昭和三丁目の真空管ラジオ カフェ

昭和30年代の真空管ラジオを紹介。
アンティークなラジオを中心とした、自由でお洒落な、なんちゃってワールド♪

東芝(TOSHIBA) 「かなりやK」 5YC-763

2006-04-03 | 東芝 かなりやシリーズ
              
   東芝(TOSHIBA) 「かなりやK」 5YC-763

 真空管ラジオとトランジスタラジオの混在した時期はしばらく続いたが、トランジスタラジオの低価格化と普及が進み、真空管ラジオは終焉を迎えることとなる。
 茶の間の娯楽がラジオからテレビへととって代わった1950年代中盤から約10年間、『かなりや』シリーズは、ラジオのパーソナル・ユースというニーズに応えた小型卓上真空管ラジオである。つまり「デザイン」という付加価値をつけながら40種類近くに及ぶ機種を発売し、あの昭和30年代、多くの人々に受け入れられた量産工業製品である。

「かなりやK」は、東芝かなりやシリーズの最後から2番目のモデルであり、最後期の真空管ラジオの姿を見たくて入手したのだが、デザイン的にまったく魅力を感じさせない機種だ。

 フロントの透明周波数表示パネルのバックに木目の貼紙を採用し、メーカーは「意匠に新鮮味を加えた」つもりのようだが、当時のトランジスタラジオに用いられていたアルミ多孔板を使ったスピーカ・グリル、薄っぺらなプラスチックキャビネット、シルバーのツマミ、これらのコンビネーションがまったくアンバランスで、悲しいくらいまとまりのない安っぽいデザインとなっている。

 メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA)『かなりやK 5YC-763』

 サイズ : 高さ(約13.5cm)×幅(約28cm)×奥行き(約12cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1650KC/短波 3.9MC~12MC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)
          30A5(電力増幅)、35W4(整流)

 電気的出力 : 最大1.5W  電源 : 50~60c/s 100V  消費電力 : 25VA
 
 スピーカ : パーマネント・ダイナミック・スピーカ

 ちなみにこの「かなりやK 5YC-763」は昭和40(1965)年のモデルであるが、その10年前に同じ名称で1956年に(初代)「かなりやK 5LP-108」というデザイン・設計思想のまったく異なるモデルが発売されている。
車の世界では過去に廃車となった人気モデルの名前を新車にネーミングするケースを稀にみるが、この時代の真空管ラジオにこのようなマーケティング戦略があったはずもなく、のんびりした時代だったのか、その背景は謎である。

              
   シャーシの四角い穴が哀愁を誘う「かなりやK」

 裏蓋を開けるとシャーシにポッカリ穴の空いた部分が目に入る。かなりやQのシャーシを流用し、従来は外部入力の端子がついていた場所だが、こんなラジオを増幅器にして利用する家庭もなく外部入力は省略されてしまった。終末期を迎えた真空管ラジオの哀愁が漂う部分である。
また写真左奥に見える、トランジスターラジオの部品を流用した小指ほどの長さのバーアンテナまでが、トホホな気分をさらに増幅させる。

              

 オークションでは「動作品」ということであったので点検を行なわないまま電源を入れてみたところ、途端にパイロットランプ、ヒューズが飛んでしまった。
 シャーシにサビもなく、埃も比較的少ないほうだが、キャビネット底に通気穴が開いているためシャーシ内側は年代相応の埃が溜まっている。ダスト・クリーナーを吹きつけ、埃を飛ばして清掃した。

              

 キャビネットからシャーシー、スピーカーを取り外し、PLとゴムブッシュ、電源周りのコンデンサー類を交換したところ正常に作動したが、なぜ「動作品」がショートしたのか、未だ謎である。
特に埃が多く溜まっていたMW/SWのバンド切り替えスイッチもエレクトロニクスクリーナーで丹念に清掃し、接点復活剤を麺棒で慎重に塗布しておいた。
またチューニングダイヤルがスリップするため、糸掛けを一旦外し、バネでテンションがかかるよう再度巻き直すのだが、スムーズに動き出すと、手先の不器用なボクとしては苦労が報われた気分になってくる。

              
   新品に近い輝きをとり戻した「かなりやK」

 当初、キャビネットとフロントの透明パネルには年代相応の汚れとキズがあり、埃も溜まっていたが、キャビネットを洗浄し、時間をかけてコンパウンドで丁寧にキズや汚れを落とし、新品に近い輝きと透明感をとり戻した。
電源スイッチを入れると暖炉の灯火のようにパイロットランプが暖かく灯る。
バーアンテナを内蔵しているためか、調整しなくても感度は比較的良好である。

 透明度の高いフロントパネルを通して見る木目のバックパネルと淡いピンクのキャビネット、アルミの質感が融合したデザインの「かなりやK」を眺めていると、ニュージーランドへ旅行したときに泊めていただいた家庭のキッチンにあったラジオを思い出す。
 そのラジオは日本製かどこの国の製品か不明だが、安っぽいプラスチックケースに包まれたラジオからは、クイーンズ・イングリッシュのトークとポピュラー・ミュージックがゆったりとした時間の中で流れていた。

              
   ニュージーランドの歌姫 ヘイリー(Hayley Westenra)18才♪

 ニュージーランドといえば、弱冠18才の歌姫、ヘイリー(Hayley Westenra)。
2003年にアルバム『ピュア』でセンセーショナルなデビューを果たし、大ヒットドラマ『白い巨塔』の主題歌「アメイジング・グレイス」、続いて太平洋戦争中に密命を受けて出撃した日本海軍の潜水艦の戦いを軸に、役所広司、妻夫木聡らが展開する大作映画『ローレライ』の主題歌「モーツァルトの子守歌」で日本でもその「ピュア・ヴォイス」が一躍大注目を浴びた。
アルバムでは日本人にも馴染み深い「カッチーニのアヴェ・マリア」「モーツァルトの子守歌」といったクラシックの名曲をアレンジした曲や、ポップなオリジナル曲、大ヒット映画『ロード・オブ・ザ・リング』の主題歌として話題となったエンヤの「メイ・イット・ビー」やジョニ・ミッチェルの「青春の光と影」といったカヴァー曲で構成されている。

 彼女の笑顔とニュージーランドの大自然を思い出すと、「安っぽいラジオだって、別にイイじゃん!ちゃんと音が鳴るんだから・・・」という寛容な気分になってしまう。

 店員ユー: ついさっきまで「コンビネーションがまったくアンバランスで、悲しいくらいまとまりのない安っぽいデザイン・・・」とかって滅茶苦茶に言ってたくせに!!

 はいっ、ボクで~す!俺はなぜかホワイト・アングロサクソン系やスラブ系の女の子から人気があるの知ってるだろ~ おまけに18才~♪フォ~(店長)

 店員ユー: 何か、勘違いしてるし・・・・この○○オ・ヤ・ジ★