私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「好きだ、」

2006-05-12 22:51:44 | 映画(さ行)


2005年度作品。
互いに惹かれあう17歳の男女、彼らの17年間に及ぶラヴ・ストーリー。2005年ニュー・モントリオール国際映画祭最優秀監督賞受賞。
監督はCFディレクターとして活躍してきた石川寛。監督2作目。
出演は「NANA」の宮崎あおい。「Dalls」の西島秀俊 ら。


何とも繊細な映画である。
時折に映される景色のシーンや、会話の間に起きる沈黙、何気なく佇んでいるだけのシーンなど、全てが静かで、あまりに美しい。
そしてそういった空白や沈黙の中から、登場人物の感情がこぼれ落ちているのが鮮やかであった。セリフ自体はそんなに多くはないのだけど、そこで語られる物語には実際に発せられる言葉以上に、多くのものが込められている。そして実際に映像で見せている以上に、深みのあるストーリーを感じさせてくれる。
そういった丁寧なつくりは見事なくらいだ。

主人公たちが互いに好意を抱いているのは見れば充分にわかる。
しかし、17歳の二人の感情の中には思い込みによる勘違いや、感情のもつれ、悲しみ、恋の苦しみ、すれ違いが紛れ込んでくる。その様は見ていてとにかく切ない。互いに若く、そのため感情をうまく言葉にできない二人の姿には、一度は誰しも感じたことのある苦しみに溢れていて、泣きそうになってくる。

34歳になってからの物語も微妙に切ない。
大人になっても、どこかで過去のひっかかりがあって、それが二人のキスシーンからそこはかとなく伝わってくるのが、何とも言えず良い。そう言った積み重ねのために、ラストシーンには淡い感動が漂っていた。

石川寛という監督を僕は知らなかったけれど、これは注目の監督だろう。
この先、どんな映画に出会うかはわからないけれど、間違いなく今年見た映画の中で上位に入るのはまちがいない。傑作の部類に入る作品である。

評価:★★★★★(満点は★★★★★)

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