パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

☆ 日本学術会議 第26期 記者会見(令和6年6月7日) 資料1

2024年06月11日 | 平和憲法

令和6(2024)年6月7日

◎ より良い役割発揮のための制度的条件(要約)

1 5要件の重要性

 日本学術会議(以下「本会議」)は、かねて「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」(令和3(2021)年4月22日)を公表し、自由で民主的な国家のナショナルアカデミーでは

①学術的に国を代表する機関としての地位、
②そのための公的資格の付与、
③国家財政支出による安定した財政基盤、
④活動面での政府からの独立、
⑤会員選考における自主性・独立性、

 という5つの要件(以下「5要件」)が確保されていることを明らかにし、本会議がその役割を発揮するためには、5要件の制度的保障が不可欠であることを確認した。

 そのうえで、本会議は、日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会(令和5年8月29日内閣府特命担当大臣決定。以下「有識者懇談会」)並びにその下に設置された組織・制度ワーキング・グループ及び会員選考等ワーキング・グループの2つのワーキング・グループ(以下「検討WG」)の議論に積極的に参画してきた。
 ただし、検討WGの議論の前提とされている、「日本学術会議の法人化に向けて(令和5(2023)年12月22日内閣府特命担当大臣決定)」(以下「内閣府方針」)については、第191回総会(令和6(2024)年4月23日)において議決した声明で表明したように、引き続き懸念を持っている。
 昨年12月の有識者懇談会中間報告においても、「機能を十分に発揮するためには、政府等からの独立性を徹底的に担保することが何よりも重要」であり、「仮に学術会議を法人化する場合には、独立性・自律性が現在以上に確保され、国民から求められる機能が十分に発揮されるような制度設計が行われるべき」としている。
 内閣府方針に沿って具体化される制度が5要件を制度的に保障し、独立性・自律性を現在以上に確保されるものになるかは、本会議がその機能を十分に発揮するための大前提であるが、依然として懸念が残ると言わざるを得ない。

 以下、5要件を制度的に保障するという観点から、内閣府方針に対する懸念(以下「懸念」)を指摘し、本会議の立場(以下「立場」)を示す。

 

2 主な懸念点と本会議の立場

2-1 要件2:公的資格の付与

●懸念:内閣府方針は、現在の勧告機能に変更を加える予定はないとしつつも、仮に法人化した場合に「勧告」という文言を用いるかどうかについては明言しておらず、現在と同等の機能が維持されるかどうか判断できない

●立場:仮に勧告という文言を用いない場合には、その理由及びどのような文言に変更するのかを示して議論すべきである。

 

2-2 要件3:国家財政支出による安定した財政基盤

●懸念:内閣府方針には「財政基盤の多様化に努める。その上で、必要な財政的支援を行う」とあるが、日本学術会議は、これまでも、その高い公益性に鑑みて国に置かれている機関として財政が保障されてきたところであり、引き続きナショナルアカデミーとして必要な財政基盤が公的に十分確保される必要がある

●立場:本会議の活動は公共性を担うものであり、また、科学的助言は特定の利害からの中立性を確保する必要性があることから、本会議の経費については国庫負担の原則が維持されるべきである。財源の多様化を模索することはそれ自体必要なことではあるが、その前に、まずは国自身がその本来の責務を果たすべきである。

 

2-3 要件4:活動面での政府からの独立

●懸念:内閣府方針は、中期計画の作成の義務化、運営助言委員会、監事及び日本学術会議評価委員会(仮称)の新設を定めている。しかも、有識者懇談会の中間報告にも明記されていなかった事項として、監事と評価委員会委員を主務大臣任命とすること、監事が幹事会構成員の業務執行等も含めた監査を行うこと等が盛り込まれている。
 主要先進国のナショナルアカデミーに、会計監査以外に政府の関与はなく、評価と連動するような中期計画を立てるところは存在しない。内閣府方針のような仕組みは、国からの独立性を制度的に保障することによって機能の有効な発揮が可能となるナショナルアカデミーにとっては適切ではない。

●立場:現在、本会議の組織運営の健全性は民主的な組織構造により担保されており、財政については会計検査院の検査が行われている。また、有識者による外部評価を実施することにより、運営の改善に努めている。さらに、各種委員会は原則公開であり、高い独立性を備えつつ、十分な透明性が確保されている
 本会議の活動は、あくまで、科学に基礎づけられたものであり、その活動の評価は基本的に科学者によってなされるべきである(ピア・レビュー)。また、内部管理の仕組みを考えるに当たっては、学術の性質を踏まえ、迅速で柔軟な活動を確保するために、本会議の目的、機能、規模等に見合った、過重でない仕組みにするという観点も重要である。
 これらの点を踏まえると、会計検査院による検査に加え、現在の運用と同様に本会議に評価委員会を置くことには合理性があるが、運営助言委員会の設置には強い疑念があり、評価委員を大臣任命とすることは合理性・正当性に欠ける。仮に法人化する場合には、監事を置くことが考えられるが、評価委員と同様に、その選任・任命は本会議が行うべきである。

 

2-4 要件4(その2):内部規則制定権

●懸念:内閣府方針では、評価委員会等、現在、内部規則で定めている事項についても法定を予定しているのではないかと推測される。

●立場:活動面での政府からの独立を担保するため、法定事項・政令事項は必要最低限にとどめ、内部規則に委ねるべきである。今よりも法定事項を拡大する場合には、独立性の徹底という改革趣旨に照らし、理由を示した上で検討がなされるべきである。

 

2-5 要件5:会員選考における自主性・独立性

●懸念:内閣府方針では、選考助言委員会(仮称)の設置が盛り込まれているが、選考過程にどのように関与するかが明確ではなく、会員選考を本会議が自律的・独立的に行うこと(コ・オプテーション)を妨げるのではないかとの懸念がある。現在よりも独立性を徹底するという内閣府方針と矛盾しないよう、その必要性を十分に検討すべきである。

●立場:会員選考に当たっては優れた科学的業績を有することが中軸的な要件であり、この点は厳格に維持されなければならない。次回及びそれ以降の会員選考も、本会議が自律的・独立的に行い、その方法も、本会議が決定すべきである。すでに本会議は選考方針案を公表して外部の意見聴取を行い、それに基づいた選考を実施しており、選考経過と結果についても「第 26―27 期会員候補者・連携会員候補者選考過程報告書」で公表している。

 

 以上、現在の内閣府方針の内容は、他の行政組織の構造や、下位の行政組織等に対する指揮監督のあり方に関する従来の発想にとらわれたものであり、5要件に適合しないと判断せざるをえない。本会議は、社会から求められる役割を十分に発揮できるような制度が保障されるよう、主体的に社会との対話を進めつつ、引き続き政府との建設的な協議を求める所存である。

 


コメント    この記事についてブログを書く
« ☆ 空自70周年式典で、将来... | トップ | ◆ 予防訴訟をひきつぐ会 第... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

平和憲法」カテゴリの最新記事