私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

2006年度 私的ブックランキング

2006-12-28 22:11:30 | 雑感
本年度総括ということで今年読んだ本のベスト10を選んでみた。

1位 恩田陸『夜のピクニック』
 
爽やかな読後感が何よりもすばらしい。
何てこともないエピソードの中に、青春小説と成長小説の味わいを持ち込み、淡い感動を生み出していたのが印象深い。


2位 ドストエフスキー『悪霊』
 
何から語ればよいかわからないくらいに深い作品。
うねりに富んだプロット、その物語の悲劇性、そして奥深い人間描写。特にスタヴローギンのキャラ造形は際立っていた。


3位 宮部みゆき『模倣犯』
 
その重層的な物語構造、ささいな人物にまで視線を配り、丁寧に描ききった姿勢にただ脱帽。
『悪霊』との順位の差はスタヴローギンとピースの差である。惜しかった。


4位 中村航『ぐるぐるまわるすべり台』
 
夕陽の差す中、髪を切るシーンが忘れがたい。このシーンの美しさが青春小説として独自の光を放っていたと思う。
併録の「月に吠える」ともども、爽やかな読後感だ。


5位 西尾維新『クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識』
 
正直、この作品が上位に来ると思っていなかった。とにかくその世界の壊れっぷりが印象深い。
キャラ造形の勢い、物語のエネルギー、その中に西尾維新が売れる理由を見た気がする。


6位 ジョン・アーヴィング『ホテル・ニューハンプシャー』
 
これぞ一級のエンターテイメント小説。センチメンタルでメロドラマチックでテーマ性にも溢れている。
家族の愛情が暖かく美しく、幻想を追い求める姿が悲しく切ない。


7位 乙一『ZOO』
 
乙一の天才性を如実に伝える短編集。ともかくもその作風の幅広さに脱帽。
その中でも「SEVEN ROOMS」は紛れもない傑作だ。


8位 垣根涼介『ワイルド・ソウル』
 
単純にむちゃくちゃおもしろい作品。
描写の迫真性、圧倒的なストーリー展開、ラストまで勢いよく駆け抜ける力強さ、どれも一級品であった。


9位 米澤穂信『さよなら妖精』
 
若手ということで甘めの評価。
しかしそのストーリー構成の妙は絶品だ。ラストの切ない余韻も特筆ものである。


10位 ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』
 
★4つという低い評価を与えてしまったが、その物語構造の美しさは天才的である。時間が経つにつれて、僕の中で本作の存在が大きくなっていった。
恥を忍んで上位に置く。


◎番外
アゴタ・クリストフ『悪童日記』
トオマス・マン『トニオ・クレエゲル』
共に初読ではないのでカットしたが、両方とも世界的な傑作であることを再確認した。


●総括
基本的にミステリーなどエンターテイメント性のある作品が上位に来たように思う。
文庫派なので流行りの作品は追えないが、なるべく新しい作家をチェックしながら読書の幅を増やしていけたらいいな、と思う。

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