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社説:イラク政策 これを民主化と呼べるのか

2007年09月17日 | スクラップ
 増派した米兵3万人は減らすが、その先は分からない--。イラクに関するブッシュ米大統領の演説を要約すれば、そういうことになるだろう。兵力の「撤収」や「削減」というより、規模を元に戻すだけだ。しかも、イラクへの米軍駐留は次の政権でも続くというのである。

 01年9月11日の米同時多発テロから6年が過ぎた。あの時、世界中の同情を集めた超大国は、イラクの泥沼でもがき続け、出口戦略も描けない。大統領が楽観的な見通しを語れば語るほど、米国社会の苦しみが浮かび上がるようだ。

 米政府が議会に提出した報告書によると、イラク情勢に関する18の達成目標のうち9項目で「満足すべき進展」があったという。7月の中間報告では、「満足」は8項目だった。一方、今月初め公表された米会計検査院の調査によれば、合格点を得たのはたった3項目である。

 要するに、イラク情勢が目立って好転したとは思えない。そもそも、通知表を見るように各項目に一喜一憂しても、あまり意味がない。独立国家(イラク)に十数万もの外国軍隊(米軍)が駐留し、しかも民生安定へ目立った成果を上げられない全体状況を重く受け止めるべきである。

 米政府首脳が米軍駐留下のイラクへ行き来し、必要ならイラク要人の首もすげ替えようとするのは、いまや見慣れた風景になった。そんな現状を「民主化」と呼べるかという疑問は、イスラム諸国ならずとも抱く。親米のサウジアラビアも「不法な占領」と非難した。米国が「中東民主化」を叫ぶなら、民主化の条件となる「占領状態の解消」に努めるべきだ。

 ブッシュ大統領は、イラク駐留米軍について、米国へのテロを防ぐ防波堤と位置づけているようだ。しかし、ソ連軍のアフガニスタン侵攻(79年)がそうだったように、外国の軍事介入はイスラム社会の強い反発と急進化をもたらす。ソ連軍と戦ったゲリラはムジャヒディン(イスラム聖戦士)と呼ばれ、イラクの反米武装勢力はテロリストと呼ばれる。

 その呼び名はともかく、イラクにおける米軍の存在が急進イスラム勢力を吸い寄せ、イスラム世界全体で「テロ予備軍」を生み出している傾向は否定できない。米軍のイラク長期駐留によって、世界がむしろ不安定化している現実にも目を向ける必要がある。

 9・11後、ブッシュ政権は一握りの過激派と戦うために、「イスラム敵視」とも映る政策に傾斜したきらいがある。イスラム圏に広がる反米機運を改善するためにも、任期内の駐留米軍撤退への青写真を示すべきではないか。

 隣国イランを目の敵にするのも考えものだ。フセイン政権を倒せばライバルのイランの力が強まる。それはイラク戦争前から自明だった。しかも新生イラクでは、もともと親イランの組織が権力中枢にいる。核問題などへの対応は別として、イランを取り込む多国間の枠組みを作らなければイラクの安定は図れまい。




毎日新聞 2007年9月17日 0時35分
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