私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「白ゆき姫殺人事件」

2014-04-06 21:08:44 | 映画(さ行)

2014年度作品。日本映画。
湊かなえの長編作を『奇跡のリンゴ』の中村義洋監督が、井上真央を主演に迎えて映画化したサスペンス。とある美人OL殺人事件を巡り、その容疑者とされた女性にまつわる“噂”が、周囲の人々の悪意ある発言によって広まっていくさまがつづられる。
監督は中村義洋。
出演は井上真央、綾野剛ら。




「白ゆき姫殺人事件」はタイトルにある通り、ミステリである。
だが犯人当てとかそういう類のものではなく、人間関係の相克から生まれる異常性を描いた作品だと見ていて感じた。

物語のおもしろさと、現代的なテーマ性がうまくマッチした作品である。


山の中で一人の若い女の惨殺死体が発見される。番組製作の男は、被害者の同僚などから話を聞くうちに、被害者の同期の同僚が容疑者であると推定。その予断の下にワイドショーの番組映像をつくっていく。
そういう内容である。

犯人が容疑者でないだろうことは、お約束なので、大半の人にはわかるだろう。
では犯人は誰か、という展開には、この作品はならない。

ただ噂やあいまいな証言を元に、一般の女性が、容疑者としてネット上で糾弾されるという過程を描くことに焦点を置いているのだ。

一人の人間の嘘によって、それが思わぬ大きさになり広がっていく。
Twitter上でつぶやかれ、映像としてもつくられているため、デマや思い込みは多くの人間に共有されていく。
見ていると、どこかこわさを感じてしまう。


こわいと言えば、女性同士の心理的な衝突も見ていてなかなかこわかった。

相手よりも優位に立ちたいと思い、醜い方法で嫌がらせをする。
妬んだ相手の男を奪ったり、チケットをあげると期待させておいて、失望させたりしている。
そのねちっこさは、嫌な感じだ。

また親しいと思っていた友人から、実は下に見られていたことが判明して、友情がこわれてしまうところなどは、生々しくて目を引いた。
僕は男だが、こういう心理的な衝突はおもしろい。

それでいて、ろうそくの信号みたいな女の友情も描いているからすばらしい。


ともあれ、内容テーマ共に楽しめる作品だった。
中村義洋作品ではこの作品が一番好きである。

評価:★★★★★(満点は★★★★★)

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