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鉄の骨。

2011-11-20 18:53:20 | 書籍。


・鉄の骨 池井戸潤 (講談社)


中堅ゼネコン『一松組』の若手社員、富島平太が異動した先は“談合課”と揶揄される部署だった。現場しか経験が無い平太が知った新たな世界…、それは会社の存亡を左右する綺麗事では済まされない裏経済であった。談合は“悪”である―、それが世間での一般的イメージであり、当物語では銀行員が“談合”の世間的評価を代表して口にする設定となっている。しかし、なぜ建築業者は談合を脱しない―? 業界内人と業界外人(世間)との“談合”に対する評価と必要性の壁―、談合を取り巻く逃れられない柵、そんな普段は知ることの出来ない建築世界の一部分を本作品を通して垣間見ることができた。

ゼネコンから―、ゼネコンマンから―、銀行員から―、世間から―、東京地検から―、各々の立場からの“談合”に対する評価と必要性がこの一冊内に上手く描かれている。そして、特に胸を打つのがゼネコンマンである平太が胸に抱く談合に対する評価と考え方。悪とわかっていても、会社を守る為に突き進まざるを得ない悲しき一サラリーマンとしての立場も同時に描かれている。立場が変われば意見と視野が変わる。各々には各々の世界がある。談合は―。

とにかく面白かった。
建築業界にお勤めの方がどう評されるかはわからないが、とてもわかり易く、物語として素晴らしいと思う。