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物語を愛するあまり、物語を食べてしまう“文学少女”天野遠子と、ただの男子高校生井上心葉。ふたりが所属する文学部に持ち込まれたのは恋文の代筆だった。だがことは思いも寄らぬ方向に転がる……
野村美月のミステリアス学園コメディ第1作。
出版社:エンターブレイン(ファミ通文庫)
本作はタイトルに文学少女と銘打たれているだけあり、名作の、今回で言えば太宰治の『人間失格』の筋をなぞるかのように、物語は進んでいく。そういうガジェットもあり、小説が好きな人間にとっては、いくつかたまらないシーンが多い。
そしてその魅力を引き出してくれるのが、文学少女、遠子の文学に対する愛だ。特にラストの太宰作品に関する言葉の数々は、心に響いた。
僕はもう何年も太宰は読んでいないし、そんなに熱心な読者ではなかったのだけど(計6冊でそれなりの数は読んでいるけれど、はまりきれなかった)、この本を読んでいたら久々に読みたくなってきた。そう思わせるだけでも充分にすごい。
ストーリーとしては、最初は軽めのタッチで進行するのだが、ラストでシリアスになってくる。そういうところは、個人的には好きだ。いわゆるメリハリがきいているし、ラストでカタルシスがあるところもいい。
手記の扱いに関しては、僕の予想はまあ半分当たり、半分はずれといったところである。多分、ミステリを読み慣れた人はなんとなくわかるだろうけれど、さすがに全部は解けきれない。
やや作りものめいた感があったのは残念だが、読者をなんとかミスリードしようとする姿勢が見えて好感触。
単純に楽しめることは請け合いだろう。
評価:★★★★(満点は★★★★★)
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