○マゼール指揮バイエルン放送交響楽団(VON-Z:CD-R)1998/2/24シャンゼリゼ劇場live
1楽章。丁寧で荘重なテンポとフレージングが一種重さや暗さを孕み、同じ遅いテンポでもゆったり横の流れで壮大さを演出するジュリーニなどと違い深層的なマーラーらしさを獲得しているのがマゼール。BRSOだとVPOよりリアルな甘さの無いマーラーに聞こえる。色艶や荒々しさや力強さはなくマーラーの世俗の側面が煽られないぶんマーレリアンに受けがよくないのかもしれない。流麗で特有の空気感があり、しかし所々でテンポを思い直すようなリズムの重さがクレンペラーの解釈を想起する。もちろん時代柄もありそうとうに大人しく、また大人な演奏でもあるが、厳しく疎な音響(この1楽章であっても「音符が少ない!」と思わせてしまう!)に常時緊張が漲る、そういうリアリズムはライヴ演奏特有の迫真味を味あわせる。特に緊張感の高い演奏ではあると思う。
2楽章。1楽章に比べれば速い。弦がBRSOらしい雑味を入れながらも軍隊行進曲のように鋭く音符を切るさまにもこの指揮者の厳しいアンサンブル指示ぶりが伺える。律儀ですらある。じつに色のないベートーヴェン的な演奏。この生臭いスケルツォをこう捌くやり方は、私は好き。オケは堪らないか。スタジオ録音ならここまで制御されると分析的で詰まらなく感じるかもしれない。あくまで設計ありきで近視眼的な変化を付けないさまもマゼールらしい。
3楽章。少しテンポが重過ぎてダレ味が出る。ザッツもそれまでの精度が保てない。2と3の曲想の変化が無いゆえにテンポや表現で違いを付けないと聴く側も気分的な切り替えができないから、そういう細部が気になりだす(一応チューニングを挟んではいるが)。この曲特有の難しさでもありマーラーの中間楽章に時折感じられる難しさでもある。中間部の悲愴な音楽を際立たせるのであればテンポでなくともせめて色調に変化を付けて欲しいものだが、わりと即物的に処理されている。ハーモニーのバランス良さには聴くものがある。コーダで初めて激しく動き出すがどこかバラケとテンポ的な躊躇を感じさせる。派手な音響を煽ったのは長い無音状態のあとの4楽章とのコントラストを付けるためだろう。
4楽章はしかしそれほど力まないsulGから始まる。録音が遠いのかもしれない。音構造の透けて見えるマゼールの整え方はやはり弦主体の部分で最も的確に生きてくる。チェロバスの弾く和音的フレーズの何と詰まらないことか。でも肝心なところで動くため、無いと成立しない。こういったところが実にわかり易く聞こえる演奏である。まるで鉄鋼機械のようなガッシリしたアンサンブルがマーラーの「境地」をしっかりうつす。線的で単純な、音符の少ない音楽。でもワルターのようなウィーン的な横の動き主体のメロディ音楽にはせず、あくまでマゼールは縦のしっかりした「アンサンブル」としている。だからこそハーモニーの妙なる動きが手に取るようにわかり、立体的なマーラーを好む向きには向いている。その方法はクライマックス後に本数を減らしていくオケの退嬰的な「響きの音楽」にスムーズに受け継がれ、繊細極まりない終演までの大きな流れに首尾一貫した印象をのこす。
拍手が変に歪んでいるがブラヴォはけっこう凄い。
1楽章。丁寧で荘重なテンポとフレージングが一種重さや暗さを孕み、同じ遅いテンポでもゆったり横の流れで壮大さを演出するジュリーニなどと違い深層的なマーラーらしさを獲得しているのがマゼール。BRSOだとVPOよりリアルな甘さの無いマーラーに聞こえる。色艶や荒々しさや力強さはなくマーラーの世俗の側面が煽られないぶんマーレリアンに受けがよくないのかもしれない。流麗で特有の空気感があり、しかし所々でテンポを思い直すようなリズムの重さがクレンペラーの解釈を想起する。もちろん時代柄もありそうとうに大人しく、また大人な演奏でもあるが、厳しく疎な音響(この1楽章であっても「音符が少ない!」と思わせてしまう!)に常時緊張が漲る、そういうリアリズムはライヴ演奏特有の迫真味を味あわせる。特に緊張感の高い演奏ではあると思う。
