詩人PIKKIのひとこと日記&詩

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虎の尾を踏んだ人間たち(2)

2020年03月04日 | 犯罪
↓の日記でリンクした内容が素晴らしいので直接アップすることにした。ほんとにすごい女性だと思う!

『佐藤優 こうしてえん罪・国策捜査はつくられる~えん罪を語ろうin八王子』ー冤罪を語るシンポジウムに参加し、344日間も拘留されたJR浦和電車区事件の被告や「国家の罠」の著者、佐藤優さんの講演を聞いて、国はもっと国民のために税金を使ってほしい、との感を強くしましたー(ひらのゆきこ2008/05/28)

5月23日(金)午後6時30分より、いちょうホール(東京・八王子)で、えん罪を語ろうin八王子実行委員会主催による「えん罪を語ろうin八王子 ~なぜ、私が犯人!?」が開催されました。

 第一部は、冤罪を訴えているJR浦和電車区事件の被告人の方々のお話と、いわゆる国策捜査を世に知らしめた「国家の罠」の著者の佐藤優さんの講演がありました。第二部は、「人権と民主主義を大切にする社会を展望する」をテーマにシンポジウムが開催されました。

JR浦和電車区事件の被告人の方々の訴え

 02年11月、浦和電車区内でJR東労組組合員7名が、元組合員に対し、組合脱退・退職を強要したとして「強要」容疑で逮捕され、344日間長期拘留された「JR浦和電車区事件」は、管轄外の警視庁公安部が捜査・家宅捜索を行ったこと、被害届が出される2ヶ月前に捜査が着手されていたこと、家宅捜索64箇所、押収品1,094点などから、組合つぶしを狙った弾圧事件とされています。

 一審で有罪判決を受け、現在二審で係争中のJR浦和電車区事件の被告人のSさんは、事件について「警視庁公安2課が事件を作って逮捕した」と述べ、「本当に悔しい」との思いを訴えました。強要罪で344日間も拘留されたことについても、「本当に悔しい」との思いを重ねて吐露しました。

 Sさんは、02年11月1日、公安2課が自宅にきて、わけがわからないまま警視庁に連れて行かれた、と述べ、「一審で有罪判決を受けた。(強要は)一切していない」と明言しました。2審での勝利に向け、「頑張る」との決意と表明しながら、冤罪事件を認めるとどんどん冤罪が生まれる、と警鐘を鳴らしました。

 Oさんも、Sさんと同じように、02年11月1日、警視庁公安2課によって逮捕されました。Oさんは、逮捕されるまで、警察官は正義の味方だと思っていたそうです。しかし、今回の事件でその考えは一変しました。

 公安2課による取調べは、1日10時間、22日間に及び、事実関係については言及せず、ただ「お前は革マルか」と聞かれ続けたそうです。「争っていると、10年、20年出られないぞ」と脅され、当時2歳の子どもがいたOさんは、20年出られないと子どもが22歳になってしまう、いやだな、と思ったが、自分はなにもやっていないので認めることはできない。気持ちが揺れる中、取調べ中に気を失い、気がついたときは東京の警察病院にいたといいます。
 
 そのときOさんの右手には手錠がかけられ、左手には点滴が打たれていたそうです。翌日強制退院させられ、すぐに取調べが開始され、自白調書にサインをしてしまいました。しかし、弁護団の先生(松川事件の弁護人)に、「真実を知っているのは君自身だ」と言われ、20年かかる腹が決まったと、Oさんは語りました。

 60回の公判が開かれ、自白長調書については徹底的に警察官と争い、自白調書の正当性がないと判決では認定されたものの、有罪であったことについて、Oさんは「悔しい」との思いを吐露しました。判決は「懲役1年、執行猶予3年」。控訴については、最初、家族は反対したそうですが、自分は(強要を)していないので、認めるわけにはいかないと話し、家族の理解を得て控訴をしたと語りました。

