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八日目の蝉。

2011-05-27 23:12:49 | 書籍。
・八日目の蝉  角田光代(中公文庫)


蝉は何年もの間、土の下で過ごした後、やっと地上に出てくる。
しかし、地上で過ごすのは僅か7日間。
僅か7日間の人生って生まれてくる意味があるの-?
あまりにも虚しすぎる生涯に思える。

しかし、もし蝉に八日目の人生があるとしたら…。
他の蝉には見られなかったものがそこには待っている日。
八日目の人生-。
幸せがあるのだろうか-。
『八日目の蝉』。この題名に惹かれて当作品を手に取った。
書籍の表紙を眺めていると、上記のことが頭を巡ったのさ。

作品内容は、野々宮希和子が不倫で授かった命を堕胎、結果として子を産めない身体となってしまう。幸せな生活を夢みていた彼女は不倫相手の子供を誘拐。その後は誘拐した子供を連れて逃げ回る人生。しかし、その子の幸せを考える希和子の姿は正に“母親”そのものである。母と子の“愛”のカタチが展開されていく。


優しかったお母さんは、私を誘拐した人でした。。。


第二章は、誘拐犯として希和子が逮捕された後の世界が展開されている。希和子によって育てられた恵理菜は本当の両親のところに戻り、大学生となっている。母親になれなかった本当の母親、どんな人を母親というのか知らない恵理菜…、戸惑い苦悩する母子の姿があまりにも切ない。家族のカタチや、愛情の意義、色々なことを考えさせられる傑作品であった。題名の素晴らしさに名負けない物語であった。