◆ 前川前事務次官の授業に政治介入
~安倍政治の本質見える 介入の事実隠蔽する文科省 (週刊新社会)
前川喜平・前文部科学省事務次官が2月16日、名古屋市立八王子中学校の総合学習の授業で講演したのに対し、文部科学省が3月、「事実確認」と称する政治的介入をした事案を追う。
◆ 文科省の政治介入の経緯 ~震源地はやはり自民党
自民党文科部会長代理の池田佳隆衆院議員(51歳)は、日本青年会議所会頭時の2006年、DVD『誇り―伝えようこの日本(くに)のあゆみ―』を同会議所で制作し、同年6月、衆院教育基本法特別委員会に自民党推薦の参考人として出席、いわゆる自虐史観を非難する意見陳述をする等、国家主義思想に基づき政治活動をしている。
その池田氏の通報を受け、元文科省政務官である赤池誠章・参議院議員(56歳)が講演翌日の土曜日の17日、「国家公務員法違反の人が教壇に立てるのか」とし、「内容を確認する」よう要求するショートメールを、同省の藤原誠・大臣官房長に送信した。
藤原氏は翌18日、「対応します」と返信した。
この要求を受けた同省は、高橋道和(みちやす)初等中等教育局長(56歳)の判断で、2度にわたり詳細な質問状を名古屋市教育委員会にメールした。
林芳正文科相は3月20日、記者会見で「池田議員からのコメント(注、事実上の添削)も参考に、質問内容を一部、修正しております」と述べており、政治介入は明白だが、3月16日の野党6党合同ヒアリングで、文科省の白間竜一郎・大臣官房審議官は「前川さんが授業を行うとの指摘を、外部から受けた」としか発言せず、政治介入の事実を隠蔽していた。
◆ 文科省の執拗な質問、市教委みごとに切り返す
高橋氏の指示を受け、文科省教育課程課の氏名不詳の課長補佐は、3月1日と3月6日の2度にわたり、名古屋市教委・指導主事宛メールした質問状は、「ご多忙の所恐れ入りますが」と断りつつ、前者は4日以内、後者は僅か1日で「回答せよ」と期限を設定。学年末の現場の多忙さに配慮ゼロだ。
しかも後者は「必要に応じてこれ以外にも改めて質問をさせて頂く可能性や・・・直接ご確認をさせて頂く可能性がありますので、ご承知おきください」と、"脅し文句"まで書いている。
文科省の質問状は第1便だけでも15項目ある。
一例を挙げると、「前川氏の授業のねらい」を「具体的かつ詳細にご教示ください」と要求。
市教委・校長はこれに対し、「前川さんの中学生時代、文科省時代、退官後の生き方について、生徒がどう感じたかを生徒同士で共有することにより、キャリア教育の視点で、自分の未来や自分の生き方を創っていくことの参考にしてほしいというねらいです」と回答。
そして、以下に抜粋する生徒の感想を明記している。
だが市教委側は「まったくございません」と、みごとに切り返した。
この他、前川さんが肩書きの1つとして「国会参考人」と述べたことについて、文科省は「生徒達には何の注釈もなく・・・理解される用語でしょうか」などと執拗に質問。
市教委側は「プロフィールに『7月には国会中審査に参考人として出席』と記載したのを省略して話されたものと推察しています。・・・理解している生徒はいるものと考えています」と、説明している。
◆ 自民党に忠実な文部官僚の過去は?
文科省の質問状は「前川氏は・・・国家公務員の天下り問題により辞職し、停職相当とされた経緯があります。こういう背景がある同氏について、道徳教育が行われる学校の場に・・・どのような判断で依頼されたのか」と記述し、前川さんを非難している。
では、自民党に忠実な文部官僚の過去はどうだったか?
