(01)
それゆえ、古典論理学は外延論理学ともいわれる。この、質料含意には、次のパラドックスがあることが知られている。
(8) A→(B→A)
(9)~A→(A→B)
ルイスはこの古典論理における含意の外延的解釈に不満を感じた。なぜならば、
含意文『「雪が白い」ならば「1+1=2」である。』の外延的意味は「真」である。
しかし、我々の素朴直観的な「含意:ならば」には「より強い意味」を示唆する、すなわち、
含意によって結合される2つの文には内容的な関連を要求するように思われる(北樹出版、論理学の方法、1994年、190頁)。
然るに、
(02)
たしかに、普通、我々は、
『「雪が白い」ならば「1+1=2」である。』
といふやうな「言ひ方」をしない。
然るに、
(03)
(ⅷ)
1(1) A 仮定
1(2) ~B∨A 1選言導入
1(3) B→A 2含意の定義
(4) A→(B→A) 13条件的証明
(ⅸ)
1(1) ~A 仮定
1(2) ~A∨B 1選言導入
1(3) A→B 2含意の定義
(4)~A→(A→B) 13条件的証明
従って、
(01)(03)により、
(04)
(2)1選言導入
(3)2含意の定義
といふ「計算」が、「妥当」であるからこそ、「古典論理学」に於いて、
① A→(B→A):Aであるならば(BであるならばAである。)
② ~A→(A→B):Aでないならば(AであるならばBである。)
といふ「論理式」は、「恒真式(トートロジー)」となり、そのことに対して、CIルイス は、不満に思ってゐる。
然るに、
(05)
(ⅷ)
1(1)~B∨A 仮定
とは異なり、
1(2)~B∨A 1選言導入
の「前」に、
1(1) A 仮定
といふ「仮定」が「先に有る」ことによって、
1(2)~B∨A 1選言導入
に於ける、
1(2)~B∨A:Bでないか、または、Aである。
といふ「論理式」は、実際には、
1(2)~B∨A:Aであるが(、Bでないか、Bであるか)は不明である。
といふ、「意味」になる。
然るに、
(06)
(ⅲ)
1 (1) A 仮定
1 (2) ~B∨A 1選言導入
1 (3) ~~B∨A 1選言導入
1 (4) B→A 2含意の定義
1 (5) ~B→A 3含意の定義
6 (6) B∨~B 仮定
7 (7) B 仮定
1 7 (8) A 47肯定肯定式
9(9) ~B 仮定
1 9(ア) A 59肯定肯定式
16 (イ) A 6789ア選言除去
1 (ウ) (B∨~B)→A 6イ条件的証明
(エ)A→{(B∨~B)→A} 1ウ条件的証明
従って、
(06)により、
(07)
③ A→{(B∨~B)→A}
といふ「論理式」は、「恒真式(トートロジー)」である。
然るに、
(08)
③ A→{(B∨~B)→A}
といふことは、
③ Aならば{(Bであるか、または、Bでない)ならば、Aである。}
といふことであって、
③ Aならば{(Bであるか、または、Bでない)ならば、Aである。}
といふことは、要するに、
③ Aならば{(Bであらうと、Bでなからうと)、いづれにせよ、Aである。}
といふ、ことである。
従って、
(06)(07)(08)により、
(09)
③ A→{(B∨~B)→A}:Aならば{(Bであらうと、Bでなからうと)、いづれにせよ、Aである。}
といふ「論理式」は、「恒真式(トートロジー)」である。
従って、
(04)(09)により、
(10)
① A→(B→A) :Aであるならば(BであるならばAである)。
③ A→{(B∨~B)→A}:Aならば{(Bであらうと、Bでなからうと)、いづれにせよ、Aである。}
といふ「論理式」は、2つとも、「恒真式(トートロジー)」である。
然るに、
(11)
① Aであるならば(BであるならばAである。) :A→(B→A)
③ Aならば{(Bであらうと、Bでなからうと)、いづれにせよ、Aである。}:A→{(B∨~B)→A}
に於いて、
① であれば、たしかに、「変」であるが、
③ であれば、少しも、 「変」ではない。
従って、
(01)(10)(11)により、
(12)
① A→(B→A)
といふ「論理式」を、
③ Aならば{(Bであらうと、Bでなからうと)、いづれにせよ、Aである。}
といふ風に、「解釈」する限り、
(8) A→(B→A)
(9)~A→(A→B)
ルイスはこの古典論理における含意の外延的解釈に不満を感じた。とする、
(8) A→(B→A)
は、「パラドックス」でも、何でもない。
cf.
(8) 1→(真→1) は「真」であり、
(〃) 1→(偽→1) も「真」である。
然るに、
(13)
(ⅳ)
1 (1) ~A 仮定
1 (2) ~A∨ B 1選言導入
1 (3) ~A∨~B 1選言導入
1 (4) A→ B 2含意の定義
1 (5) A→~B 3含意の定義
6 (6) A 仮定
16 (7) B 46肯定肯定式
16 (8) ~B 56肯定肯定式
16 (9) B&~B 78連言導入
1 (ア) A→(B&~B) 69条件的証明
(イ)~A→{A→(B&~B)} 1ア条件的証明
ウ(ウ)(A&~A) A
ウ(エ)~A ウ連言除去
ウ(オ) A→(B&~B) イエ肯定肯定式
ウ(カ) A ウ連言除去
ウ(キ) (B&~B) オカ肯定肯定式
(ク)(A&~A)→(B&~B) ウキ条件的証明
従って、
(13)により、
(14)
④(A&~A)→(B&~B):(Aであって、Aでない)ならば、(Bであって、Bでない)。
といふ「論理式」は、「恒真式(トートロジー)」である。
然るに、
(15)
1(1) A&~A 仮定
(2)~(A&~A) 11背理法
従って、
(14)(15)により、
(16)
④(A&~A)→(B&~B):(Aであって、Aでない)ならば、(Bであって、Bでない)。
といふ「論理式」は、
④(A&~A)→(B&~B):(Aであって、Aでない)といふことは有り得ないので、(Bであって、Bでない)といふことも有り得ない。
といふ、「意味」である。
従って、
(14)(15)(16)により、
(17)
④(A&~A)→(B&~B):(Aであって、Aでない)といふことは有り得ないので、(Bであって、Bでない)といふことも有り得ない。
といふ「論理式」は、「恒真式(トートロジー)」であるが、
④(Aであって、Aでない)といふことは有り得ないので、(Bであって、Bでない)といふことも有り得ない。
といふことは、「当り前」であって、「パラドックス」ではない。
然るに、
(13)により、
(18)
(2)1選言導入
(3)1選言導入
(4)2含意の定義
(5)3含意の定義
といふ「計算」を、「認めない」限り、
④(A&~A)→(B&~B):(Aであって、Aでない)といふことは有り得ないので、(Bであって、Bでない)といふことも有り得ない。
といふ「論理式」が、「恒真式(トートロジー)」であるといふことを、「証明」することは、出来ないが、それでは、困るはずである。
従って、
(01)~(18)により、
(19)
CIルイス とは異なり、私自身は、「古典命題論理学」に於ける、「質量含意」に対して、「不満」を持っては、ゐない。