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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

再雇用2次意見陳述<1>

2011年09月13日 | 日の丸・君が代関連ニュース
 《再雇用拒否撤回2次訴訟第9回口頭弁論(2011/9/12)陳述》<1>
 ◎ 憲法第14条第1項の「信条」による別異取扱=差別
代理人弁護士 柿沼真利

 第1 緒論

 今回提出した、2011年9月12日付準備書面(12)は、被告が、本件原告らが、2007(平成19)年4月以降乃至2009(平成21)年4月以降の被告東京都の再雇用職員あるいは非常勤教員の採用について、被告に、希望を出したのに対し、その採用を拒否し、あるいは、一旦採用した後その合格を取り消したこと、すなわち、被告による本件採用拒否などが、憲法14条1項後段の「信条」による差別に該当し、原告らの平等権を侵害するものとして違憲になることを述べたものです。
 第2 本件採用拒否などが、憲法第14条第1項の「信条」による別異取扱に該当すること
 1 採用拒否などの理由について-不起立等のみが理由となっていること

 まず、被告が原告らを採用拒否した理由について、被告は、平成22年5月31日付被告準備書面(3)において、「職務命令違反及び信用失墜行為という重大な非違行為をしたと主張しています。が、これらの主張は、結局は、原告らが卒・入学式において、「君が代」斉唱時に不起立等に及んだことに対する評価を行っているものであり、表現を変えて言い換えているに過ぎません。
 ですから、被告が原告らの採用を拒否したのは、唯一、原告らが卒・入学式等において不起立等に及んだからであることは明かです。
 2 原告らが不起立等に至った理由-原告らの考え
 そして、不起立等に及んだ原告らは、多様な価値観の尊重や、それを教育の場において実践することの大切さを重視する考え、などを、有しており、これらの考えに基づいて、原告らは、卒・入学式等において、全員が「日の丸」に正対して起立し、「君が代」を斉唱するという行為を一律に強制することについて反対する考えを有しており、その自らの考えに基づいて、10.23通達に基づく起立斉唱の命令に従って起立することはできなかったのです。
 3 原告らの考えが憲法第14条第1項に規定する「信条」に該当すること
 憲法14条1項は、前段で「法の下の平等」を規定し、後殺で「信条による差別」を禁止しますが、原告らの考えも、憲法14条1項後段の「信条」に該当します。
 4 「信条」による別異取扱に該当すること
 (1)このように、原告らは、憲法14条1項後段の「信条」に該当する考えを有していましたが、被告は、原告らの「信条」に基づく不起立等を理由として、再雇用職員、非常勤教員の採用について、他の採用希望者との間で、採用拒否などにするという別異取扱を行いました
 そこで、憲法14条1項後段が適用される「信条」による別異取扱について検討します。
 (2)まず、「信条」による別異取扱に該当する場合として、公権力が、個人の内心における「信条」それ自体(例えば、共産主義者・共産党員であること、キリスト教の信者であることなど)を理由として、差別的な取扱いをすることが挙げられます。
 この場合、憲法14条1項後段の「信条」による別異取扱に該当することは明らかです。
 本件では、採用拒否などになった教員らは、全員が既に述べた信条を有しており、その信条が不起立等によって「あぶり出され」てしまいました。そして、その信条があぶり出されてしまった教員らは全員採用拒否などになり、一方、不起立等に及ばずにその信条があぶり出されなかった教員らは、希望すれば全員採用されました。
 このような状況下では、個人の内心における「信条」それ自体を理由として、別異取扱を行ったことは明らかです。
 (3)ア 次に、公権力が、個人の内心の「信条」それ自体ではなく、その「信条」に基づく「外形的な」行為などに着目して、その個人に対し差別的な取扱いを行う場合が考えられます。
 この「外形的な行為など」に着目した場合、被告は、外形的な事情に着目しての取扱いであるので、個人の内心に着目した「信条による差別」には該当しない、と主張するかも知れません。
 しかし、例えば、キリスト教の信者は、その信仰に基づいて、信仰の対象である神に祈る際、自身の胸の前で、自身の手を用いて十字を切る動作を行う場合があります。が、公権力が、このようなキリスト教信者の外形的動作に着目して、その動作を行った者に対して、差別的取扱いを行った場合に、これを「外形的な動作に着目したに過ぎないのであるから、『信条』による差別には、該当しない」等と形式的に評価してしまうことは、あまりにも不合理です。