 Oさんはこの事件が「広がらないことがもどかしい」と述べ、なぜ、広がらないのか、それは自分自身に問題があることに気づいたそうです。「町田痴漢冤罪事件について知らなかった。袴田事件についても新聞で読んで知っている程度だった。国策捜査についても、佐藤優さんの『国家の罠』を読むまで知らなかった」と述べ、「私自身が変わらなければこの事件は広がらない」と語りました。

 Oさんは、「国策捜査は絶対に許せない。冤罪を認めたら、私たちの子や孫の代まで影響を及ぼす大きな問題。7人の問題でなく、自分の問題としてとらえないと冤罪はなくならない」と述べ、他人事と思わず、1人ひとりが自分の問題としてとらえ、事件に関心を持つことの必要性を強く訴えました。

佐藤優さん「こうしてえん罪・国策捜査はつくられる」

 佐藤さんは、「刑事被告人の佐藤です」と会場の笑いをとりながら、鈴木宗男さんがらみで(自分が)捕まったことなど、事件の経緯とその背景について話しました。

 2002年5月、当時、外務省主任分析官だった佐藤さんは、イスラエルの大学教授夫妻を日本に招待した費用と、イスラエルで開いた学会に代表団を派遣した費用を、外務省関連団体の支援委員会から違法に引き出したとして背任容疑で逮捕されました。さらに、国後島発電機供用事業の入札で三井物産に違法な便宜をはかり、支援委員会の業務を妨害したとして偽計業務妨害でも再逮捕されました。佐藤さんは一貫して無罪を主張。一審で有罪(懲役2年6ヶ月、執行猶予4年)、二審で控訴棄却、現在最高裁に上告中です。

 佐藤さんは、鈴木宗男さんの事件については、権力内部の抗争、と述べ、取調べの検事に、「運が悪かったね。これは国策捜査だ。鈴木宗男とつなげる事件」であると言われたことを明らかにしました。検事は、釣り針で狙った相手は100%有罪にする自信がある、これでやってきた、こっちは権力がついているからね、といった趣旨の発言をしたそうです。

 また、裁判をやると年数もかかるしカネもかかる、とも言われたと語りました。それは、事実で、弁護士費用など、2,000万円ちょっと使っていると語りました。しかし、鈴木宗男さんに三井物産からお金が渡ったという事実はなく、検察の贈収賄の見立ては間違っていたと述べ、それでも(自分が)起訴されたのは、検察の面子によるものであるとの認識を示しました。検察は、あなたを起訴しないと申し訳ないと言い、否認調書をつくって起訴したそうです。

 JR浦和電車区事件について、佐藤さんは「タチの悪い、特別な事件」との認識を示しました。この事件のことを知ったとき、直感的におかしい、と思ったそうです。「強要罪という非常に軽い罪で、どうして344日も監獄に勾留になるんだ。メチャクチャな話だ」と思ったと語りました。

 Oさんの話を聞き、取調べで気を失い、気がついたらアクリルの窓、右手に手錠、左手に点滴・・・。その話を聞いて佐藤さんは腸から血が逆流するようだったと語りました。こういうことをやるのは、ソ連の末期と同じであり、非常に弱い国家であると思ったそうです。佐藤さんはこの事件について勉強し、いろんなものが見えてきたそうです。背景にJR東労組をつぶしたいというシナリオがあり、国策捜査であるとの見方を示しました。

 佐藤さんは、また、「参議院のドン」と言われた村上正邦さんについても言及しました。村上さんは、(お金をもらって)請託を受け、国会で「ものつくり大学」について質問をしたとして、逮捕されました。先般、最高裁で刑が確定し、収監されました。しかし、村上さんにお金を渡したとされるKSDの古関氏は、二審の証人尋問で、嘘の供述をしたと法廷で証言したそうです。古関氏はKSD事件で取調べを受けており、高齢であったことなどから、検察に脅され、検察のつくった嘘の供述書にサインをしたことを明らかにしたそうです。

