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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

☆ 関東大震災100周年にあたっての東京大学教職員声明

2024年09月04日 | 平和憲法

 本声明の賛同者(呼びかけ人を含む)は、2024年2月末日締切で、以下の計159名となりました。各賛同者の所属は、同日時点のものです。

2023年12月31日

☆ 関東大震災100周年にあたっての東京大学教職員声明

 2023年は関東大震災から100年の年でした。犠牲者追悼の行事や、そこで得らえた教訓をもとに災害に備えていくための記念の活動がなされました。東京大学でも、学術的見地から議論を深めるべく様々な分野の研究者を集めたシンポジウム等が開催されました。

 関東大震災にかかわる人命被害は、単純に自然現象としての災害やそれに付随する火災だけによるものではありません。混乱の中で発生した「朝鮮人が暴動を起こしている」といったデマが原因で、朝鮮人・中国人や朝鮮人であると疑われた日本人などへの殺害事件が多数発生しています。日本の共産主義者・社会主義者・無政府主義者も殺されました。

 しかし、日本社会の一部では、朝鮮人・中国人虐殺の史実そのものの否定の動きがあります。さらには、朝鮮人暴動がデマであったことは明白であるにもかかわらず、殺害はそれを防いだものだとして正当化する言動すら見られます。しかも、一部の行政当局者は、関東大震災時の朝鮮人・中国人虐殺の史実についての見解を明らかにしないという態度をとっています。このことは、朝鮮人・中国人虐殺やその背景について語りにくくなる状態を作り出し、それについての確定した学説はないとの誤解を生んでいます

 こうした事態を私たちは、看過することができません。1923年の朝鮮人・中国人虐殺の史実の否定、歪曲や、殺害行為を正当化する主張が流布し、それが社会のなかで放置され、影響力を持つことは、マイノリティとして存在せざるを得ない者に、不安を与えます。自分たちの祖先が、迫害され、虐殺されたり、あるいはその危険にさらされてきたりしてきた、在日コリアンや韓国人・中国人にとっては、それは、恐怖であり、耐え難いことであります。

 東京大学では、そうした人びとを含む、多様な国籍、民族的バックグラウンドを持つ人びとがともに、研究、教育の活動を続けています。今後も、さまざまな国から、学生や同僚を迎え入れていくことが予想されますし、そのことを目標として掲げています。したがって、これまで以上に、国籍や民族、用いる言語、宗教などにおいてマイノリティとなっている人びとの置かれている状況について留意しなければなりません。そして、そのためにも、100年前の悲劇についても想起する必要があります。

 本年7月23日と30日に本学で開催されたシンポジウム「関東大震災と東京大学」では、朝鮮人虐殺に関する研究の積み重ねによって、報道や行政機関などが「外国人をめぐる流言蜚語が起こらない、あるいはそれによる暴行事件などが起こらないように、常に意識するようになったのは、歴史の教訓が生かされた最大の成果ではないか」との発言がありました。ついで、8月26日には、総合文化研究科韓国学研究センター長による、朝鮮人虐殺事件に触れて現在もなお差別や偏見が存在するとの声明が公表されました。そして、9月22日の秋季学位記授与式・卒業式の式辞で、藤井輝夫総長は、「日本に多く来住していた朝鮮人に対する暴行・虐殺という悲劇」の原因となった「日常のなかに潜む意識的・無意識的な偏見」などの問題の存在を指摘したうえで、その克服が「現代のわれわれの課題」であると訴えました。

 関東大震災から100年の年を終えるにあたり、私たちは、このことを評価するとともに、改めて、自己点検を図り、東京大学を、そのすべての構成員が偏見や差別の不安におびえることなしに、研究、教育を続けられる共同体とするべく、改善の努力を続けていきます。そして、関東大震災時の朝鮮人・中国人虐殺の史実を記憶にとどめ、その犠牲者を追悼するとともに、植民地支配や侵略戦争を批判的に問いなおしながら、民族的偏見の克服をめざしていきます。そのうえで、すべての人びとが、対等な関係を築き互いの価値を認められる社会を築くために、研究、教育を通じて貢献していく所存です。


※ 呼びかけ人(所属部局別,50音順):

隠岐 さや香(教育学研究科)
勝野 正章(同上)
本田 由紀(同上)
加藤 陽子(人文社会系研究科)
鈴木 晃仁(同上)
鈴木 淳(同上)
鈴木 泉(同上)
高谷 幸(同上)
阿古 智子(総合文化研究科)
市野川 容孝(同上)
國分 功一郎(同上)
齋藤 幸平(同上)
瀬地山 角(同上)
谷垣 真理子(同上)
外村 大(同上)
佐藤 健二(文書館)
石川 健治(法学政治学研究科)

※ 賛同人(順不同):

