時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

上野の森、マルガリータ王女に会いに行く

2019年11月16日 | 絵のある部屋


爽秋の一日、上野公園に行く。かねて予定していたが、せわしない日々にとりまぎれ、果たせなかった『ハプスブルグ展』を見る。芸術の秋だけあって、この時期、見たい展覧会が目白押しだ。

まず、国立西洋美術館に行く。『ハプスブルグ展』といっても、オーストリア・ハプスブルグ家に重点が置かれている。本展が日本・オーストリア友好150周年記念行事として企画されたことによる。600年にわたるハプスブルグ帝国の栄華の流れを短時間で辿れるのは、ウイーン美術史美術館が継承しているコレクションから選ばれた展示品が、スポットライトのように散りばめられて、この歴史上の一大名家の歴史を語ってくれるからだろう。

展示品には国立西洋美術館が所蔵するルーカス・クラーナハ、アルブレヒト・デューラーの版画、バルトロメオ・マンフレディ(1582-1622)の《キリスト捕縛》なども含まれている。

訪れた人たちの大方の関心は、第一にディエゴ・ベラスケス(1599-1660)の手になる《青いドレスの王女マルガリータ・テレサ、1651-1673》(1659年、油彩・カンヴァス、ウイーン美術史美術館)に集まっていた。ブログ筆者の脳裏には白いドレスのイメージがあったが、今回はこの作品が貸し出されたようだ。さらにベラスケスの娘婿マーソの手になる《緑のドレスの王女マルガリータ・テレサ》(ブダペスト国立西洋美術館)も並列して展示されている。肖像画としては甲乙付け難い出色の出来栄えだ。

ベラスケスの作品としては、《スペイン国王フェリペ4世 1605-1665の肖像》(1631/32年 油彩/カンヴァス ウイーン美術史美術館)および《スペイン王妃イサベルの肖像 1602-1644》(ウイーン美術史美術館)が出展されており、親戚関係にあるウイーンとマドリードのハプスブルグ両王室の結びつきが分かる。これもなかなか美しい肖像画だ。

そして、マリールイーズによる《フランス王妃マリー・アントワネット 1755-1793の肖像》(1778年、油彩/カンヴァス ウイーン美術史美術館)の前にも大きな人だかりができていた。これも肖像画としては、見事な傑作といえるだろう。王妃はなかなか満足のゆく肖像画家に出会えずにいたが、マリールイーズに出会うことによって、ようやく願いがかなったといわれる。さもありなんと思う出来栄えだ。かつてナンシーで宿泊したホテルが、マリーアントワネットがお輿入れした際に宿泊した場所と知って、歴史をさかのぼった思いがしたことがあった。

レンブラント・ハルメンス・ゾーン・ファン・レイン(1609-1669)の《使徒パウロ》(1636年 油彩/カンヴァス、ウイーン美術史美術館)

これらの華やかな肖像画に隠れて、あまり観客の目をひかないが、この作品、レンブラントの最も活動的であり、名声が確立されていた頃に制作され、見るからに円熟した技法が駆使された作品だ。その巧みさは展示作品の中でも頭抜けている。

この展覧会、オーストリア美術史美術館の全面協力で成立した感がある。かつて友人を訪ねたりで何度か訪れたが、また行ってみたくなる。図録も手堅くまとめられ、ハプスブルグ家の600年の歴史を知るには良い手引きとなっている。


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