◆ 広がる貧困と経済的徴兵制 (週刊新社会)
◆ 貧困と戦争の結びつき
いくつかの事象から、貧困と戦争の深い結びつきについて考えてみた。
Ⅰ、「31歳フリーター。希望は、戦争」という赤木智弘の主張
朝日新聞が発行していた『論座』2007年1月号に掲載されたものである。その主張の論点は、戦争により「持てる者」(冨裕層)と「持てない者」(貧困層)が平等になれるというもの。
分厚い閉塞感が強く漂う今の社会の中で、何もかもガラガラポンにできるのが戦争だと考えることは、皮相的すぎる。貧困層の大きな不満を好戦派が組織するのか、反戦派が組織するのかが問われている。
戦争は誰が起こし、誰が犠牲になるのかという歴史の教訓はどうなのかという問題意識を持った。
Ⅱ、憲法を生かす会・垂水の長野松代フィールドワーク(15年10月24~25日)
①、満蒙開拓平和祈念館(長野県下伊那郡阿智村)
都道府県別に満蒙に送り出された開拓団と義勇軍の人数が示されていた。長野県が第2位の山形県を大きく離してダントツ、開拓団3万人余、義勇軍6千5百人余である。
これらの人々は、貧しい農民の暮らしに喘ぎ、豊かな満蒙で地主になれる夢を抱いた。
しかし、現実は侵略戦争に加担させられ、関東軍の撤退により棄民され、多くの人々が無残な死を遂げた。
②、松代大本営の地下壕跡地と高校生パンフレット
天皇、軍隊中枢部放送機関を守るための施設であった松代大本営の問題を社会に問うたのは、地元の高校生たちの調査活動であったといわれている。敗戦により未完の地下壕となったが、松本大本営とは何を意味していたのか。高校生らが作成したパンフには、こう記してある。
「松代大本営とは、弱いものから犠牲となるという戦争の本質を示している場所なのでは」と。
フランスの哲学者ジャンポール・サルトルは「金持ちが戦争を起こし、貧乏人が死ぬ」という格言を残している。
Ⅲ、文科省検討会で経済同友会の前原金一専務理蓼の発言(14年5月26日)
奨学金返還困難者対策を議論した「学生への経済的支援の在り方に関する検討会」で前原氏は、無職が原因で奨学金返済を滞納している若者について「現業を持っている警祭庁とか、消防庁とか、防衛庁に頼んで、1年とか2年のインターンシップをやってもらえれば、就職どいうのはかなり良くなる。防衛省は考えてもいいと言っている」と切り出した。
貧困層を自衛隊に追い込んでいく提案である。
集団的自衛権の行使容認を閣議決定した7月1日の約ーカ月前の発言である。戦争法の準備は抜かりなく行われていった。
◆ 奨学金問題の背景と現状
Ⅰ 奨学金制度の現状と変遷
日本学生支援機構奨学金貸与人員の椎移(1998年→13年)【図1】
Ⅱ、返済の困難
①第1種奨学金 返済額が毎月1万5000円以内に設定
自宅から国立大学に通学する大学生(奨学金毎月4万5000円)は卒業後14年かけて毎月1万2857円を返還、37歳で完済となる。
②第2種奨学金 月10万円の奨学金を貸与される場合
貸与総額480万円 貸与利率上限3.0% 返還総額は645万9510円 月賦返還額2万6914円 返還年数20年(43歳で完済)
※延滞金年利10%→5%
延滞金発生後の返済では、お金はまず延滞金の支払いに充当され、次いで利息、そして最後に元本に充当される。元本の10%(5%)以上のお金が出せなければ半永久的に延滞金を払うことになる。
2010年度の利息収入は232億円、延滞金収入は37億円といわれている。民間銀行の貧困ビジネスとしての奨学金。
③奨学釜受給者
親の年収減による仕送り減額と大学授業料の高騰→大学生のプラックバイトと奨学金の必要性が増大。
奨単金受給者の割合1998年は23・9%→2010年は学部昼間部50・7%
2012年は学部昼間52・5%、大学院修士課程59・5%、大学院博士課程65・5%
④返済困難者
2010年奨学金滞納者33万人
3カ月以上の滞納額2660億円
2012年返還滞納者の個人情報機関への登録(ブラックリスト化)1万人超裁判所からの支払い督促」申立て2004年200件11年1万件と50倍に。
大きな借金を抱えた返還滞納者は結婚をあきらめる現実もある。
『週刊新社会』(2016年11月15日)
菊地憲之(新社会党兵庫県本部書記長)