 村上さんの取調官は、「おい、村上。いままでの村上じゃねえ、俺の前で嘘は通用しないからな」とか、「地獄の閻魔さんに代わって俺が舌を抜いてやる」などといった、かりにも国会議員であった人に対し、信じがたいような口調で取り調べを行ったといいます。村上さんは死を考えたこともあったそうですが、このようなことを許してはいけない、この経験を話さないといけない、と思い、事実を伝える決意をしたそうです。村上さんは右翼と目されていたそうですが、右であれ、左であれ、権力を持っている官僚が「こいつだ」といえばやられる、と佐藤さんは語りました。

 なぜJR東労組が狙われたのか。7人は鉄道マンで、電車の運転が好きな善良な市民でした。佐藤さんは、官僚が考えるきれいな社会について言及しながら、自らも官僚をしていたので、官僚の考えが皮膚感覚でわかる、と言います。佐藤さんは「JR総連は革マルではない」と述べ、「JR総連、東労組は革マルというのは眉唾もの。虚心坦懐に聞いていれば人権基準としてもおかしい。おかしいことに気づかないのはなぜか。そのことに思考を進める必要がある」と指摘しました。

 また、西岡研介氏には賛同しない、と述べ、その取材手法に疑問を呈しました。西岡氏は、「週刊現代」に、JR総連・東労組と革マル派を関連付けるような内容の記事を連載しており、JR総連・東労組に訴えられています。佐藤さんのお話によると、鈴木宗男さんとの関連で週刊誌などに書かれるようになったのは、週刊文春の「鈴木宗男の運転手をする男」という記事が最初で、その記事を書いたのがこの西岡氏であったそうです。そのことは本人から聞いたそうですが、情報源が公安であることも教えてくれたといいます。

 佐藤さんは、「私は運転免許を持っていません。免許を持っていない人間がどうやって車を運転するんですか?」と苦笑しながら、本人に取材すればすぐにそれが嘘であることがわかるのになぜしなかったのか、それは、否定されると記事を書くことができないからだと述べ、その取材手法には大きな問題があることを指摘しました。佐藤さんによると、週刊新潮の記事はもっと巧みで、佐藤さんについて誰かがなにかと言っているといった論調で、抗弁が難しい書き方をしているそうです。

 佐藤さんは、このようなジャーナリズムのあり方は問題であるとし、放置していてはよくない、と警鐘を鳴らしながら、「西岡氏が私や鈴木宗男さんに対してやったことはわかる。国家権力を持っている人をスキャンダルで暴くのはかまわないが、権力をなにも持っていない人をスキャンダルで暴くのは問題がある」と述べ、国民のスキャンダルを持っている官僚(警察、検察、税務署)が特定の人をやっつけるために情報を流し、マスコミが官僚と一緒になって民間の人をやっつけるようなやり方は大きな問題がある、と強く訴えました。

 JR東労組は権力がないとはいえないが、国家権力に比べると圧倒的に弱い、とした上で、この事件で7人のうち6人が解雇されたことに言及しながら、官僚は、国家に頭を下げて許してくださいと言わなければ安心できない、と述べ、ODAなどで日本に対して擦り寄ってくる国は可愛いが、批判的な発言をする国は可愛くないと(官僚が)思っているように、官僚の言うとおりになる国(人間)が可愛いという本質を持っていると語りました。

 佐藤さんの事件についても、ちゃんと事務次官の決裁を受けており、通常の手続きを踏んでいることは、佐藤さんの当時の上司の東郷氏も法廷で証言しています。外務省は、決裁書はなくなったと言っているそうですが、「(事務次官の決済印がある書類が)なくなっていることはありえない」と佐藤さんは明言しました。

