今、実家に帰っている。
夜に両親とレストランに行った。
「車は俺が運転するから飲めば?」
酒が飲みたそうな父親に、俺はそう言った。
俺がいるときくらい、車のことを忘れて気ままに飲めばいい。
最初は確かにそう思っていた。
父は酔いやすい体質だ。
今日の父は明らかによく飲んでいた。
ビール2杯、紹興酒1杯、サワー1杯。
少なく聞こえるかもしれないが、
そこは俺の父親だ、すぐ真っ赤になって良い気持ちになる。
「カラオケに連れてってやるよ!」
この人が家族とカラオケとはまた珍しいと思っていたが、
指示されるまま車を運転しているとそこは歓楽街。
「ここだ。いいぞ、ここは」
なんだこれは。
カラオケパブと書いてある。
これは家族連れで行く場所じゃなくないか。
「いやいやこういうところが歌いやすいんだ。よく歌えるぞ」
席に着くと、世間一般的にはオバハンと呼ばれても仕方ない感じの
ホステスさんが席に2人ほどやってきた。
ドリンクなんにしますぅ?ってアンタ、オバハンやないかいっ!
俺は運転手なのでトマトジュースだ。
パブで自分の母親くらいの歳のオバハンと母親に囲まれてトマトジュースか。
これは奇特だ。誰がどの角度から見ても、奇特な状況に今俺は置かれている。
ここが俺のステージだと言わんばかりに歌を唄う父親。
極度の居心地の悪さを感じて路頭に迷う俺と母親。
あぁ、やっぱり飲ませるんじゃなかった。
「おい、おまえも歌え!」
俺は「外大仕込みのレットイットビーを聴かせろ」という
わけのわからない挑戦を受けた。
唄いたくねぇよと固辞の姿勢を見せるも、両脇のオバハンが
明らかに必要以上に俺に体を近づけて
「いいじゃない、唄いなさいよおニィさん・・・」と勧めてくる。
いいか、アンタたちに勧められると唄うどころか帰りたくなるんだよ。
レットイットビー対決だが、
仮に俺が嫌々唄っても相手は酔っ払いのおっさんだ。勝利を収めた。
「大学に行かせた価値くらいはあったか」と言われたが、
オバハンに囲まれてそれっぽい発音でレットイットビーを唄うために
4年間の教育を受けたわけではない。断じてな。
母親は最初こそ「こんなところで歌うのはいやだ」と言っておきながら、
俺の知らない古い歌を2曲ほど唄ったのち、
何か見覚えのあるタイトルの曲を入力した。
あの、浜崎あゆみの次の歌姫と呼ばれる人がカバーした曲だ。
カラオケの画面に踊る、キューティーハニーの文字。
目を疑った。
俺はひょっとして数分後には脳にショックを受けすぎてこの世を去っているのではないか。
母「おねがい~! おねがい~! 近寄らなひ~で~!」
ああぁっ!
やっぱりだ!これはいかん、声が裏返っている!実に苦しそうだ!
あかん!あかんでこれは~!
母「わたしの~ ハートはぁ チュクチュクしちゃ~ふのぉ~!」
俺はこの瞬間、誰にも聞こえない小さな声で
「なんやねんこれ」とつぶやいた。誰にも聞こえない、消え入りそうな声で。
母「イヤよっ イヤよっ イヤよ見つめちゃいやぁ~」
家族の何気ない団欒のシーンだ。
たまにそんなことがあってもいいじゃないか。
これを読んでくれている皆さんはそう思うかもしれない。
母「ハニー、フラァッシッ!」
想像してみるがいい。
こんなことが「たまに」あってはならない。
俺はマジでつらい。どんな顔をすればいいのかわからない。
母の声は無理に高くしすぎて線となって消え入りそうだ。
母「今どき人気の女の子~ プクッとボインの女の子ぉ~」
ほら2番始まったぞ、頑張れ俺、こんなところで負けるな。
夜に両親とレストランに行った。
「車は俺が運転するから飲めば?」
酒が飲みたそうな父親に、俺はそう言った。
俺がいるときくらい、車のことを忘れて気ままに飲めばいい。
最初は確かにそう思っていた。
父は酔いやすい体質だ。
今日の父は明らかによく飲んでいた。
ビール2杯、紹興酒1杯、サワー1杯。
少なく聞こえるかもしれないが、
そこは俺の父親だ、すぐ真っ赤になって良い気持ちになる。
「カラオケに連れてってやるよ!」
この人が家族とカラオケとはまた珍しいと思っていたが、
指示されるまま車を運転しているとそこは歓楽街。
「ここだ。いいぞ、ここは」
なんだこれは。
カラオケパブと書いてある。
これは家族連れで行く場所じゃなくないか。
「いやいやこういうところが歌いやすいんだ。よく歌えるぞ」
席に着くと、世間一般的にはオバハンと呼ばれても仕方ない感じの
ホステスさんが席に2人ほどやってきた。
ドリンクなんにしますぅ?ってアンタ、オバハンやないかいっ!
