話好きですか!!ありがとうございます!!
退屈なじいさんの話なのでどうかな?と思っていたのですが、書いてよかったです。
「非難→避難」お知らせいただきありがとうございます!!
早速直しました!!
がしらさん
へぇ~。チリ地震の津波でも魚が拾えたんですね!!
やっぱり島が陸続きになるほど潮って引くんですね。
ノボタンのお父さんも、昔、似たような事をさせられていた可能性はあります。
地震の多い地方だから津波も多かったので、こうなることを知った上で、観察していたんでしょうね。