劇場彷徨人・高橋彩子の備忘録

演劇、ダンスなどパフォーミングアーツを中心にフリーランスでライター、編集者をしている高橋彩子の備忘録的ブログです。

9月文楽『天変斯止嵐后晴』ほか/秋刀魚の味 ビストロ編&京料理編

2009-09-16 00:11:13 | 観劇
9月文楽公演第三部『天変斯止嵐后晴』@国立劇場小劇場


伝統芸能の世界では、古典も大切だが、本格的な手法で挑む新作の存在も重要だ。
この作品は正確には18年前、ロンドンのジャパン・フェスティバルで上演されるために
作られたものだから(諸事情によりそこでは上演されず、翌年、日本で初演)、
完全な新作とはいえないのだが、今年の再演にあたって全体的に作り直されたもの。

●白熱する「大夫」「三味線」「人形遣い」

のっけから、舞台上にずらりと並んだ三味線たちに意表をつかれる。迫力ある演奏。
ナポリ、ミラノは筑紫、阿蘇、と中世の日本に置き換えられ、
人々が辿り着く南国は、妖精たちの衣装からすると琉球を彷彿とさせる雰囲気に。

昨今のシェイクスピア上演には珍しい具象舞台だが、
舞台美術に定評ある国立劇場らしく転換がスピーディーで、もたつくことがない。
大きな紙芝居のようで楽しい半面、やや目まぐるしい感も(笑)。

大夫は竹本千歳大夫、豊竹咲甫大夫ら、人形遣いは吉田和生、桐竹勘十郎、吉田玉女ら、
そして三味線は、音楽を手掛けたベテラン鶴澤寛治が名調子を聴かせはしたもの、
それ以外は竹澤宗助ら、いずれも若手実力派をそろえてきた。

終始、すべてがハイテンションの(大夫も叫んでいるといっていいくらい!)、
力のこもった生き生きとした舞台で、新作に賭ける熱意が伝わった。
最後、プロスペロー=阿蘇左衛門藤則役の人形と千歳大夫のみにスポットが当たり、
客席に語りかける場面では、文楽およびその新作の信を問うて満座の拍手を浴びていた。

背景がカラフルな南国ゆえ資格的に人形に焦点がしぼりにくい、
視覚的なうるささという意味では上と矛盾するが主遣いの顔は見たかった、
PAは使わないでほしかった、などなど、注文がないわけではないのだが、
何より演者たちの白熱ぶりが、観ていて清々しかった。
ぜひまたこうした試みを行って、文楽のレパートリーを充実させてほしい。

●ついでに・・・

この作品の感想だけにしようと思ったのだが、少しだけ。

第一部『鬼一法眼三略巻』。歌舞伎でも有名な「菊畑の段」の前後も上演され、
源義経と弁慶のドラマがくっきりと明らかになり、興味深かった。
そして第二部はなんといっても『伊賀越道中双六』「沼津の段」の、
吉田簑助の演技の工夫の細かさ・巧さ! 弟子でもある勘十郎との道行きは、
こんなに面白い場面だったかと、幾度も眼を見張った。
つづく切での、懇々と諭すように語る竹本住大夫もさすが。
また、『艶容女舞衣』「酒屋の段」では切の長丁場を豊竹嶋大夫が味わい深く聴かせた。
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話は変わるが、秋刀魚が美味しい。今週だけで2回ありついた。
(私の携帯は白熱灯や間接照明がことごとく黄色くなる。カレーみたいだけど、違います......)

その1:初台のビストロ編
長く通っているビストロ。ラストオーダーが早まってからはひさびさ。
 秋刀魚のオードブル エスカルゴ風味
このほかにも、
 牛舌とトリップのパートフィロ包み
 デザートにグレープフルーツのクレームブリュレとミントティー など。

その2:五反田の京風居酒屋編
秋刀魚のお刺身
打ち上げにていただく。
やっぱり秋刀魚は目黒に限る!?(初台も五反田も近いってことで ←強引)

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