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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

今春の改訂で地方自治体の動きに触れなかった実教日本史A教科書

2016年12月08日 | こども危機
 ◆ 実教版『高校日本史A・B』採択妨害問題の新たな局面
鈴木敏夫(子どもと教科書全国ネット21常任運営委員)

 ◆ 高校教科書採択妨害とその背景
 2012年春、『産経新聞』は新課程用の実教出版『高校日本史A』、翌年の『高校日本史B』(以後、『日本史B』)にもある「日の丸・君が代」問題に関する「側注」の「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」について「強制」はおかしいとのキャンペーンを展開した。
 都教委はこれを受け、起立斉唱を求めるのは「強制」ではないなどとする「都教委の見解と異なる教科書の使用は適切でない」との議決を行い実教の当該教科書を2012年から一切選ばせていない。
 千葉県教委は「国旗国歌法」・「太平洋戦争の各国の犠牲者数」・「南京大虐殺の犠牲者数」について、資料を含めた指導計画、事後報告まで、実教出版の当該教科書を希望する学校のみに求める不当な条件を付け採択している。
 大阪府教委は、採択に一定の条件を付けるとともに、全府立高校に「中国人や朝鮮人の強制連行」と「南京事件の被害者」の教え方までに介入するきっかけとした。
 育鵬社「中学歴史教科書」を作成している日本教育再生機構は、このような動きは「国の検定の不備を、ただす」ことであり、「(偏向記述は)地方の採択で淘汰されて」、そのような教科書は「消えていく」(『教育再生』2013年12月号)とし、国の検定ではできないことを地方から、いわば「二重検定」で実行することをあからさまに奨励した。
 まさに安倍内閣による教科書制度改悪、検定強化の動きと連動する攻撃の拡大であり、歴史修正主義の動き、ひいては「戦争する国づくり」の一環であった。
 ◆ 教科書記述の変更
 今春の検定で実教出版は、改訂した『高校日本史A新訂版』(以後、『A新訂版』)では、「側注」の前述の部分は削除し、次の小見出し「日本国憲法と住民自治」の本文に、「また教育現場に日の丸掲揚、君が代斉唱を義務づけることに対する反対運動もおきた」と記述し、合格した。
 変更は、最高裁判決などを受け、地方自治体の動きの批判ではなく、「日の丸・君が代」問題のトータルでの「義務づけ」問題の記述にした。
 ◆ 都教委は「新訂版」の妨害を断念
 都教委は、この記述変更により、『A新訂版』を「選定に当たって他の教科書と同じ扱いとする」とこれ以上の妨害を断念し、『日本史B』は「改訂されていないので」従来通りと併せて、校長宛に「通知」した。
 結果、『A新訂版』は7校(173校中)で選定され、8月末に採択された

 ◆ 各地での取り組み
 神奈川県教委は2013年に、既に希望をだしていた28校の校長に「再考」を促し、変更させた。
 これに反対してきた「教科書採択の介入問題を考える神奈川の会」は、「『A新訂版』は『再考』の対象ではない」とするよう請願などで県教委に働きかけている。
 また教科書・市民フォーラムは、県内公立高校長へ「『A新訂版』は採択可能」との文書も郵送している。
 16校が採択希望を県教委に出し、県教委は10月12日(水)委員会でそのまま採択した
 埼玉も10月に採択の予定である。
 大阪府教委は9月16日に採択を行い、これまで通り条件付で『日本史B』を3校で採択し、『A新訂版』は需要数で1506名分(占有率8.2%)採択した。
 千葉県教委は、「教科書と教育を考える千葉県民の会」などの働きかけで、『日本史B』は引き続き条件付き採択だが、『A新訂版』は条件を付けない“黙認”に転じた
 川崎市教委は、昨年は現場から希望どおり採択したが、不採択にした一昨年の論議を蒸し返し、今年は不採択に転じている。
 新潟では、教員からの採択希望を校長が認めないままとのことである。県教委は、「校長の判断」とうそぶいている。
 今回の都教委などの扱いを転機とし、引き続き、全国の連帯した取り組みで、何の権限もない地方教育委員会の採択妨害を許さない運動を安倍「教育再生」・憲法改悪に反対する運動の一環として強化する必要がある。
『子どもと教科書全国ネット21ニュース 110号』(2016年10月)

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