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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

奨学金制度の現状と課題(下)

2016年11月27日 | 格差社会
 ◆ 貧困者に迫る自衛隊の勧誘 (週刊新社会)
菊地憲之(新社会党兵庫県本部書記長)


 ◆ 返済滞納の背景は何か
 Ⅰ 労働者の大幅な年収減
 1995年の日経連『新時代の日本的経営』の終身雇用制度から有期雇用制度への転換による非正規雇用の拡大(全体約4割)に伴い、労働者の年収も97年をピークに減少が続いている。
 民間平均賃金は、1997年は467・3万円→2013年413・6万円ほで減少額53・7万円。【図1】参照。
 Ⅱ 国立大学・私立大学の入学料・授業料(初年度納付金)の高騰。

 Ⅲ 高卒・大卒の就職難の拡大
 新規高卒者に対する求人数は1992年3月末の167万6000件が求人数のピークで、2003年3月末に19万8000件で最大の落ち込み(87%ダウン)になった。
 2010年3月末は19万8000件で再び最低水準に。大卒の就職率はパブル崩壊後の失業率のアップと若年就業の困難が続き、失業・無職の増加、非正規雇用の増加、不安定雇用で生活できない大卒者の現実がある。
 80年~04年生まれをミレニアム世代と呼び、韓国では恋愛、結婚、出産、マイホーム、人間関係、夢、就職の7つを諦める。非自立(親の脛かじり/パラサイトシングル)、人生の選択肢は狭い。
 ◆ 若者の貧困と軍隊の求人

 Ⅰ アメリカの経済的徴兵制
 ①徴兵制をやめる欧州の動向現在、世界で60力国が徴兵制を採用している。しかし、欧州では冷戦終結後にフランス、ドイツなど8力国が徴兵制から志願制に切り替えた。
 高度な兵器や情報システムに習熟した機動的な軍隊には、徴兵制ではなくプロが必要のためだ。
 ②米軍兵士の志願理由上位は「奨学金」「医療保険」
 1973年にプロの軍隊を必要としたベトナム戦争の反省から、選抜徴兵制を完全志願制に切り替えた。
 03年に連邦議会に提出された白人も黒人も等しく徴兵制を復活する法案は否決された。
 Ⅱ 不足する自衛隊員への対応策
 ①少子化で隊員確保に危機感急速に進む少子化により、自衛官募集は厳しくなるというのが10年前がらの防衛省の認識だ。
 高卒18歳の人口は1991年は106万人、12年は62・4万人に減少している。
 ②自衛隊員の「街頭募集」から「組織募集」への転換
 1960年代の強引な街頭での勧誘に社会的な批判と隊員の質の低下があり、組織募集として自治体、学校、企業などとの連携強化策に転換した。
 「任期制」隊員の志願者2013年度は3万3538人、2014年度は3万1361人と減つている。
 Ⅲ 組織募集の取組み
 ①学校への対応
 07年から「ハイスクール・リクルーター」制度を開始した。若い自衛隊員が母校で自衛隊の説明を行う制度で、1万3500人の参加で入隊1858人という成果を生んでいる。
 自衛隊説明会の実施についての13年11月の防衛省会議資料では、安全保障教育の必修化検討、退職自衛官の学校への再就職を検討している。
 ②自治体への対応
 自衛隊員募集に自治体の過剰なサービスが問題になっている。
 防働省が住民基本台帳の週齢者(高卒)の氏名、生年月日、性別、任所の情報を全国の1742市区町村のうち、約71%に当たる1229市区町村が積極的に提供している。
 ③企業への対応
 防衛省が経済同友会に13年7月に「新入社員の自衛隊インターシップ制度」を提案、企業の新入社員が自衛隊に派遣され、「実習生」として2年間働く。その後、自衛隊員の再就職を企業が支援する(受け入れる)。
 Ⅳ 日本でも貧困に忍び寄る経済的徴兵制
 ①志願理由は国防意識・愛国心より経済的利点による経済状態(景気)と自衝隊への志願数は反比例の関係にある。
 ②自衛官の出身分布と貧冨との相関関係は、高校新卒「2士」(任期制)の入隊率と出身地分布を県単位で見る貧困率、1人当たり県民所得との関係は見逃せない。
 ③大卒でも安定した正規雇用につけない現実、大学より自衛隊がキャリアァップにつながることを、自衛隊も経済的メリットとしてアピールして勧誘している。
『週刊新社会』(2016年11月22日)

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