詩人PIKKIのひとこと日記&詩

すっかりブログを放任中だった。
詩と辛らつ日記を・・

帰ろうか

2009年07月30日 | 日記
帰ろうか
ポケットの中で握りしめてきた
このナイフだけを片手に
廃線の線路の果ての
あの町へ

きみから贈られた
赤い小さなナイフだけ
スイス国旗が刻まれた
しんやりとしたナイフだけを
握りしめて

このナイフで
なんどビールの栓を抜き
なんど
山小屋のストーブの前で
きみを想いながら
缶詰を開けたことだろ

きみを見舞った
夕暮れの病室の片隅で
真っ赤な林檎を片手に
「最後まで切らずに皮をむけるんだよ」と・・

きみの死から 
もう十年も経つというのに
まるでいよいよ赤く
色褪せることのないナイフ

きらり きらきら
水の中のナイフみたいな
きみの思いで一杯のナイフ

そのナイフだけを片手に
帰ろうかふるさとへ
ふるさとにはもう
誰も待つ人もいないのに・・

◆松山千春の歌を聴きながらー
http://www.youtube.com/watch?v=3braRwbrKLM&feature=related

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