湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

※旧ブログの一部コラム・記事、全画像は移植していません。こちらのコンテンツとして残します。

ウォルトン:交響曲第1番

2019年04月03日 | イギリス
○ダニエル指揮イングリッシュ・ノーザン・フィル(naxos)CD

リズムがキレて非常にカッコいい。ウォルトン1番の映画音楽的な魅力を派手に引き出している。下手なオケではないはずだが木管の鄙びた音や弦楽器の乱れが目立ち、いやそこまでして感情的に煽っているのだ。冒頭など長い松葉が弱くスケール感は出ないがそういう演奏も良い。この曲でメロディをしっかり歌わせているものに出会うことはすくない。シベリウスを換骨奪胎したようなあざといウォルトンを、あざとくやっている。伸びるほうには揺れないが、音の濃淡ははっきり付けられ、切り詰めて前へ向かう力は自作自演や他の新しい演奏のように整えた感なく、ちゃんとアンサンブルできているからこそ生まれるもの。ごちゃっとはしない。即物的な演奏ではなく、細かい解釈も活きている(雑味が多いのにハーモニーは綺麗に整えられている)。細かい仕掛けもちゃんと聴こえる良録音で、スカッとするアレグロ楽章ではなく、三楽章のようなメランコリックな楽章でこそ純度の高いウォルトンの現代性を堪能できる。末尾近くの空疎な悲劇的な響きはマーラーを換骨奪胎しているのかもしれない。四楽章はしっかり序奏してから攻撃的に向かうが、ここは割と他の演奏と似通っているかもしれない(マンネリ的で幅が出しにくいのだろう)。弦楽器がピチピチ活きが良く、フーガでは細かい音符に折り混ざる長い音符をテヌート気味に撫で付けるのが心憎い。細かいスコアに細かい演出を加えてしっかりやっている。ブラスに迫力が欲しいが裏の動きがわかりやすく面白い。言われなければアメリカの曲と思ってしまいそうな清々しさで走り抜ける。中盤以降はかなりヒートアップしているように聴こえる。音場が狭いのでせせこましさは否めないが、弦楽器がひたすら刻んでいる曲が好きな向きは大柄な管楽器と打楽器で壮麗にやるより好きだろう。ウォルトンはとにかくこの曲ではしつこいので、最後も現代のベートーヴェンかと言うくらいしつこくフィナーレっぽいフレーズを楽器を変えて繰り返すのだが、そのあたりでは情緒たっぷりにソリストたちに歌わせたあと、壮大な幕切れに向かっては、なかなか凄い迫力だ。何度打つんだという終止音。これは良いです。
ウォルトン:交響曲第1番/パルティータ(イングリッシュ・ノーザン・フィルハーモニア/ダニエル)
ウォルトン,ダニエル,イギリス・ノーザン・フィルハーモニア

Comment    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ※アフィリエイトリンクについて | TOP | ルーセル:エヴォカシオン »
最新の画像もっと見る

post a comment

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Recent Entries | イギリス