湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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チャイコフスキー:交響曲第2番(1872年版)

2007年02月14日 | チャイコフスキー
○サイモン指揮LSO(CHANDOS)1982/8聖ジュード・オン・ザ・ヒル教会・CD

原典版大好きシャンドスの好企画。このスッキリ締った曲が、最初如何にペトログラード音楽院寄りになっていたかが伺える「ロシア国民楽派」ぶりで、1楽章からいきなりの第二主題の出現に諸所の「延長」ぶり、冗長と見る人もいるだろうが、展開部からしていきなりボロディンになったり、バラキレフやリムスキーの生硬な習作に似た「展開のための展開」が却って拡がりのある世界を作り出し、また録音もよくロシア音楽向きのアグレッシブな勢いを維持しているので、ロシア慣れしている人はふとすると決定稿より好きかもしれない。楽想も民謡主題が追加されていて、更にブラス総出でしょっちゅうブワーブワーとやったり、そりゃこの時期は確かにチャイコはロシア国民楽派に尊敬されていたわけだなあ、という次第である。これ、演奏も流石現代のレベル、そうとうにまとまりがあるうえにロシア式発音・態度で録音も素晴らしいのでロシア好きは堪らないでしょう。私もちょっとかなり惹かれました(原曲が好きすぎて短すぎると思ってたくらいですしね)。長いです、1楽章は16分弱、構造がわかりにくくなるくらい。ジェフリー・サイモンは速めのテンポでまとまりよく進めていくから2楽章なんかも心地よくリズムにのれる。過度にリズミカルにも冷静にもしない。こちらは多分ほとんど変わってないが3楽章いきなりシンコペがテヌートでびっくりする。楽器の組み合わせも違いヴァイオリンが前面主体になって単調に進むところがまた生硬な書法のロシア国民楽派を想像させる。というより日本語解説にあるとおりボロディンの「剥き出しの書法」に影響されているのだろう。中間部は楽器の組み合わせはそれほど目立たないがピッコロ主題が違っていたりと耳を話さない。録音のせいもあるがサイモンとロンドンオケはじつにドイツ的な重厚さも兼ね備えた壮大な好演ぶりが光る。格調をそなえながら野趣を音色作りに昇華している。さて12分43秒かかる終楽章なわけだが、しょうじきこの曲好きの私にはちっとも長く感じない。あっさりしすぎていたのだ。ストラヴィンスキーが自分の意思とも言えなかったものの唯一指揮したのがこの2番改訂版だったことを考えると、ストラヴィンスキーが後年自作に施した簡素化が改訂版の「余りにすっきり短くまとまっているさま」に親和的な部分があったのは確かだろう。楽器が足りなかったり細かくは違いはいろいろありそうだが、展開部が物凄く長い。全曲のバランスとしては後半部を物凄く削ったというのはよくわかる。ようはスタンスの問題で、改訂までの7年のうちにチャイコがどのように変化したのか、クーチカの国民楽派と離別し対立構造まで生まれたのはその「プロフェッショナル性」と「形式性」にあるんだなあと。まあ、さすがに長いです終楽章。何度も第一主題が繰り返されるのに辟易とする向きも、変容の仕方にチャイコが得意とした(個人的には惹かれないが)楽器の組み合わせなどによる変奏手法の面白さは否定できまい。繰り返しは確かに少しずつ音高を高めていって、しっかり盛り上がっていく道程にはなっているのである。しかしこれでも40分ないのである。これだけ大交響曲になってくれたほうが寧ろ小ロシア普及委員会としては好都合だなあ・・・だれがやねん。第二主題、いわゆる鶴の主題の引用が第一主題のひつこさに比べて余り目立たないのはちょっともったいないか。いずれボロディンの1番の構造を彷彿とするところもあり、そのよさ、悪さを共に受け継いで、更に明らかに凌駕する才気がこれだけ響く輝かしい楽曲を仕上げたのだなあと思った。終盤の演奏はやや安定しすぎか。余りに優等生。ルビンシュタインの命名日というチン曲とまぜっぱ抜粋、ロメジュリ初稿(69年という時代の作品だから2番と同じ経緯をたどったのである)とのカップリング。にしてもやる気のある指揮者は音楽が違う、かつてのロジェヴェンやスヴェトラ、ヤルヴィ父よりも「オケのやる気を引き出させ一定の水準を引き出す」力にはすぐれているように感じる。時代の差だろう。オケは変幻自在のロンドンオケだから。○。

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