前記・白間氏は第1次安倍政権発足直前の広報室長当時、"小泉内閣タウンミーティング"で、内閣府の役人らが参加者である中学校のPTA会長らに税金で5千円を出し"買収"した上で、「教育基本法は見直すべきだと思います。改正案は『公共の精神』などの視点が重視されていて共感している」などという"やらせ質問・意見"の原稿を執筆。バレた後、訓告処分を受けている。
また高橋氏は教育課程課長在任中、現行の小中学習指導要領の原案公表当日の08年2月15日、文科省を訪れた安倍晋三首相側近の衛藤晟一参院議員と面会。同氏の要求や日本会議系の政治団体が展開した組織的なパブリックコメント工作に沿い、全教育課程に関係する「総則」に"国を愛する態度"を盛ったり、音楽で小1にまで"君が代"を「歌えるよう指導する」という文言を加筆する、政治色の濃い改訂を強行した。
教育基本法第16条が禁じている、政治家や教育行政による「不当な政治支配=介入」に、両名とも抵触すると指摘する人は多い。
自民党の政策に忠実な官僚は優遇し、批判的な官僚は徹底的に疎む、安倍政治の本質が見えた事案だ。
『週刊新社会』(2018年4月17日号)
~安倍政治の本質見える 介入の事実隠蔽する文科省 (週刊新社会)
永野厚男・教育ジャーナリスト
前川喜平・前文部科学省事務次官が2月16日、名古屋市立八王子中学校の総合学習の授業で講演したのに対し、文部科学省が3月、「事実確認」と称する政治的介入をした事案を追う。
◆ 文科省の政治介入の経緯 ~震源地はやはり自民党
自民党文科部会長代理の池田佳隆衆院議員(51歳)は、日本青年会議所会頭時の2006年、DVD『誇り―伝えようこの日本(くに)のあゆみ―』を同会議所で制作し、同年6月、衆院教育基本法特別委員会に自民党推薦の参考人として出席、いわゆる自虐史観を非難する意見陳述をする等、国家主義思想に基づき政治活動をしている。
その池田氏の通報を受け、元文科省政務官である赤池誠章・参議院議員(56歳)が講演翌日の土曜日の17日、「国家公務員法違反の人が教壇に立てるのか」とし、「内容を確認する」よう要求するショートメールを、同省の藤原誠・大臣官房長に送信した。
藤原氏は翌18日、「対応します」と返信した。
この要求を受けた同省は、高橋道和(みちやす)初等中等教育局長(56歳)の判断で、2度にわたり詳細な質問状を名古屋市教育委員会にメールした。
林芳正文科相は3月20日、記者会見で「池田議員からのコメント(注、事実上の添削)も参考に、質問内容を一部、修正しております」と述べており、政治介入は明白だが、3月16日の野党6党合同ヒアリングで、文科省の白間竜一郎・大臣官房審議官は「前川さんが授業を行うとの指摘を、外部から受けた」としか発言せず、政治介入の事実を隠蔽していた。
◆ 文科省の執拗な質問、市教委みごとに切り返す
高橋氏の指示を受け、文科省教育課程課の氏名不詳の課長補佐は、3月1日と3月6日の2度にわたり、名古屋市教委・指導主事宛メールした質問状は、「ご多忙の所恐れ入りますが」と断りつつ、前者は4日以内、後者は僅か1日で「回答せよ」と期限を設定。学年末の現場の多忙さに配慮ゼロだ。
しかも後者は「必要に応じてこれ以外にも改めて質問をさせて頂く可能性や・・・直接ご確認をさせて頂く可能性がありますので、ご承知おきください」と、"脅し文句"まで書いている。
文科省の質問状は第1便だけでも15項目ある。
一例を挙げると、「前川氏の授業のねらい」を「具体的かつ詳細にご教示ください」と要求。
市教委・校長はこれに対し、「前川さんの中学生時代、文科省時代、退官後の生き方について、生徒がどう感じたかを生徒同士で共有することにより、キャリア教育の視点で、自分の未来や自分の生き方を創っていくことの参考にしてほしいというねらいです」と回答。
そして、以下に抜粋する生徒の感想を明記している。
中1=「不登校の僕」では、前川さんのことを聞いて、人は変わることができると分かりました。すると文科省は「ポジティブな反応ばかりとのことですが、ネガティブな反応は全くなかったと理解してよろしいでしょうか、ご教示ください」と再質問。
中2=夜間中学のことで衝撃を受けた。学校に通ったことがない人がいないと思っていたし、昔の話だと思っていたけど、他人事では無いと思った。
中3=いくつになっても学びたい人がいると分かったので、僕も一生懸命学ぼうと思った。
だが市教委側は「まったくございません」と、みごとに切り返した。
この他、前川さんが肩書きの1つとして「国会参考人」と述べたことについて、文科省は「生徒達には何の注釈もなく・・・理解される用語でしょうか」などと執拗に質問。
市教委側は「プロフィールに『7月には国会中審査に参考人として出席』と記載したのを省略して話されたものと推察しています。・・・理解している生徒はいるものと考えています」と、説明している。
◆ 自民党に忠実な文部官僚の過去は?
文科省の質問状は「前川氏は・・・国家公務員の天下り問題により辞職し、停職相当とされた経緯があります。こういう背景がある同氏について、道徳教育が行われる学校の場に・・・どのような判断で依頼されたのか」と記述し、前川さんを非難している。
では、自民党に忠実な文部官僚の過去はどうだったか?
前記・白間氏は第1次安倍政権発足直前の広報室長当時、"小泉内閣タウンミーティング"で、内閣府の役人らが参加者である中学校のPTA会長らに税金で5千円を出し"買収"した上で、「教育基本法は見直すべきだと思います。改正案は『公共の精神』などの視点が重視されていて共感している」などという"やらせ質問・意見"の原稿を執筆。バレた後、訓告処分を受けている。
また高橋氏は教育課程課長在任中、現行の小中学習指導要領の原案公表当日の08年2月15日、文科省を訪れた安倍晋三首相側近の衛藤晟一参院議員と面会。同氏の要求や日本会議系の政治団体が展開した組織的なパブリックコメント工作に沿い、全教育課程に関係する「総則」に"国を愛する態度"を盛ったり、音楽で小1にまで"君が代"を「歌えるよう指導する」という文言を加筆する、政治色の濃い改訂を強行した。
教育基本法第16条が禁じている、政治家や教育行政による「不当な政治支配=介入」に、両名とも抵触すると指摘する人は多い。
自民党の政策に忠実な官僚は優遇し、批判的な官僚は徹底的に疎む、安倍政治の本質が見えた事案だ。
『週刊新社会』(2018年4月17日号)
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