2楽章。1楽章に比べれば速い。弦がBRSOらしい雑味を入れながらも軍隊行進曲のように鋭く音符を切るさまにもこの指揮者の厳しいアンサンブル指示ぶりが伺える。律儀ですらある。じつに色のないベートーヴェン的な演奏。この生臭いスケルツォをこう捌くやり方は、私は好き。オケは堪らないか。スタジオ録音ならここまで制御されると分析的で詰まらなく感じるかもしれない。あくまで設計ありきで近視眼的な変化を付けないさまもマゼールらしい。
3楽章。少しテンポが重過ぎてダレ味が出る。ザッツもそれまでの精度が保てない。2と3の曲想の変化が無いゆえにテンポや表現で違いを付けないと聴く側も気分的な切り替えができないから、そういう細部が気になりだす(一応チューニングを挟んではいるが)。この曲特有の難しさでもありマーラーの中間楽章に時折感じられる難しさでもある。中間部の悲愴な音楽を際立たせるのであればテンポでなくともせめて色調に変化を付けて欲しいものだが、わりと即物的に処理されている。ハーモニーのバランス良さには聴くものがある。コーダで初めて激しく動き出すがどこかバラケとテンポ的な躊躇を感じさせる。派手な音響を煽ったのは長い無音状態のあとの4楽章とのコントラストを付けるためだろう。
4楽章はしかしそれほど力まないsulGから始まる。録音が遠いのかもしれない。音構造の透けて見えるマゼールの整え方はやはり弦主体の部分で最も的確に生きてくる。チェロバスの弾く和音的フレーズの何と詰まらないことか。でも肝心なところで動くため、無いと成立しない。こういったところが実にわかり易く聞こえる演奏である。まるで鉄鋼機械のようなガッシリしたアンサンブルがマーラーの「境地」をしっかりうつす。線的で単純な、音符の少ない音楽。でもワルターのようなウィーン的な横の動き主体のメロディ音楽にはせず、あくまでマゼールは縦のしっかりした「アンサンブル」としている。だからこそハーモニーの妙なる動きが手に取るようにわかり、立体的なマーラーを好む向きには向いている。その方法はクライマックス後に本数を減らしていくオケの退嬰的な「響きの音楽」にスムーズに受け継がれ、繊細極まりない終演までの大きな流れに首尾一貫した印象をのこす。
拍手が変に歪んでいるがブラヴォはけっこう凄い。
ばよりんの人はそう取るか。
ちよりすととしてはあの動きは結構好きなんだけどね。
特に第二チェロの動きは好きだなぁ。
一度は弾きたいな。
全身全霊、一音入魂で弾きたいものだ。
で、ブーレズの75年まだ怒れる時代の演奏をディスコ・アーカイバで、聴いて結構感動。まだブーレズが暴れている。
ブーレーズはDA以外にも裏青出てますね
「ブーレーズはDA以外にも裏青出てますね」そうでしたか?原則ブーレーズは最近のは買わないのですがDAの番号が、テンシュテットのブルックナー7番8番の前だったものですから75年が目について買ったのです。個人的には意外なあたり。アルカディアよりよほどいいと思います。
マゼルはパンドラは、ご指摘のものが全てです(確認いたしました)、でも7番は結構気に入っている、3番は私めもバイエルンです。ウィーンフィルはプロコフィエフの5番が圧倒的に変だったので印象大です。3.6.7.8番はバイエルンでも購入いたしましたが、9番はマゼルには期待できず購入しておりません。
だって、雅子様結婚前のバイエルンのブラームス(1番4番)での世の好評と実演を聴いたがっかりどの落差が、アンコールでのはしゃぎぶりとあいまって極めて悪印象を刻み付けましたので。