詩人PIKKIのひとこと日記&詩

すっかりブログを放任中だった。
詩と辛らつ日記を・・

19歳の地図 (推敲形)

2009年01月19日 | 日記
19歳の春
誰ひとり見送る人もいない夜行列車で
故郷を後にして以来
ぼくだけの地図を見失ってしまった

その頃ぶらぶらしてた
大都会の片隅の映画館で観たのが
中上健次(http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0755.html)原作の「19歳の地図」
それが ぼくの
長い放浪の始まりになってしまった

ほんとのことを言うと
旅の途上でずっと
君のことを思い出していたんだ
新聞配達をやりながら
大学へ通っていた君を
生徒会長をやって
高校中の誰からも愛されていた君
それなのに
真っ先にあの世へと逝ってしまった君を

人っこ一人通らないゴミだらけの裏道を
とぼとぼ歩きながら
「俺の故郷はもう何処にもないんだなー」とふっとため息
廃線のために 
もうその頃はすでに
人間に対して恨み骨髄の熊ぐらいしか
棲まなくなってしまった故郷

故郷のぼくだけの地図の上には
もうあらかた忘れてしまったけど
アイヌ語の地名が
赤いローマ字でびっしり

「鹿を追い落とす断崖」の上に建っていた白い給水塔
淋しくなるといっつも
その数十メートル上に登って 
飽きるまでずっと
ひんやりしたそのタンクの中に身を乗りだして
渦巻く水色を見つめていたっけ

秋には
煙茸をわざわざ踏みつけて歩いた
「影の無い沼」へのほの暗い森の小道

転校してから2年間くらい
ほとんど誰ひとり友達のできなかった頃
休日になるといっつも
釣りに誘ってくれた
ちょっと智恵遅れのM君と
釣り竿を担いで歩いた森の小道

冬の牛乳配達の途中には
降り積もった白樺並木の坂道で
はしゃぎながら
尻滑りした牧場へのでこぼこ道

春には
海へと下ってゆく桜満開の下の
初登山行きの朝の光の中で
初めて憧れのきみと
話すことができたっけ
「何処へ行くの」
「うん、これから山に登るんだ」

道端でひっそりと揺れてたのは
まるできみそっくりの
一輪の白百合の花

注:この推敲形をアップして、昨日の詩の削除ボタンを押す寸前にコメントがあるのを発見したけど、時すでに遅しだった。コメントを書いてくださったのに申し訳ありませんでした。できたらまた、以前の詩とこの推敲形との比較などを書いて欲しいなと思う。

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