湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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☆グリエール:交響曲第3番「イリヤ・ムーロメッツ」(1909-11)<完全版>

2017年06月23日 | Weblog
ファーバーマン指揮ロイヤル・フィル(UNICORN-KANCHANA)1978/12/14,15,17・CD

<ここにはムソルグスキー(2楽章)、チャイコフスキー(4楽章)、グラズノフ(3楽章)、スクリアビン(2、4)らの、それまでの全てのロシア音楽が包蔵され、一方でワグナーからリヒャルト・シュトラウス、マーラーといったドイツ・オーストリア世紀末音楽の残響(1、2)、プロコフィエフに繋がるような民族的主題の現代手法による料理(3)、兎に角さまざまな20世紀初頭的要素が混在している。この一曲でロシア民族楽派の終焉と新しいソヴィエト音楽の夜明けが体験できる。無論表題交響曲であるから劇音楽風だが、内容的にもチャイコフスキーの悲愴を思わせる結末では、それがリストの影響色濃いロシア楽派本来の伝統だと気付かされよう。この曲が革命に向かって雪崩落ちる帝政ロシア最後の爛熟大作であることを考えるとさらに感慨深い。スークのアスラエル(死の天使)交響曲と並び、近代と現代の過渡期における最後の民族主義交響曲として、これからも長く名を残すであろう。グラズノフと一括りにされることがあるが、グラズノフが結局ロシア帝国時代の作曲家であったのに対して、グリエールは新しい時代の作曲家であった。この差は聴けば歴然である。>

~なっがーーーーーーーーーーーーーーーい!!
45分目処の曲だと思ったら大間違い、ほんとの全曲版は93分かかるのだ。短縮版と同じく4楽章制で各楽章の表題も同じ。全楽章がだいたい半分くらいに縮められているのがわかる。長い英雄譚の筋書きに基づいて書かれている表題音楽だが、ワーグナーの楽劇が必ずしも話の筋を知らなくとも楽しめるように、「イリヤ・ムーロメッツ」という人物がどんな波乱に満ちた人生を送ろうとも、それから解き放たれて自由に想像を膨らませることができる。大編成のオーケストラでこれだけの長さをもった誇大妄想的な交響曲を書いたロシア人はグリエールぐらいだろう。この作品をもってグリエールは世紀末的な爛熟したロマン性を包蔵した音楽を書くことを止めてしまう。革命後、まるで社会主義体制に寄り添っていくが如く、簡潔で平易な作風に転じる。社会主義リアリズムの思想に賛同し、積極的に体制側につく。いくつかのバレエ音楽で知られるがいずれもこの作品のようにドロドロした暗いロマン性は微塵も持たない作品となっている。まあ、そうはいうもののイリヤ・ムーロメッツは西欧の世紀末音楽に比べればずいぶんと簡単でわかりやすいものであり、「わかりやすい」ことこそがグリエールの本質なのかもしれない。旋律の魅力はグラズノフほどではないにせよその後継者たるべき素質は十分にあったわけである。だが、短縮版で目立ったメリハリある表現、魅力的な旋律は、この完全版で聞くとのべつまくなし、やたらと繰り返されていいかげんイヤになるほどである。比較的ゆっくりとした部分の多い楽曲の中で唯一グラズノフ的な祝祭的雰囲気を持つ、スケルツォに相当する3楽章は、7分(短縮版で5分弱)かけて気分を浮き立たせるが、他の楽章が27、8分という異様な長さのため、それらの中であまりに目立たない。2楽章など私は好きなのだが、まるでスクリャービンの後期交響曲の法悦的場面がえんえんと続くような生暖かい楽章となっている。いや、スクリャービンを通して見たワグナーの影響と言った方が妥当か。最初は好きだから楽しんで聞いているのだが、そのうち「おいっ!!」とツッコミを入れたくなるほど長々と続く法悦に嫌気が差してこなくも無い。終楽章なども長い。寝てしまう。ムーロメッツは石となって死んでしまい、ほかのすべてのロシアの勇士も死んでしまうという悲愴な楽章だが(いかにも帝政ロシア末期的発想だ)まあ楽想は面白いものの、ここまで長々とやる必要があるのか?と思ってしまう。まあ、1楽章もそうなのだが。ファーバーマンは定評ある指揮者だが、若干綺麗すぎる。ロイヤル・フィルのチャーミングな音色も曲のロシア色を薄めている。だがしかし、もしロシアの演奏家による全曲版を聴いたとしたら、あまりの脂身の多さにヘキエキすることは間違いなく、やはりこのような穏やかで美にてっした演奏こそが正しいやり方なのだろうとも思う。録音が弱い。もっとメリハリのある音がほしい。・・・とりあえずは参考記録として無印にしておく。この他に完全版の録音を知らないから相対評価できません。NAXOS盤は全曲版と称しているがどう考えても70分台に抑えられるとは思えないので、あやしい。(未検証ですが。)

※2004年以前の記事です
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