私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「それでもボクはやってない」

2007-01-28 16:20:41 | 映画(さ行)


2007年度作品。日本映画。
満員電車内で痴漢にまちがえられ逮捕された青年、彼は無実を訴え続けるが、警察も検事も彼の主張を聞こうとはしない。青年は無実を訴え、裁判を戦うこととなる。
監督は「Shall we ダンス?」の周防正行。11年ぶりの作品。
出演は「ハチミツとクローバー」「硫黄島からの手紙」の加瀬亮。瀬戸朝香 ら。


社会派の力作である。
2時間20分を越える長尺な作品だが、退屈するということがなかった。ストーリーとして引き込まれ、考えさせられるものに仕上がっている。

表現される素材は痴漢冤罪裁判だ。
男性は女子高生により痴漢として捕まり、その後、取調べのため長期にわたり拘留される。彼は無実だったが、警察はそれに取り合わない。
多分満員電車で、通学ないし通勤したことのある男性なら、この映画の内容には恐怖を覚えるのではないだろうか。それほどまでにリアリティがあり、それによって、観ていても空恐ろしいものを覚える。

映画から浮かび上がっているのは日本の警察制度、並び、日本の裁判制度にある矛盾だ。
はっきり言ってこれはひどい。やってもいないのに、女子高生の証言を元に、証拠もどきを組み立てて、ひとりの人間を犯罪者に仕立て上げていく。裁判所側も無罪を出すことを恐れるあまりに、ハナから疑ってかかっていく傾向が見える。そしてそれに立ち向かうには痴漢をしていないということを立証しなければいけない。
その理不尽とその容易でない状況、その困難、その様は見ていても、非常につらいものがあった。

はっきり言って、この男性を有罪とするには、どの証拠も、証言も根拠とするにはあまりに弱い。しかも人の記憶は印象によって簡単にゆがむため、その脆弱さは際立ってしまう。
確かに、この人を無罪だとする証拠も弱いかもしれない。でもそれによって真に無実なのに、それが通らないかもしれないというのは残酷ではないだろうか?

痴漢は許されるべきでない。痴漢をされる女性の恐怖はよくわかる。しかしそれによって無実の人間をつくるのは愚かしく悲しいことだ。そんなことを強く思った。

あと、加瀬亮が非常によかった。気弱な青年を熱演していたと思う。主演でも充分、絵になっていた。

評価:★★★★★(満点は★★★★★)


制作者・出演者の関連作品感想:
・加瀬亮出演作
 「硫黄島からの手紙」
 「好きだ、」
 「ストロベリーショートケイクス」
 「ハチミツとクローバー」
 「花よりもなほ」
・瀬戸朝香出演作
 「DEATH NOTE デスノート 前編」
・もたいまさこ出演作
 「かもめ食堂」
・役所広司出演作
 「THE 有頂天ホテル」
 「SAYURI」

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