・エンブリオ(下) 帚木蓬生 (集英社文庫)
一年間に生まれる赤ん坊の数が120万人として、同じかそれ以上の胎児が中絶されている、少なく見積もって100万人―。望まれない妊娠の果てに堕胎される胎児が年間少なくとも100万人にのぼる反面、コウノトリに見放された夫婦が赤ん坊を求めて10年20年と放浪の旅を続ける―。堕胎に走る親は闇に姿を隠し、不妊に苦しむ夫婦も暗がりでひっそりと悲しみを抱き続けている現状―。
その架け橋となる岸川の行為は正義か不正義か?善か悪か?それに答えは出せないが、一つはっきり言えることは「ビジネス」と結びつけば悪に向かう可能性が大きいということ。先端医療を市場の舞台に放り出せば技術進歩が加速することは間違いない。しかし、生命倫理として守らなければならない領域があろう―それが何かわからないのだが―市場の中でそれを守ることができるのだろうか。
本作品はフィクション小説であるが、妙なリアリティがある。近い将来、現実になるのではないかと思ってしまう社会。病院が株式会社経営に近づきつつある日本―。
医療に対して関心が持て、「岸川」の人間性に興味をそそられる作品。
一年間に生まれる赤ん坊の数が120万人として、同じかそれ以上の胎児が中絶されている、少なく見積もって100万人―。望まれない妊娠の果てに堕胎される胎児が年間少なくとも100万人にのぼる反面、コウノトリに見放された夫婦が赤ん坊を求めて10年20年と放浪の旅を続ける―。堕胎に走る親は闇に姿を隠し、不妊に苦しむ夫婦も暗がりでひっそりと悲しみを抱き続けている現状―。
その架け橋となる岸川の行為は正義か不正義か?善か悪か?それに答えは出せないが、一つはっきり言えることは「ビジネス」と結びつけば悪に向かう可能性が大きいということ。先端医療を市場の舞台に放り出せば技術進歩が加速することは間違いない。しかし、生命倫理として守らなければならない領域があろう―それが何かわからないのだが―市場の中でそれを守ることができるのだろうか。
本作品はフィクション小説であるが、妙なリアリティがある。近い将来、現実になるのではないかと思ってしまう社会。病院が株式会社経営に近づきつつある日本―。
医療に対して関心が持て、「岸川」の人間性に興味をそそられる作品。