 そこで、個人の「信条」に基づく「外形的な」行為などについても、その行為の態様・性質などから、それによる具体的な害悪の存在や、その具体的な危険性が明かでない場合は、むしろ、実質的には、その外形的行為の背後にある「信条」に着目した別異取扱に該当するとすべきです
 イ 本件の原告らの「信条」に基づく、不起立等は、卒・入学式における「君が代」の斉唱の間、たった数十秒間だけ、起立せず椅子に座っていたというものにすぎません。
 決して、原告らが、「君が代」斉唱中に、式典会場内で怒号を発したり、掲揚された「日の丸」を引きはがしたりするなどの積極的な行動をとったものではありません。
 また、生徒達に対して、自身の信条を強要して、不起立を呼びかけたりしたものでもありません。
 さらに、原告らの不起立等によって、式典の円滑な進行が妨げられた、あるいは式典が混乱したという事情があったわけでもありません。
 そして、原告らの不起立等によって式典に参加した生徒達の学習権の実効的な保障に具体的な支障をきたしたり、弊害が生じたという事情も存在しません。
 このように、原告らの不起立等は、その行為の態様・性質などから、それによる*具体的な害悪の存在や、その*具体的な危険性が明かでありません。
 よって、本件採用拒否などは、不起立等の「外形的」行為に着目した別異取扱であったとしても、憲法第14条第1項の「信条」による別異取扱に該当することは明かです。
 ウ この問題に関連して、参考になる最高裁判例があります。それは、最高裁判所昭和30年11月22日判決です。この判例は、連合軍占領下において、ある紡績会社が、共産党員である従業員に対して、その言動を理由として行った解雇が、憲法第14条1項後段の「信条」による差別に該当しないかが問題になった事案に関するものです。
 この点、同判例は、結論においては、その解雇について、憲法14条1項後段の「信条による差別」に該当しない旨判断しました。
 しかし、その判断過程においては、解雇された従業員の解雇事由になった具体的な言動について、「会社の生産を現実に阻害しもしくはその危険を生ぜしめる行為である」こと等を認定し、さらに、「原審の認定するような本件解雇当時の事情の下では、」という条件を述べた上で、「何等具体的根拠に基かない単なる抽象的危虞に基く解雇」とは言えない旨を述べて、その解雇が「信条による差別」に該当しない旨の結論を導きました。
 とすれば、その解雇について、例え使用者側が、従業員の一定の外形的な言動を理由に解雇をしたとしても、その問題になった外形的言動が、使用者側の「生産を現実に阻害し若しくはその危険を生ぜしめる行為」に該当しない場合や、「何等具体的根拠に基かない単なる抽象的危虞に基く」差別的取扱いであれば、「信条による差別」に該当することになります。
 第3 別異取扱について合理的な理由が存在しないこと
 1 このように、被告による原告らの採用拒否は、「信条」による別異取扱に該当します。そこで、次に、本件別異取扱に、合理的な理由が存在するか否か検討します。
 2 この点、憲法第14条1項後段に列挙された事由による差別は、歴史上、これらの事由に基づく差別が多く発生し、重大な人権侵害を引き起こしてきた経緯や、民主主義の理念に照らし、原則として不合理なものです。
 とするなら、後段事由による別異取扱は、原則として、合理性は認められず、①別異取扱をした目的が、「やむにやまれぬ」必要不可欠なものであり、かつ、②その目的を達成するための手段が必要最小限度のものである場合に限って、合憲とすべきであり(厳格な基準)、これら合憲であることの理由は、公権力の側で立証すべきです。
 本件採用拒否などの合憲性の判断にあたっても、「信条」による別異取扱であるため、厳格な基準によって審査すべきです。
 3 この点、被告が原告らを採用拒否などした目的ですが、これは、10.23通達以下の一連の日の丸・君が代の強制の仕組みに応じられない「信条」を有する者を教壇から排除すること自体であると考えられます。
 このことは、訴状や、2010年9月30日付準備書面(4)において明らかにした、被告による一連の強制の実態からして明らかです(特に、2004(平成16)年4月8日に、鳥海教育委員が行った、いわゆる「ガン細胞発言」は、極めて象徴的です。)。
 しかし、そもそも、一定の「信条」を有する者を排除すること自体を目的とすることなど許されません。このような目的が、「やむにやまれぬ」必要不可欠な目的に該当しないことは明らかであり、手段について検討するまでもなく、本件採用拒否などが憲法第14条第1項に違反します。
 第4 結論
 以上より、被告による原告らの本件採用拒否等は、憲法第14条第1項後段の「信条」よる差別に該当し、かつ、その合理性が認められないのであって、原告らの平等権を侵害するものとして、違憲になります。
以上

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