 今回の事件について、佐藤さんは、JR総連やJR東労組が「俺たちは革マルじゃない」と言っても警察や検察にそれを理解させることは困難であるとの認識を示しながら、司法も類似の行動をとることから、「この裁判は非常に難しい」との見方を示しました。その上で、「我々の法廷はあの裁判所だけではない」とも述べ、次のように訴えました。

 「344(みよし)会(7人の被告人の会)は嘘を言っていない、私も嘘を言っていない。344日間、独房に閉じ込め、職を奪った。動物でも怖い相手と一緒におしっこはしない。人間も一緒。(元組合員は)トイレに入ったら怖い人がいたと言っているが、怖い人がいたらトイレに入って一緒に並んでおしっこをする人間はない。司法も国家官僚。税金で飯を食っている。その人たちが見ているものが市民と違う。そういう人たちは、こういう集会が大嫌い。封じ込めたいと思っている」

 また、344会のこの事件については、検察が求刑した量刑の半分の判決であることから、有罪でも実質は勝っている、との見解を示しました。

 また、光市事件の安田好弘弁護士について、安田弁護士が、少年が書いた手紙(テレビなどで公開された手紙。反省がないとされた)を事前に周囲は読んでいるはずなのに、なぜ指導をしなかったのか、そういう社会があのような事件を起こした少年を生み出したと語っていると述べ、安田さんのような人を国家は嫌い、早く弁護士バッジを外して追い出したいと思っている、との見方を示しました。

 佐藤さんは、もし鈴木宗男さんと自分が事件に巻き込まれなければ北方領土の2島は返還されていた可能性があることや、ほかの2島についても具体的な交渉が進んでいた可能性があること、それが実現しなかったのは、北方領土が返還された場合のお金の問題や、日本のエネルギー資源は全部アメリカの影響下にあり、ロシアとの関係が良好になることを好まない関係者(アメリカベッタリの人たち)らの意向などがあることに言及しました。佐藤さんは、「鈴木さんや私はなにかの虎の尾を踏んだ」と述べ、安田さんや村山さんも「なにかの虎の尾を踏んだ」と語りました。

 村山さんは、資源のない日本で唯一の資源は人間だとの考えから、職人を育てるためにものつくり大学をつくることを自らの公約に掲げていました。中小企業の発展にも力を注ぎ、極端な金持ちはよくない、子どもは同じスタート地点に立つチャンスを与えなければならない、ハンディキャップを持っている人も生きていけるような社会を築くことが大事だと考え、実践していた人だと述べました。村山さん自身、ダウン症の娘さんの介護をずっとやってきたそうです。

 村山さんは右翼の政治家と目されていたが、福祉にも力を入れてきた政治家でした。また、赤旗の号外を配っていた人が住居侵入罪で捕まって、ピザのチラシを配った人はなぜ捕まらないのか。そこには国家の論理があるからだと、佐藤さんは指摘しました。ピザのチラシはいいが、政党のビラは国家にとって汚い。市民と交わらず、国家を清浄化して、強化する。それが官僚の目指す社会であるとの見方を示しました。

 佐藤さんは、ニュースはそのまま鵜呑みにせず、自分の頭で考えてみることの必要性を強く訴えました。そして、そこから見えてくるものをしっかり見据えることの重要性を説きました。「裁判にはカネもかかるし、時間もかかる。それでもやっているのは、筋を通すことが大事だと考えるから。こうやって話をすることで、いままで知らなかった人たちを知り、仲間が広がった」と述べ、JR総連に対する見方についても違ってきていると語りました。

 事件の背景に動労つぶしや国労つぶしがあり、メディアの対応も変わりつつあることに言及しました。「344会は被害者であり、国家が加害者。逆転するのが国家の謀略。外交に対して使うのはいいが、自国民に対して使ってはいけない。たとえ(自分が)つぶされても化けて出て、344会の人たちを助けてあげたい」と述べ、JR浦和電車区事件の被告人のみなさんに力強いエールを送りました。


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