2006年度作品。日本映画。
瀬尾まいこの同名原作を映画化。家族がそろう朝の食卓、そこで佐和子の父は、父さんをやめると宣言。そんなすこし壊れかけた家庭で暮らす佐和子は学校で、転校生の大浦と出会う。
監督は「奇談 キダン」の小松隆志。
出演は北乃きい。「亡国のイージス」の勝地涼 ら。
原作は未読である。そのため見ている最中、どのような形で物語が着地するか、まったく読めない作品であった。大概の映画は大きなラインがあり、それに沿って物語は展開するものだが、この作品にはそういうものがないからだ。
その手の映画は大体において、ダラダラして物語にたるみがある。
だけど、本作にはそのようなものがなく、2時間きっちりと楽しむことができた。脚本と演出がうまいのだろう。
映画としては家族映画と青春映画の融合といったところである。
青春映画部分である、主人公たち若いカップルの描写は見ていて非常に微笑ましいものがあった。なんと言うか甘酸っぱく、もどかしいような気恥ずかしいような面があって、見ていて楽しく、見守ってあげたい気持ちになった。
一方の家族映画としては若干の重みもはらんでいる。
しかしそこを重くなりすぎるでなく、泣きをあおるわけでもなく、それらを巧みに回避し、手ごたえのあるものをしっかり伝えている。その演出は鮮やかなくらいだ。
ひと言で本作をまとめるなら、人はひとりでは生きていないといったところだろう。映画のセリフではないが、「人は見えないところで守られている」。
物語の表面に目立っては出てこないが、母親も父親も兄もラスト近くの主人公のことを思いやっているのが(書きこみ量は少ないけれど)、よく伝わってくる。それだけに見ているだけで温かい気持ちになれるのだ。
人間関係は近すぎると、むだにがんばってしまい、気を使いすぎてしまう。それによってときには心が追いこまれることがあるかもしれない。
しかしそれでも家族である以上、その一員を思いやるものだ。そしてそんなことを無条件にしてくれるのは家族以外にはありえない。そんなことを思った。
良作であることはまちがいなかろう。
評価:★★★★★(満点は★★★★★)
制作者・出演者の関連作品感想:
・勝地涼出演作
「空中庭園」
「花よりもなほ」
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