◆ 貧困と戦争の結びつき
いくつかの事象から、貧困と戦争の深い結びつきについて考えてみた。
Ⅰ、「31歳フリーター。希望は、戦争」という赤木智弘の主張
朝日新聞が発行していた『論座』2007年1月号に掲載されたものである。その主張の論点は、戦争により「持てる者」(冨裕層)と「持てない者」(貧困層)が平等になれるというもの。
分厚い閉塞感が強く漂う今の社会の中で、何もかもガラガラポンにできるのが戦争だと考えることは、皮相的すぎる。貧困層の大きな不満を好戦派が組織するのか、反戦派が組織するのかが問われている。
戦争は誰が起こし、誰が犠牲になるのかという歴史の教訓はどうなのかという問題意識を持った。
Ⅱ、憲法を生かす会・垂水の長野松代フィールドワーク(15年10月24~25日)
①、満蒙開拓平和祈念館(長野県下伊那郡阿智村)
都道府県別に満蒙に送り出された開拓団と義勇軍の人数が示されていた。長野県が第2位の山形県を大きく離してダントツ、開拓団3万人余、義勇軍6千5百人余である。
これらの人々は、貧しい農民の暮らしに喘ぎ、豊かな満蒙で地主になれる夢を抱いた。
しかし、現実は侵略戦争に加担させられ、関東軍の撤退により棄民され、多くの人々が無残な死を遂げた。
②、松代大本営の地下壕跡地と高校生パンフレット
天皇、軍隊中枢部放送機関を守るための施設であった松代大本営の問題を社会に問うたのは、地元の高校生たちの調査活動であったといわれている。敗戦により未完の地下壕となったが、松本大本営とは何を意味していたのか。高校生らが作成したパンフには、こう記してある。
「松代大本営とは、弱いものから犠牲となるという戦争の本質を示している場所なのでは」と。
フランスの哲学者ジャンポール・サルトルは「金持ちが戦争を起こし、貧乏人が死ぬ」という格言を残している。
Ⅲ、文科省検討会で経済同友会の前原金一専務理蓼の発言(14年5月26日)
奨学金返還困難者対策を議論した「学生への経済的支援の在り方に関する検討会」で前原氏は、無職が原因で奨学金返済を滞納している若者について「現業を持っている警祭庁とか、消防庁とか、防衛庁に頼んで、1年とか2年のインターンシップをやってもらえれば、就職どいうのはかなり良くなる。防衛省は考えてもいいと言っている」と切り出した。
貧困層を自衛隊に追い込んでいく提案である。
集団的自衛権の行使容認を閣議決定した7月1日の約ーカ月前の発言である。戦争法の準備は抜かりなく行われていった。
◆ 奨学金問題の背景と現状
Ⅰ 奨学金制度の現状と変遷
日本学生支援機構奨学金貸与人員の椎移(1998年→13年)【図1】
Ⅱ、返済の困難
①第1種奨学金 返済額が毎月1万5000円以内に設定
自宅から国立大学に通学する大学生(奨学金毎月4万5000円)は卒業後14年かけて毎月1万2857円を返還、37歳で完済となる。
②第2種奨学金 月10万円の奨学金を貸与される場合
貸与総額480万円 貸与利率上限3.0% 返還総額は645万9510円 月賦返還額2万6914円 返還年数20年(43歳で完済)
※延滞金年利10%→5%
延滞金発生後の返済では、お金はまず延滞金の支払いに充当され、次いで利息、そして最後に元本に充当される。元本の10%(5%)以上のお金が出せなければ半永久的に延滞金を払うことになる。
2010年度の利息収入は232億円、延滞金収入は37億円といわれている。民間銀行の貧困ビジネスとしての奨学金。
③奨学釜受給者
親の年収減による仕送り減額と大学授業料の高騰→大学生のプラックバイトと奨学金の必要性が増大。
奨単金受給者の割合1998年は23・9%→2010年は学部昼間部50・7%
2012年は学部昼間52・5%、大学院修士課程59・5%、大学院博士課程65・5%
④返済困難者
2010年奨学金滞納者33万人
3カ月以上の滞納額2660億円
2012年返還滞納者の個人情報機関への登録(ブラックリスト化)1万人超裁判所からの支払い督促」申立て2004年200件11年1万件と50倍に。
大きな借金を抱えた返還滞納者は結婚をあきらめる現実もある。
『週刊新社会』(2016年11月15日)
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