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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

山場にさしかかった日本航空不当解雇撤回闘争

2011年09月18日 | 格差社会
 ◇ 山場にさしかかった日本航空不当解雇撤回闘争
 ~裁判と世論喚起の運動を更に強めよう
津恵正三・日本航空の不当解雇撤回をめざす国民支援共闘会議事務局長

 日本航空の不当解雇撤回裁判は、証人尋問が始まりいよいよ山場を迎えた。
 原告申請の証人として、乗員裁判では醍醐聰氏(東大名誉教授、会計学)、清田均さん(原告)、小川洋平さん(日航乗組副委員長)客乗裁判では、稲盛和夫氏(日本航空会長)内田妙子さん(原告・CCU委員長)、島崎浩子さん(原告)が証人として法廷に立つ。
 一方被告については申請通りに採用され、片山英二氏(元管財人、弁護士)、菊山英樹氏(前経営企画副本部長執行役員)、羽生貴志氏(前労務部長)の三名が双方の裁判で、小田卓也氏(前運航本部運航企画部門計画グループ長)が乗員裁判に、小枝直仁氏(客室本部客室企画部運営グループ長)が客乗裁判で証人として立つことが確定した。
 ◇ 勝ち取った稲盛会長の証人採用
 この間の進行協議において被告は、稲盛会長の証人採用に頑強に抵抗した。
 原告は、そもそも整理解雇の必要性が問われる裁判で、「(整理解雇した)160人を残すことが経営上不可能かと言えば、そうでないのは、もう皆さんもおわかりになると思います。私もそう思います」(2月8日、日本記者クラブ)と発言した稲盛会長の尋問は、整理解雇の必要性の是非を問う上でも不可欠と主張した。
 一方被告は、「経営等の問題は片山元管財人で対応できる」「当時の代表者は管財人であり、稲盛会長ではない」など抵抗を繰り返した。
 最終的には裁判長が「代表が管財人と言うのは分かるが稲盛会長も色々関与してきたはず」「労働者に落ち度のない解雇であり、経営トップが話してもいいのではないか」「本件の全体像を見て聞く必要性がある」として、9月30日の客乗裁判で稲盛会長への証人尋問が行われることとなった。
 また醍醐教授について原告は、経営・財務面から見ても解雇の必要性はなかったことを立証するために証人申請したが、「醍醐教授の意見書は鑑定的意味合いを持つものであり意見書で十分」とし一旦不採用の判断が示されたが「被告側の全員採用と比べあまりにも不公正」等の原告の主張が認められ、乗員裁判で証人尋問が実施されることとなった。
 稲盛会長、醍醐教授の証言は調書としてそれぞれ乗員裁判及び客乗裁判で採用されることから、原告申請の証人も全員採用となった。
 被告の抵抗や一旦示された裁判所の判断を押し返し、稲盛会長や醍醐教授を証人採用させたことの意義は大きい。9月の証人尋問においては「そもそも整理解雇の必要性はなかった」こと等、整理解雇の不当性を完膚なきまで立証し、不当解雇撤回・原職復帰の突破口を切り開いていきたいと考えている。
 ◇ 不当労働行為を鮮明にした都労委勝利命令
 8月3日に出された都労委命令は、不当解雇撤回闘争に弾みをつける勝利となった。
 この不当労働行為事件は、企業再生支援機構の飯塚ディレクターらの「整理解雇を争点とする争議権が確立した場合、それが撤回されるまで3千500億円を出資しない」との発言が、支配介入であるか否かが争われた。
 都労委は、「管財人機構は管財人片山とともに労働組合法第7条にいう使用者である」、「飯塚ディレクターらの発言は、組合らの運営に対する介入であると言わざるを得ず労働組合法第7条第3号が定める支配介入に該当する」と明確に認定した。
 飯塚ディレクターらの発言は、解雇通告、そして整理解雇の強行という一連の過程の中で行われた。これは整理解雇の4要件の一つである「手続きの妥当性」に関わる重要な問題でもある。この命令により、当時の日本航空の協議姿勢が、「労働組合に十分説明をして協議を尽くす」のではなく、「支配介入までして強要」したことが認定されたのであり、整理解雇の不当性がまた一つ、明確な形で浮き彫りにされたと言える。
 日航には、不当労働行為を繰り返し行い、これが労使の信頼関係を大きく損ね、職場に深い傷跡を残し、安全運航に暗い影を落としてきた歴史がある。にも関わらず、日航は命令を不服として地方裁判所に提訴する方針を決定した。こうした対応はいたずらに係争を長期化させるものであり、公的支援を受けて再建を進めている日航がとるべき方針とはいえず、必ずや批判の対象になるものと確信する。
 1月19日の提訴以降、裁判は順調に進み証人尋問へと進んできた。その証人も原告が申請した証人は全て採用されたうえ、都労委の勝利命令も得た。このように不当解雇撤回闘争は一見順調に見えるが、楽観できる状況にはない。
 日航の再建は、政府が深く関与するとともに、管財人は政府出資の企業再生支援機構がその任につき、更生手続きが終了した今、支援機構がほぼ100%出資する言わば子会社として再建が進められている。このように日航の再建は政府等の「公」の手で進められている。原告はもとよりJAL不当解雇撤回国民共闘をはじめとする運動の中で、整理解雇の不当性はいよいよ鮮明になってきてはいる。しかしこうした状況の中でも、政府は「JAL再生のためには、人員削減を含め、更生計画の確実な実施が不可欠」「国土交通省としては、今後ともその推移を見守る」との対応をとり続けている。
 また、解雇の不当性が一層明らかになってきているにも関わらず、日本航空のリストラを擁護するマスコミ報道は続いている。そして日本航空はこれらを追い風に、計画を上回るスピードで再建を進めている。
 ◇ 世論づくりの運動を全国に拡げる
 こうした情勢を変え、勝利判決を確実なものにするためには、何としても大きな国民的世論を築いて、政府や日本航空を包囲することが、これからの運動の最大の重点となる。
 今日、日航の再建でするどく問われているのが、「利益第一主義の再建か」それとも「安全第一の再建か」と言う問題である。
 稲盛会長発言が「利益なくして安全なし」と報じられたように、日本航空は露骨な利益第一主義の再建を進めている。そしてその歪みが、異常運航や重大なミスの多発など、安全問題として表面化し、国会でも取り上げられた。そもそも今回の不当解雇自体、利益第一主義が生みだしたものである。
 日本航空の再建は単なる一民間企業の再建であってはならない。それは、国民の足を担う公共交通機関を営む航空会社の再建でなければならない。政府が再建を支援する意味は、国民の足を守ると言うことにあり、そのためには、再建策の柱に安全と公共性重視が位置づけられなければならない。単に“儲ける会社”に再建すればよいというのであれば、政府が支援する意味はない。
 私たちは、利益第一主義の経営姿勢をあらためさせ、原告148名の不当解雇撤回と早期原職復帰で整理解雇の四要件を確固として守ること、安全第一の日航再建で国民の足を守ること、そしてこの闘いを通じて労働組合の組織強化を図り、本闘争の勝利を手にしたいと考えている。皆様の絶大なる支援を引き続きお願いする次第である。
 『労働情報』(823号 2011/9/9)

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