俺は運転手なのでトマトジュースだ。
パブで自分の母親くらいの歳のオバハンと母親に囲まれてトマトジュースか。
これは奇特だ。誰がどの角度から見ても、奇特な状況に今俺は置かれている。
ここが俺のステージだと言わんばかりに歌を唄う父親。
極度の居心地の悪さを感じて路頭に迷う俺と母親。
あぁ、やっぱり飲ませるんじゃなかった。
「おい、おまえも歌え!」
俺は「外大仕込みのレットイットビーを聴かせろ」という
わけのわからない挑戦を受けた。
唄いたくねぇよと固辞の姿勢を見せるも、両脇のオバハンが
明らかに必要以上に俺に体を近づけて
「いいじゃない、唄いなさいよおニィさん・・・」と勧めてくる。
いいか、アンタたちに勧められると唄うどころか帰りたくなるんだよ。
レットイットビー対決だが、
仮に俺が嫌々唄っても相手は酔っ払いのおっさんだ。勝利を収めた。
「大学に行かせた価値くらいはあったか」と言われたが、
オバハンに囲まれてそれっぽい発音でレットイットビーを唄うために
4年間の教育を受けたわけではない。断じてな。
母親は最初こそ「こんなところで歌うのはいやだ」と言っておきながら、
俺の知らない古い歌を2曲ほど唄ったのち、
何か見覚えのあるタイトルの曲を入力した。
あの、浜崎あゆみの次の歌姫と呼ばれる人がカバーした曲だ。
カラオケの画面に踊る、キューティーハニーの文字。
目を疑った。
俺はひょっとして数分後には脳にショックを受けすぎてこの世を去っているのではないか。
母「おねがい~! おねがい~! 近寄らなひ~で~!」
ああぁっ!
やっぱりだ!これはいかん、声が裏返っている!実に苦しそうだ!
あかん!あかんでこれは~!
母「わたしの~ ハートはぁ チュクチュクしちゃ~ふのぉ~!」
俺はこの瞬間、誰にも聞こえない小さな声で
「なんやねんこれ」とつぶやいた。誰にも聞こえない、消え入りそうな声で。
母「イヤよっ イヤよっ イヤよ見つめちゃいやぁ~」
家族の何気ない団欒のシーンだ。
たまにそんなことがあってもいいじゃないか。
これを読んでくれている皆さんはそう思うかもしれない。
母「ハニー、フラァッシッ!」
想像してみるがいい。
こんなことが「たまに」あってはならない。
俺はマジでつらい。どんな顔をすればいいのかわからない。
母の声は無理に高くしすぎて線となって消え入りそうだ。
母「今どき人気の女の子~ プクッとボインの女の子ぉ~」
ほら2番始まったぞ、頑張れ俺、こんなところで負けるな。
かなりウケたぁ~~~♡
とか言いつつ・・・
うちのママ、いきなり踊りだしますが、何か?
二人でわけわからんダンス対決してますが、何か??
今家にフラットメイトのお友達が数人来てるから
声を殺して笑いました・・。
どうしよ、も一回読もっかな。
ダークサイドってほどでもないが、
できるだけ見たくないものではあった
>さち
さっちんのママは、
なんだか実年齢以上に若そうなイメージが
あるんだけど実際どうなん?笑
>うま
ありがとう、そう言ってもらえると
つらい経験をした甲斐がありますわ。。。
お世辞にも若いとはいえんょ(。・ω・。)ノ
ただ、いきなり踊りだすだけ・・・(〃▽〃)
久々に心から同情するぜ(笑)
場面場面が浮かんでくる。
めさワロタ。
ありがとう。