額賀 美紗子(教育学研究科)
仁平 典宏(教育学研究科)
村上 克尚(総合文化研究科)
関谷 雄一(総合文化研究科)
廣野 喜幸(総合文化研究科)
小松 美彦(総合文化研究科)
河合 祥一郎(総合文化研究科)
武田 竜一(教育学部附属中等教育学校)
小野 将(史料編纂所)
板倉 博(生産技術研究所)
星埜 守之(総合文化研究科)
中西 徹(総合文化研究科)
速水 淑子(総合文化研究科)
土屋 和代(総合文化研究科)
平松 英人(総合文化研究科)
渡辺 美季(総合文化研究科)
Hermann Gottschewski(総合文化研究科)
塩川 伸明(名誉教授)
朝火 里津子(理学系研究科)
岡田 泰平(総合文化研究科)
梶谷 真司(総合文化研究科)
黒田 舞(工学系研究科)
内海 正文(工学系研究科)
東 史(数理科学研究科)
高橋 哲哉(名誉教授)
保谷 徹(名誉教授)
西田 友広(史料編纂所)
徳盛 誠(総合文化研究科)
井口 高志(人文社会系研究科)
祐成 保志(人文社会系研究科)
冨善 一敏(経済学部)
小野塚 知二(エグゼクティブ・マネジメント・プログラム)
瀧川 裕貴(人文社会系研究科)
本田 洋(人文社会系研究科)
小島 庸平(経済学研究科)
大沢 真理(名誉教授)
福永 玄弥(教養学部教養教育高度化機構)
アルヴィ なほ子(総合文化研究科)
鶴見 太郎(総合文化研究科)
川島 真(総合文化研究科)
佐々木 悠介(総合文化研究科)
石田 淳(総合文化研究科)
寺田 寅彦(総合文化研究科)
井上 博之(総合文化研究科)
中野 耕太郎(総合文化研究科)
鈴木 啓之(総合文化研究科)
石原 俊時(経済学研究科)
阪本 拓人(総合文化研究科)
熊谷 晋一郎(先端科学技術研究センター)
上野 千鶴子(名誉教授)
石井 規衛(名誉教授)
中西 啓太(文書館)
逆井 聡人(総合文化研究科)
佐藤 学(名誉教授)
廣渡 清吾(名誉教授)
石田 勇治(名誉教授)
和田 春樹(名誉教授)
三ツ井 崇(総合文化研究科)
金 志善(総合文化研究科)
河崎 啓剛(総合文化研究科)
木宮 正史(総合文化研究科)
川本 隆史(名誉教授)
島薗 進(名誉教授)
小森 陽一(名誉教授)
影浦 峡(教育学研究科)
大塚 類(教育学研究科)
村松 真理子(総合文化研究科)
矢口 祐人(総合文化研究科)
林 香里(大学院情報学環)
韓 燕麗(総合文化研究科)
小玉 重夫(教育学研究科)
中澤 公孝(総合文化研究科)
小国 喜弘(教育学研究科)
浅井 幸子(教育学研究科)
金 美恵(総合文化研究科)
高橋 英海(総合文化研究科)
保立 道久(名誉教授)
Diana Kartika(総合文化研究科)
中村 元哉(総合文化研究科)
田中 創(総合文化研究科)
二井 彬緒(総合文化研究科)
桜井 英治(総合文化研究科)
安野 裕美(人文社会系研究科)
渡邊 日日(総合文化研究科)
具 裕珍(総合文化研究科)
堀江 宗正(人文社会系研究科)
針貝 真理子(総合文化研究科)
清水 晶子(総合文化研究科)
竹峰 義和(総合文化研究科)
高橋 宗五(名誉教授)
田中 純(総合文化研究科)
星野 太(総合文化研究科)
馬路 智仁(総合文化研究科)
伊達 聖伸(総合文化研究科)
三枝 暁子(人文社会系研究科)
カペル・マチュー(総合文化研究科)
李 太喜(総合文化研究科)
牧原 成征(人文社会系研究科)
浜田 華練(総合文化研究科)
横山 伊徳(名誉教授)
油井 大三郎(名誉教授)
高橋 典幸(人文社会系研究科)
定松 淳(総合文化研究科)
小森田 秋夫(名誉教授)
米本 昌平(教養学部)
原田 純孝(名誉教授)
上 英明(総合文化研究科)
納富 信留(人文社会系研究科)
古荘 真敬(人文社会系研究科)
鳥山 祐介(総合文化研究科)
野村 剛史(名誉教授)
髙橋 史子(総合文化研究科)
伊藤 徳也(総合文化研究科)
品田 悦一(総合文化研究科)
黒嶋 敏(史料編纂所)
吉澤 誠一郎(人文社会系研究科)
武田 洋幸(名誉教授)
佐川 英治(人文社会系研究科)
古井 龍介(東洋文化研究所)
崎濱 紗奈(東洋文化研究所)
小島 浩之(経済学研究科)
秋葉 淳(東洋文化研究所)
森本 一夫(東洋文化研究所)
鬼頭 秀一(名誉教授)
福永 真弓(新領域創成科学研究科)
清水 光明(総合文化研究科)
森 政稔(総合文化研究科)
大久保 由理(経済学研究科)
秦 邦生(総合文化研究科)
谷本 隆之(史料編纂所)
小宮 木代良(史料編纂所)
宇野 鈴音(史料編纂所)
六反田 豊(人文社会系研究科)
石田 英敬(名誉教授)
糟谷 幸裕(史料編纂所)
杉本 史子(史料編纂所)
柴垣 和夫(名誉教授)
鶴田 啓(史料編纂所)
林 遼(史料編纂所)
佐橋 亮(東洋文化研究所)
古木 景子(史料編纂所)
加治屋 健司(総合文化研究科)

【2024年2月29日現在】

https://sites.google.com/g.ecc.u-tokyo.ac.jp/10020231231/


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