湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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ドビュッシー:弦楽四重奏曲

2006年07月12日 | ドビュッシー
○ヴィア・ノヴァ弦楽四重奏団(ERATO)CD

線の細いおとなしめの演奏だが、音色がなかなか繊細で美しい。軽やかで上品だ。フランスらしい演奏とはこういう演奏を言うのだろう。押しの強さではなく、引き方の巧さで聴かせる。全般遅めのインテンポで特徴的なものはないが、聞いていて気持ちのよい演奏だ。かなりさらっとしているので、2楽章などはBGM向きだろう。1楽章は余りに地味と思ったが、3楽章はやはり落ち着いた雰囲気であるものの、楽章の性格上なかなか思索的な演奏になっている。チェロの提示する第二主題が密やかに感傷を煽るのもまた何とも言えない。盛り上がりどころでの音量やテンポ変化がさほどなく、物足りなさを感じる人もいるかもしれないが、全体の統一のとれた解釈であり、静かな場面の表現により傾聴すべきものであろう。4楽章の静かな序奏部から警句的な主部への移行が実に注意深く、周到なアッチェランド含め耳を惹くものがある。主部が余りがなりたてない、やはり控えめな表現だが弓使いが巧く不自然さが無いのが耳心地いい。この団体で聞くべきはやはり弱音部なのだなあ、とシンコペ主題前の沈潜するヴァイオリンを聴いていて思った。その後のダイナミックな展開はきちっと出来てはいるが余り押しが強くない。しかしそこが「我々が思い浮かべるフランス的なるもの」をまさに体言している気もする。実に上品だ。それほど協和した音色でもなく、アンサンブル的に練られているわけでもないのだが、個々の技と全体の解釈の妙で(それほどあるわけではない「構造的な部分」になると敢えて内声を強く押し出し音楽全体の膨らみを持たせるなど、細かく聴けば発見がある)さすがと思わせるものがある。「踏み外さない演奏」というのを私は余り好きではないのだが、これは一つの立派な解釈だと思った。最後の協和音はきっぱり弾ききって清清しい。○。

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